避暑

不定期連載 山道をゆく 第200話
08/05/04
雨ヶ岳
【避暑】

5/4(日)
庵庵−中原街道−保土ヶ谷バイパス−横浜町田IC−中井PA−御殿場IC
−R138−旭日丘−R139−本栖−本栖湖山荘キャンプ場駐車場…端足峠
…雨ヶ岳…端足峠…駐車場−R139−R138−山中湖IC入口−山北山中湖線
−平野−山中湖小山線−菅沼−R246−船子洞門−県道603号線
−R246−市立病院前−ランビック−R246−長津田−下長津田
−県道109号線−ヤマダ電機上山店−JOMO鴨居店−庵庵

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
そろそろ重い腰を上げ、体を山慣れさせなければいけない。GWの宿は至る所事前予約がなければ泊まれないだろうし、そもそも事前予約も1人なぞ中々受け付けても貰えず、新居設備投資が嵩んであまり出費もできず、結局富士五湖周辺日帰り行脚の計画の運びとなった。GWであれば日中は何処も渋滞である。ETCの深夜割引を駆使し、既に明るい4時5時台に駐車場を発てば午前中に下山できて帰路の渋滞の心配も皆無と読んで、午前1時10分に目覚ましをセットして床に就いた。
果たして、目覚まし通りに目を覚ましたが、その後再び瞑想に陥ってしまった。気付いたのが2時半頃。うぬ。未だ諦める時刻ではない。そそくさと支度を調え、庵庵を発つ。新庵庵から数分は従来と道程は異なるが、その先は何時もの通りだ。東名高速は中井PAの改修工事が済んだ模様で、まず食堂の窓外に目に付いたのがジャンボメンチカツ定食のメニューである。をぉ!健在だったのか。安心だ。次回は是非ジャンボメンチカツにしたい。中井の先は少々霧っぽく、速度制限の影響を受けたが渋滞も当然なく御殿場ICに到着した。御殿場IC下車直後に濃霧に冷や汗を掻いたが、何故か山間部に入ると霧は消えていた。少々緩いスピードの先行車両は安全のためだと思い、東部富士五湖道路に投資せずおとなしく国道を登った。山中湖畔で辺りはすっかり明るくなり、さながら山中湖も河口湖も西湖も精進湖も今回はパスし、最西部の本栖湖へと到着した。
国道を逸れてからすぐに到達するキャンプ場は芋洗いと呼ぶに相応しい賑わいである。竜ヶ岳登山口の看板を目に此処から昇るか、と思ってキャンピングカーの狭間に駐車をして地図を見直し、居場所間違えに気付き、釣り人の脇を縫って少々湖畔を更に西に進んだ。湖畔西側のひっそりとしたキャンプ場の一角に車を止め、トイレを澄ませて出発したのが5時9分である。1時10分起きで出発予定時刻を4時半としていたので少々遅れを取り戻すことができた。
気分爽快な朝だ。巣雲山以来、4ヶ月振りの山への期待に本栖湖の風光さえ色褪せてしまう。キャンプ場の駐車場には数台の車両を確認していたが、山登りをするグループは皆無だろう。GWの富士五湖周辺の山とは言え、多分今日は誰とも擦れ違わないだろうと思う。黄金週間真っ只中に雨ヶ岳を独占するのだ!そう、独占者の使命として蜘蛛の巣掻き分け作業が待っていた。身長の2乗に比例する蜘蛛の巣へひっかかる度数の体現は、必要不可欠なタスクであった。不快感がゼロとは言えない。然し、アントニオは蜘蛛の領地を侵犯している事実を反芻しながら、意気揚々と土を踏み締めて行った。
端足峠までにはコースタイム1時間10分のところ、50分程度も掛けてしまった。鍛えることによる進化と加齢による衰退と、ここ近年後者の影響が否定できなくなって久しいのだが、今日は、今日こそは前者が勝ると念じて止まなかった。4ヶ月振りと言うのに傲慢かもしれない。だから50分は下方修正と痛感した。端足峠と言えば東海自然歩道との交差点の様である。ん?記憶がないな、、、彼是9年前の東海自然歩道行脚4日行では、実際には此処まで到達してはいなかった。この地より東側の言わば端足峠入口で東側へ折り返すルートを辿った筈だ。この地は初見参だ。だが、4年前に長者ヶ岳の先で西行が止まっている東海自然歩道行脚である。百名山だけではアントニオを終われまい。いつかまた天竺を目指したい。
鴬だろうか、「ホォーエーホォーエー、、、」と何時になく自信のない鳴き声である。ホーホケキョでもない。近隣に真似すべき鳥に恵まれなかった鴬なのだろう。最近の嵐の痕か、山桜が落ちる前に躑躅の花弁が至る所に散っているということは如何なものだろう。緑の中に、白とピンクがほんの時折目を和ませてくれてはいたが。温暖化は本栖湖南にも然り。

