給水指数は、今

不定期連載 陸道をゆく 話数知らず
06/01/07~
第二回 浜名湖ブルワリー杯争奪 浜北勝手マラソン
グルメ街道を行く 浜名湖ブルワリー(地ビール)、天神蔵(地ビール、地酒)
【給水指数は、今】

1/7(土)
庵庵…鴨居駅〜東神奈川〜横浜〜小田原〜熱海〜浜松駅…R152
…浜名湖ブルワリー…ユーストア…R362…宮口駅〜都筑駅・メイ・ポップ
…浜名湖周遊自転車道…Aコープ三ヶ日…R301…リステル浜名湖

1/8(日)
リステル…R301…県道334号…新所原駅〜浜松〜天竜川駅…R152…天神蔵
…浜松駅〜熱海〜小田原〜横浜〜鴨居駅…庵庵

…:歩き/走り、〜:電車/列車

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厳寒である。
地ビールに温泉は外せないが路面凍結や積雪は避けたい、そんな中で昨年末、数年振りに購入した青春18きっぷの利用を目論み、また遠江入国を決意した。前回のブルジョワグリーン車行脚とは異なり、一兵卒として臨む構えだ。ムーンライトながら折り返し列車のリクライニングシート踏ん反り返りも選択肢としてちらついていたが、一刻も早く浜松入りし走行時間を十二分に確保しておきたいとその場で判断し、東神奈川からは素直に南行電車に乗り継いだ。熱海以西は襤褸113系電車の王国だった。襤褸呼ばわりも嫌かも知れない。然し、名古屋地区には新車が跋扈している中、静岡以東に追い遣られているとしか思えない運用形態である。走れ113系。左は太平洋。右は青空の中をジェラートをコーティングした冷涼感で対抗する富士。積雪の可能性も少なく、桜海老漁沿岸線は未だ未だ113系の独壇場だ。
前回のこだま行脚時と比較して2時間早い庵庵出発でさえ、浜松到着は10分程度のアドバンテージしか残されていなかった。トイレで弛緩さえすれば其れも御破算である。前回の、駅前の郵便局でフルマラソン大会参加費とパキスタン地震寄付の振込みをした時間を考慮すると、約20分はスタートが早かったと言えよう。今回は快調である。前回は前日が休日だったにも拘らず、今回の方が体調が遥かに優れているではないか。今回の浜北マラソン走行中の給水は自動販売機のドリンクに頼ったが、前回は水入りPETボトルを持参した。はたまた前回は出走前にシウマイ弁当にサントリーモルツスーパープレミアムの黄金メニューを摂取、今回は昨晩の焼き立てパン屋の売れ残りに商品挿げ替えセールで叩き売られ、味的にも煮詰まってしまった感の否めない缶コーヒーである。所持品重量、体力温存度、摂取栄養量を鑑みると今回の方が総合得点は劣るのだが、前回覚えた地の利を十二分に活かしてアントニオは浜松市内を快走して行った。確かに寒かったが、この寒さはマラソン向きと言えるのか。
2度、目敏く発見した100円ぽっきりの清涼飲料水自販機に寄った程度で滞りは殆どなく、また、遠州芝本駅付近で道を数本間違えたものの、ブルワリーまで1度しか地図を確認せずに到着できたのが幸いである。浜松駅で東海大震災に遭遇しても、地図なしでブルワリー迄戻れれば、水分に困ることはないだろう。ブルワリー到着も前回よりだいぶ余裕があり、未だ今日の営業が始まっていなかった。レストランへはゴングと同時に雪崩れ込んだ。1番乗りだ。負けた者は居ないが、勝った、勝ったのだ。
前回、写真撮影だけで誤魔化したメニュー冊子折込内のビール酵母効用については、後学のため、チラシを頂いてきた。
酵母に含まれるアミノ酸やミネラルが肝臓の細胞再生を促す。ビタミン(インシトール)が血糖値を下げる。カリウム・食物繊維が体内塩分の排出に寄与する。核酸がボケや物忘れに効果的。
市販のビールは酵母を濾過で失ってしまうから、酵母を訪ねて六十里は人生に必要な道程であったのだ。そして、眼前には黄金の輝き、ヘヴンズ・ドア。先ずは飲み比べセットでヘヴンズ・ドア、ハニー・ブラウン、ヴァイツェン・ボックの3種を所望した。ピザも美味い。そして未だ客はアントニオただ1人である。あっと言う間に3つのグラスが空となったところで、お姉さんを呼んで次の注文を請う。其の飲み比べセットは5種のうち3種を選択できるものだが、
