一瞬の空

不定期連載 山道をゆく 第216話
不定期連載 麦道をゆく 第12話
09/06/20
乳首(安達太良山、日本百名山、庵選千名山450)、
鉄山(庵選千名山451)、矢筈森(庵選千名山452)
福島路ビール(レッドエール、デュンケル、ヴァイツェン)
【一瞬の空】

6/20(土)
庵庵−鴨池大橋−ESSO港北インターSS−港北IC−第3京浜−玉川IC
−環状8号−用賀IC−首都高3号−C1−5号−C2−S1−東北自動車道
−蓮田SA−上河内SA−安達太良SA−二本松IC−R459−ファミリーマート岳温泉店
−県道386号岳温泉線−奥岳登山口…薬師岳展望台…五葉松平…仙女平分岐
…乳首…牛ノ背…馬ノ背…鉄山…矢筈森…峰の辻…くろがね小屋…勢至平
…登山口−R459土湯バイパス−樹泉−R115−福島西部広域農道
−アンナガーデン駐車場…福島路ビール…駐車場−R115−福島西IC
−福島松川PA−安積PA−那須高原SA−上河内SA−都賀西方PA−首都高S1
−C2−5号−C1−3号−用賀IC−環状8号−玉川IC−第3京浜−港北IC
−鴨池大橋−旭図書館−ESSO西谷SS−庵庵

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週末の高速料金均一化が施行されて久しい。クラフトビアのスタンプラリーも早10店制覇して店舗訪問活動も沈静化し、ラリー参加店以外にも目を向けるべきと感じつつあった。何と無しに6月下旬の庚申草を目指して庚申山にでも行こうか、もう少し足を延ばして未踏の百名山へと赴くか、木曜金曜あたりは天気予報と睨めっこを続けた。出発目前の予報によれば、福島の方が午前中昼前頃まで僅かながら日が差すような按配だ。栃木は曇ったままである。ヨシ、気合を入れて福島まで運転するとするか。
1,000円均一と騒がれて久しいが、首都高やら何やらは別料金なのである。それでも料金は随分安くなった。申し分ない。しかし、何時もながら、都心通過のための環状線走行は運転に神経を磨り減らさざるを得なかった。渋滞がなかったのは幸いである。午前3時台の首都高に渋滞があったらそれはそれは恐ろしいものであるのだが。
北へ進むに連れて空は明るさを増すのだが、目の覚めるような、気分の高揚する明るさには遥か遠かった。未だ庚申山に針路変更が可能なSAでの天気予報に寄れば、やはり午前中少々だけ晴れ間となっていた。気合を入れて運転してるのだが、気持ちとは裏腹に、時折小雨がパラついたりと心配な雲行きであった。この時点で天気予報に裏切られても仕方ないと思っていた。この時点で、天気予報通りになることを予想できた者は果たして皆無ではなかったか。交通量は少なくはない。みな、安達太良山なぞ見向きもしていないことだろう。山でガスに巻かれるのはアントニオだけか。勢至平でガスに巻かれると危ないとか、地図に注意書きしてあったな、、、うーん、、、
さてさて、前日に行動食の類の調達を怠り、二本松ICで高速を降りたもののコンビニの1つも探せないまま、R459の人となってしまった。一応、黒糖は多めに持参しているから、最悪は糖分摂取のみで凌ぐ覚悟であったが、岳温泉界隈に、コンビニ中で一番有難いファミマを発見したのが幸いであった。今日は土曜、ファミマTカード保持者にはカードの日10%割引が適用されるのだ!しかもおにぎり100円キャンペーン中!をっ!缶コーヒーも2缶買えば1缶半額!ガス中の幸先スタートの良さが、山中にも及ぶとは思いも寄らなかった。この時は、ただただ食料に有りつけてしかも割引率著しく武者震いしてしまっていた。
ファミマ探訪の幸運を他所に、県道386号線は依然としてガスに包まれたままだった。7時少々前、未だ駐車場には10台も先客がいない中、ガスに塗れて奥岳温泉スキー場界隈に辿り着いてしまった。矢張り、この状況で数時間後に晴天を予測出来た者は皆無であったことは想像に難くない。ひょっとすると、例の荒島岳の如く、先んじれば良いのに未だ車内で油を売る者も居たのではなかろうか。そんな中、おにぎりを一つ平らげた後、6:55、ガスの中のゲレンデへと突入した。
大きな周回コースの取れる安達太良である。カメラとステッキを持った50代程度の方がほぼ同じ時刻に駐車場を発ち、自分は勝手知らぬため、その都度地図と睨めっこをしながら、方や道を知り、先へ進んだりの攻防が見られたが、恐らくその氏も晴れを予測できていなかったに相違ない程のガス塗れである。