地図中の「急登」の二文字が幾度か目の前に立ちはだかり、微小休止を繰返し喘いだ。山頂の北側は樹林に覆われているとのガイドブック評であったが、所々北方に覗く八ヶ岳に、雪を頂いたアルプス山塊に心躍らせざるを得なかった。鍛え不足か、2度程ニセピークに騙されながらも、時折北側の幹間に覗く南アの方々に、また、南東側大スクリーンに写し出される富士の姿に、今日の役目は終わったとの感慨に浸りながら山頂に到着したのは6時50分前であった。峠からのコースタイムが2時間のところ、半分を切った。庵速、庵脚は健在だった。然し、登頂を歓迎してくれたのはガスのみである。山頂までの途上ではあれ程くっきり見えていたのに、、、富士は見えねど高楊枝。それに山梨百名山碑も見当たらない。最も、雨ヶ岳が山梨百名山にカウントされていないことを知ったのは帰宅後なのだが。
20分くらい待とうか。それくらいすれば、ガスも飽きて退いてくれるだろう。寸分の光明が時折訪れたが、大スクリーンの富士は叶わなかった。
20分待ってみた。仕方ない。下りるか。そして下り始めて数分のことだった。一気にガスが退き、大スクリーンが眼前に広がった。ヤラレた。急いで山頂に戻り、山頂碑のバックに霧消後のクッキリ富士にシャッターを切り、再び下山人となった。数分後、何と2人のハイカーと擦れ違った。マニアックな!アントニオにそう言われたくはなかっただろうが。山梨百名山でなく、隣の百名山竜ヶ岳より300m程も高くシンドい山はGW真っ只中にして今日も閑散としていた。 さて、7時20分で下山のコースタイムが2時間40分だから9時頃には駐車場に戻れるな、と計算していた。歩き始めて少々してから計算間違いに気づく。そうか、10時着か。それなら温泉も開いているだろう。ただ、下山ルートは足取りも頗る軽く、あれよあれよと言う間に端足峠手前の昇り返しに戻って来てしまった。膝を壊したくないため重心を下げながら歩くと、必然と大股小速歩きになってしまい、峠までの1時間40分コースを40分で終えてしまった。再び端足峠に戻ると、鴬の鳴き声は「ホーホケキョ」であった。学習効果が早速確認出来た。端足峠までのコースタイムは1時間40分。しかし、山頂から40分しか経過していない。。。アントニオのどこでもドア殺法は今日も炸裂した。若干腿の筋肉痛を覚えつつあった。計算間違えを脚で修正する男は今日も行く。すぐさま筋肉痛、ってことは未だ未だ健全な証拠だ。足取りは軽く残り1時間コースもほぼ半分で終えられそうな勢いが続いた。然し、キャンプ場直行コースと思しき分岐点からが厄介であった。花図鑑もご無沙汰で、花の名前もおぼろである。確かこの形はオダマキだろう。