「全部ヘヴンズ・ドアにするのは禁じ手ですか」
お姉さんは、お上のお伺いを立てに厨房に戻った。聞き分けられるだろうか。他の4種には、ハーフ150ml、グラス315mlにピッチャー1600mlの3サイズが選択できるのだが、ヘヴンズ・ドアだけは、「グラス270mlのみ」の但し書きがあった。是はそもそも飲み比べセットでの選択自体についてもご法度を告げるものなのだろうか。前回も気にせず真っ先に注文したものだが。漸くお姉さんが復活した。「(其れも)良いですし、グラスもありますよ」とのことで、矢張り触れたくないものに触れてしまったかのはにかみが感じられた。Goサインが出たところで怯んではいけない。お姉さん、頼んだぞ。やがて、黄金色の同色に輝く3つのグラスが登場した。壮観だった。否、未だ禁じ手が一つ見つかった。次回、また一番乗りで其のカードを引こう。今日もまた、天国への扉は開かれたのである。
さて、今日は第2給水所は寄らないスケジュールなので、少々時間の余裕があった。前回とはルートを変え、田園地帯に聳えるショッピングセンターユーストアに足を踏み入れた。瞬く間にアルコール売り場に吸引されていく弱いアントニオである。ヘヴンズ・ドアの瓶は果たして見つけることは不可能であった。ウィンドウショッピング後、R362迄進むのは遠回りなので、天浜線の踏み切りを越えた後は、線路沿いに西へ進む。少々寒いが好天で爽快な散歩日和であった。線路は続くよ何処までも。
宮口からも前回と同じ時刻の列車に乗った。フルーツパークからは前回のような幼稚園児の遠足に揉まれることもなかった。カタコトカタコト。列車は時折ディーゼルエンジンを唸らせた。やがて奥浜名湖の煌びやかな湖面が蘇る。都筑もすぐだった。メイ・ポップでみかんパンを購入し、今日も西を目指す。浜名湖周遊自転車道の北岸周りルートの存在を知らず、暫くは国道を歩いてしまったのだが、国道の交通量のうざったさに閉口し、周遊道の北岸ルートの片鱗を見つけては逃げ込んだ。忠実に猪鼻湖岸を巡るため国道より遥かに遠回りではあったが、車の喧騒より尊い道程であった。午後になり風も一層強まったのだろうか。 其れでもパーカーを羽織ればすぐに汗だくになってしまうため、已む無くTシャツ1枚で国道に復帰した。1月に半袖Tシャツ1枚である。走っている最中に白いものがパラついてきた。霙のようである。然し、半袖は貫いた。好調だった。鍛えれば全身が断熱材になる。前回は猪鼻湖の南岸ルートを選択したため其の様子を伺い知ることはできなかったのだが、ホテル最寄の尾奈駅は駅併設の売店なども見当たらず、寂しいものだった。観光バスの団体か自家用車の客以外で、尾奈駅を利用するホテル宿泊客は果たして居るのだろうか。ラストスパートして程無くホテルに到着した。
恐らく前回と同じ部屋である。前回訪問時に設定した目覚まし時計の時刻が其のままのような気がする。ホテルの部屋からもまた煌びやかな猪鼻湖が一服の清涼剤となった。さて、午後も少々走ったとは言え、今晩も天下分け目の大バイキング合戦が控えている。少しでもエネルギーを消耗すべく、室内筋トレに余念がなかった。前回は思わず半ばで舟を漕いでしまったりしたが、今回は寸前まで体力を使った気概だ。今回のアペリティフはまたズワイだろうか。蟹は暫く遠慮したいのだが。。。
ゴングである。食卓には三ヶ日牛のしゃぶしゃぶの準備が整えられていた。前回の松茸ご飯の姿形もない。選択肢が絞られたか・・・今回は腹九部程度で食欲を抑えられるのではないかと感じた。牡蠣の赤出汁土瓶蒸しに、久々の八丁味噌の深さを味わった。食欲が前回の15%減に陥ったのだろうか、戦場も前回のような活気が今一つなため、競争心が奮い立たないのだろうか。あのハイエナのようなオバタリアンは今や雪の中か。今日は団体客より多くのファミリーが集い、夫々の食卓で箸を躍らせていた。しゃぶしゃぶ2巡目の提案に、一度は丁重にお断りしようとしたものの、「半分では?」と駄目押しを食らい、また灰汁抜き代官に再赴任した。今回は魚介より肉を多量に摂取した。体が余り慣れていない。そんな中、腹九部五厘程度で箸を置いた。