そんな中、タニウツギやノリウツギが目の保養となった。1月間の不在期間を守ってくれたようである。徐々に安達太良ワールドへ溶け込むこととなった。泥濘んだゲレンデを歩くこと小一時間、何と何と、上空が青みがかってきたではないか!少々前から、ガスの中に太陽の力を感じつつあったのは嘘ではなかったのである。ひょっとするとひょっとして、天気予報通り!?!?ゴンドラ降り場至近の薬師岳展望台に至って、上空はすっかり晴れ渡ったのである。この天候の回復具合については、正直、自信はなかった(笑)。太陽さんよ、疑ってごめんね。「この上の空がほんとの空です」との二本松市による木柱があった。そう思う。だからと言って、この下の空をウソだと貶すつもりは毛頭ないのだが。半信半疑なままでも進んで来た甲斐があったと言えよう。梅雨時の一瞬の晴れ間は千金に値した。


光合成回路が高速回転し始めたアントニオはずんずんと山頂を目指して突進した。おぉ牧場は緑。おぉ五葉松も緑!力強い。晴天は味方だ。今日も、太陽と会話の出来るアントニオだった。青空広がる中、少々風当たりが強くなってきた。天候が崩れるのも早かろう。


8:48、山頂着。ブラボー、ムッシュー・コロンボ!!!とは、某大学フランス語講座のテキストでの表現だった。親類だかが贋画の容疑で、、、とどこがブラボーなんだか、と言ったテキストではあったのだが。ムッシュー、やったぞ!!!先発部隊、或いはくろがね小屋からの先駆者も少なくはなかったが、皆、この晴天を数時間前から信じられていたのであろうか。信じられた者は救われた。


ここからすぐの下山も可能だが、9時前に下山を開始することもなかろう。月面世界の稜線を進んだ。それは、阿蘇やくじゅうの北千里浜を髣髴とする風景であった。硫黄臭が少々気になる。山は生きている。アントニオが確認した範囲での、この山域の最高峰、鉄山には30分足らずで到着した。少しずつ、空に白いものが増えつつある。強風は止まない。嗚呼、信じてなかったが、信じて正解だった。下山に限る。