最後の10分分である。荒沢岳下山を思い起こすような、はたまた怨念の、あれは前述した東海自然歩道行脚のことであった、忍野村樹林遭難未遂事件である。当時、ガイドブックには、「通過するのがけっこう難しい」とあった。今回のも、不明瞭だが北を目指せばなんとかなる、といった記述があったと思う。本栖湖南側樹林帯は忍野のそれ程複雑ではなかったのだが、踏み跡は不明瞭であらゆる方面に歩き難くない点が難点であった。川口浩となって林野を分け進めば、川原に四駆車が4台見つかった!キャンプをしている。然し、その4台が何処から来たのか難問であった。 車を発見して川口浩から一度平民に戻ったが、再び川口浩となった。寸分の逡巡の末、枯れ川沿いに北上、のつもりだった。何と、方位磁針を持ち合わせていなかった。前回の行脚までデジカメのストラップに方位磁針を付けていたのだが、つい先日その磁針がお亡くなりになった。川口浩は方位磁針に尊敬語を必須としていたことだろう。合掌。枯れ川沿いに恐らく北と思しき方角に歩いて数分、何とか先程の分岐点より15分程で、駐車場と登山口の中間地点に這い出すことが出来た。未だ8時半過ぎであった。駐車場には将に山支度中のグループも見掛けた。時間的には端足峠から竜ヶ岳往復も欲張れただろうが、休憩30分を含めて若干3時間半で行程を済ませたが、体力的には6時間コース分を消費しており、今日は敬遠すべきと悟った。
未だ8時台である。これから目的地を目指す車両が殆どだろう。そんな車を尻目にアントニオは既に帰途に就いていた。午前8時台に観光地を発つ。ビジネスマンらしい。逆方向方面が渋滞しているのを見ると甚だ愉快で存分ストレス解消になる。「せいぜ、頑張れ、俺はもう仕事を終えたから!さぁ君達はせいぜい、それぞれの「仕事」を目指し給え」嫌味五千万状態であった。早起きは765文の得を体感した。ストレス解消に物を破壊する訳でもない。おっとっと渋滞車列のオーナーさん達よ、CO2排出が嵩むぞこのヤロー!猛省されたし!!!
帰り道は流れていた。流れ過ぎて、未だシルバンズも富士山ビールも開店前、紅富士の湯も然り、、、うぬ、風呂は自宅風呂にするしかないか。平野に出て小山方面への抜け道を文字通り駆け抜けたが富士スピードウェイ観覧車渋滞に数分はまってしまった。屈辱だ。今日もレースか。申し訳ないが、人が速く運転する車を見ることに楽しみを感じることは俺は出来ない。勿論運転のテクニックも必要だろうが、ガソリンを消費(個人的には浪費と思うが)しながらの作業ではないのか。いくら速く走ってもゴールがスタート地点と同じとは燃料の浪費に他ならない。観覧料金が部分的にでも地球温暖化に貢献しているのならば理解できなくもないが、そうでなければ猛省を促したい。そんな渋滞を第六感で掠めR246に乗った。下り線は数珠繋ぎだが上り線は流れていた。うぬ。これなら高速利用も不要だ。そのまま下道を東走した。流れている。厚木で未だ11時台だ。とあるレストランにピットインすることにした。開店寸前に入店してしまったのか店員には驚かれてしまったが、以前来店したことを向こうが覚えてくれていたので少し安心した。手こねハンバーグもジューシーでこれも注文したが、透かさずメニューに記載されていない、ベルギー風強壮スポーツドリンクを所望した。この店は自家製スポーツドリンクで有名だが、高座豚メニューも見逃せず要予約の豚のスペアリブは圧巻である。その店員と少々話し込み、明日明後日と恵比寿で開催されるジャパン・スポーツドリンク・フェスタの話題で盛り上がった。東京会場は狭いので9月の横浜会場がお勧めとのことであった。9月の第1週末と言えば社員旅行やネパール文化祭イベントが重なっており、だからこそスポーツドリンク日和と言えるのだが逡巡は否めなかった。赤みがかったワイングラス入りのベルギー風強壮スポーツドリンクは何度飲んでもイケる。9月の大会にはこの店も出店するそうなので、是非参加したいと申しながらこの店を辞去した。
高速に乗るまでもない、そう思いながら再びR246の人となった。長津田のフィールドアスレチックもファミリーでごった返していた。遊園地と違って追加料金がかからないのが人気の原因だろう。通常通りのR16から中原街道へのルートもズーラシア渋滞は避けられないだろうと、下長津田、十日市場経由で家に向かった。午後は丸々家事に充当でき、ビジネスクライミングを全うした。
(完)

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

付録:
山旅アドバイス
・竜ヶ岳登山口は複数あるので雨ヶ岳登山口と間違えないこと。
・中井PAのジャンボメンチカツ定食は深夜でも注文可能。