読書をして少々間を置いてから風呂へ向かう。猪鼻湖対面の東急リゾートマンションには数多くの明かりが灯っていた。連休初日ならではか。華々しい夜景ではないが、お陰で星も見易いのが有難い。惜しむらくは消毒のための塩素臭が前回より鼻に付くことだ。上がり際に10人を越える小学生らしき団体が押し寄せて来た。五月蝿いが日本語には聞き取れない。韓国からの来訪か。猪鼻湖へ来襲とは乙過ぎる。ツアーパッケージがお買い得だったのだろうか。ホテルの様々な箇所にハングル文字の掲示も目に付く。ホテルとしては彼等も重要顧客なのであろう。
そう、部屋に入ると真っ先に空気の淀みを感じた。暖房が効いている。設定が22℃にもなっている。あり得ない。すぐさま16℃に下げたが、其れでもエアコンには馴染めず、スイッチを消した。自宅では暖房を彼是4年以上利用しておらず、偶の休暇ぐらいは暖かい部屋で、とは思ったものの、慣れないものに体が拒絶反応を示してしまう。安く出来ているアントニオである。CO2排出量取引が個人ベースまで拡大した時にがっぽり儲ける算段は早くもついている。否、自分が存分儲かる必要はないが、頼むから無駄な燃料消費は止めてくれ。
6時台に起床し、黎明時分の猪鼻湖を眺めに風呂を目指すと、どうも夜より人数が多かった。内風呂の戸を開けてものの数秒外気に触れてねば露天風呂に浸かれないのだが、この、モノの数秒に凍死の2文字がちらつく程の気温だった。
朝風呂を堪能後、みかんパンを頬張ってチェックアウトへとフロントへ向かう。食堂は朝食バイキンガーで賑わっていた。どうか皿に自ら盛った物は残さず食べていただきたい。そう願いながらホテルを後にした。
さて、前回同様に国道を走り始めて数分で矢張り大量の汗を掻いた。止むを得ず今日もパーカーを脱ぐ。暫くは長袖Tシャツで滑走した。今日も体調が上向きだ。知波田の駅でトイレ休憩をと思ったら先客が居た。むむ、朝も早よから・・・と言っても自分も同じ時間帯に其の人と同じ行為をしようとしていたのではないか、、、然し調子が下がらないため、JR最寄の鷲津ではなく、隣の新所原を目指すべく針路を変えた。昨日から足掛けで天浜線の西側1/5の距離を2本足で稼いだことになる。駅には9時前には到着した。今日は全く地図を開いていない。鍛えれば全脳がナビになる。
大昔は京阪神地区で新快速電車として走っていた車両のお古で浜松に戻り、乗り換えて1駅進む。未だ天神蔵営業時間まで時間があったため、1駅向こう側から攻めようという余裕だ。北風が冷たい中、ビール指数を上げねばならぬ。小走りしながら西へ進むとまた時間を余らせてしまった。開始時刻の10:30に10分程先んじて酒蔵に到着してしまい、また北風に体温を奪われぬよう近辺を歩き回った。さて、蔵の看板にランチ11:00〜との文字を見つけて再び怯む。この寒風の中10分さえ長過ぎるのに、更に30分待てと言うのか。恐る恐る蔵の門を潜る。食堂売店の建物に入り込み、ランチの時間帯を聞くと開始時刻は動かせず、今は2階で木彫家具展示即売会を実施しているのでまあ上がってご覧あれとはご愛嬌だ。仕方なく階段を昇る。木の暖かみのある家具が並んでいるのだが、仰天な価格、諭吉さんは最低10人を生贄にせねばならず、部屋は暖まれど懐はまた厳寒を迎えかねない品揃えであった。アントニオの寄るべき場所ではなかった。とは言うものの、大日本帝国時代の地図が2枚掲げられていたため、暇潰しに日本百名山を思い出しながらカウントする。96しか思い出せなかった。うんうん唸っているうちに11時を回ったので早速食堂でランチを注文する。折角天竜川駅から小走りにして高めたビール指数が2階で激減し、取り急ぎテイスティングカップでピルスナー、エール、デュンケルの全種制覇に手を掛けた。食堂のオバサンが帳面付けに係りっきりになっており、確かに客はアントニオただ一人とは言え、営業をしようと言う気も全くない。デザートに食後のコーヒーも此方が指示をして漸く出して貰った次第だ。この対応でこの蔵元に対する興味は今日で萎み切った。今後暫くは浜松行脚はあり得ないだろう。