再び、月面を縦にしながら進んだ。矢筈森。稜線のすぐ脇にあり、峰の辻の傍にあり、山頂碑も不在なれば人は見向きもしない場所だろう。ごめんよ、皆に代わって謝るよ。


峰の辻から稜線を離れ、30分足らずでくろがね小屋に到達した。太陽光発電システム 割と低い位置にあるのは冬場に少人数で取り外しがし易いためだろうか。水冷でも構わないから缶入り麦茶でもあればと思いながら建物の周囲を巡っていたが人の気配がない。未だ麦茶に手を出すな、との神の思し召しに従い、素直に小屋前を辞去した。
小屋前から1車線分幅の林道を下っていると、その凸凹さに一瞬で辟易しかねない路面なのだが、1台の、世界に誇る小型4輪駆動車ジムニーが正面から小屋に向かって来るではないか。すぐさま小屋の主の物資運搬と読み、潔く道を譲ろうと路肩に大きく引き下がったものの、逆にくろがね小屋の玄さん(仮称)の方が、小錦クラスの人間が余裕で通過可能な程、反対側の路肩にジムニーを寄せて停車し、「すみません、どうぞお通り下さい」と非常な低姿勢振りを見せていただいた。おぉ、玄さん。お互い笑顔ですみませんねぇ、だった。今度は必ず泊まりに来るよ。それまで、達者でいてくだされ。
くろがね小屋側から登頂してゴンドラで下るルートが好まれているのか、空の白みが増す中、擦れ違うハイカーの波は途絶えなかった。徐々に、上空のみならず、進む先、来た道すら視界が薄れて来た。妖艶に毒、レンゲツツジのみが色鮮やかではあるのだが、さすが、天気予報。当たっているではないか。。。
11:08、駐車場に戻る。一面のガス、案のJoe。アントニオが到着した時点では10台未満の車だったのだが、今や大型観光バスが数台に乗用車の数は3桁に達しているのではなかろうか。今から登らんとするパーティーもある。天気予報通り、ガスだ。お主の力量を考えて勢至平に向かい給え。アントニオは意気揚々と引き揚げる。眠い中、気合を入れて運転してきた甲斐があった。
県道も土湯バイパスも視界は不良だった。晴れていれば高原風景に見惚れながらのドライブを楽しめたことだろうが、まっちろけである。アントニオは既に消化試合に突入している。否、夢は麦野を駆け巡り、ガスに塗れようが構わないのだ。
土湯温泉界隈で唯一と思われる日帰り温泉、樹泉に寄る。此処自身もホテルの別館ではあるのだが。土曜の昼時ともあり、客は少なく快適な湯である。pHは7.2とアルカリ度としては低いようだが、ぬるぬる感がたまらない。露天の湯温も快適だ。稜線上での好天の余韻が覚めやらない。嗚呼、早起きは32文の得である。
さて、本日のダブルメインイベント、アンナガーデンに到達した。物産屋のみならずチャペルもあり、然程広くはないスペースに色々と興味のある店が並んでいた。否、興味のあるのは1店のみ。門を潜ると、、、樽生で用意されているのは、ヴァイツェン、デュンケル、ピルスナーにレッドエールのみとなっていた。スタウトなり、季節限定ピーチエールは残念ながらこの工場直営売店にして瓶のみでの提供となっており残念であった。確かに工場樽内と異なる液が入っている訳ではなかろうが、瓶ものを遥々福島で飲む必要がなかろうと感じた。あの、直営店で飲んだ抹茶ドラフト、あの痛恨。生液酒に限る。お摘みにトントロ焼きを購入した。しかし、丼ものが100円しか違わないことが発覚し、どうせ同じ肉でしょ?とのことで100円追加で支払って丼をいただいた。売店外の小庭のテーブル席からは、晴天であれば吾妻連峰に感動すら覚えるとのことであるが、もう山は数時間前に終えていた。今は目の前の琥珀色の液体のみ。2杯頂いて満腹と思いながらガーデン内を散策してると、そう、先ほど麦茶購入時に、「半額券はお持ちですか」と聞かれたそれが、若干1枚、ガーデン入り口の大型マップ手前のパンフ置き場に残っていたのである!この半額券を今使わずに何時使う?アントニオは迷い迷いつ、矛先を180°変更し、再び工場の暖簾を潜ることとした。燻卵を頂いた。満足じゃ。次回は是非とも、ピーチエールを樽生で飲ませて欲しい。
帰路はSA、PAへの立ち寄り回数も増やし、万全を期した。都賀西方PAでは、餃子ドッグなる、所謂見た目がフランクフルト状の、しかも味が餃子、なんてものを口にした。うぬ。確かにフランクフルト状なので食べ易いとは思うのだが、味的には普通に餃子を口にしても良かったかと思う。まぁ、及第点だ。
一瞬の青空だった。ほんとの空だった。
(完)

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付録:
山旅・麦旅アドバイス
・取り立てて急な斜面はなし。 ・アンナガーデンは、ガーデン内の個店毎に駐車スペースがあり、 ガーデン全般向けのそれ、と言うのは存在しない。 ・アンナガーデン内のピザ屋でも福島路ビール購入可能。当然半額クーポンはないが。。。