余りすっきりしない気分の中、浜松駅へ急ぐ。天神蔵は10時半から飯が食えると目論んで電車の時刻を調べていたがあの様だ。15分以上は遅い出発に振り替えないとと思いながら、帰路の車内で暇を弄ぶのも頂けないと、木藤さんのお母さんが書いた1リットルの涙の続編を駅ビル書店で入手し、改札へ向かう。何と、天神蔵10時半を見越して乗ろうとしていた列車が5分遅れとのことで未だホームに居るではないか。おぉ。113系襤褸電車しかもたったの3両編成だが、何とかロングシート席を確保して出発を待った。関ヶ原の雪か、はたまた短編成鮨詰めによる過剰な乗降時間の蓄積に因るものか、米原発の新快速電車は5分以上遅れて到着し、其の乗換え客を待ってこの襤褸電車は発車した。女性車掌が遅延を詫びながら、以後の各駅での乗降時間の短縮を図り、また、運転手も制限内でスピードを目一杯出しているようで、浜松発車時の10分近い遅れは静岡で3分になり、興津での特急通過待ち時間の調整によって霧消した。然し3両編成は酷だろう。アントニオは一介の旅人だから是もまた旅の一場面程度に収まるだろうが、普段乗る人々にとっては堪らないだろう。確かに旅人としても心地良いものではなかったが。熱海でJR東の15両編成の各駅停車に乗り換える。元来戸塚の住人としては当たり前の長さであるが、久々に其の長大さを痛感した。小田原で対面のホームに湘南新宿ラインの特別快速が停車している。はてどちらが先に出るのか?漸く乗っていた列車の車掌が特別快速が先発であることを告げると、どどっと人が流れて行った。もう少し早めのアナウンスが必要だろう。でなければ、客が迷うようなダイアを組むべからず。i-modeでの列車検索にもこの特別快速が引っかかっておらず、電子データが100%信用に値するには未だ時間が掛かることを示唆していた。横浜駅ダッシュで横浜線電車へ1分で乗換え、結局元の蔵出発30分遅延分に加えて更に15分も早く鴨居駅に舞い戻ることができた。
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13歳のハローワークを最近読み耽り、色々と考えさせられた。一つは趣味について。生きるのに必死な人間が趣味に割く時間があるのだろうか、との問いである。少なくとも日本には現在走るだけで稼げているプロのマラソンランナーはいない筈だ。ということは、みな裕福な暇人ということか。此処まで自虐的に言い切ることもなかろうが、Qちゃんや野口みずき選手、はたまたつい先日の箱根駅伝の感動のドラマはとても趣味の2文字で抑え込むことは不可能だ。ただ、小橋建太が四六時中プロレスのことを考えていると言ったり、会社の上司も似たようなことを言っていた。厠にしゃがみながら考えることもできよう。ならば走りながら考えるか。山登り中の考え事は遭難の危険があるのだが、妥協点が見えてきそうである。
もう一点は地球環境のこと。温暖化防止やCO2削減等と実しやかに騒がれているが、其れは「地球のため」ではなく「今後の人類のため」でしかない、との指摘だ。目から鱗である。CO2が増えて喜んでいる生命体もあるのだろう。今思いついたのだが、バイオテクノロジーによって、其の壊れつつある地球環境へ耐性の強い生命体に人類を変えて行くという恐ろしいことも出来るようになるのだろうか。ともあれ、資源は無駄にしてはならない。烏賊も刺身にする時には薄皮も剥ぐと食感が向上すると言われるが、薄皮にも五分の魂である。ビュッフェスタイルの食事に参加するならば当然グランドスラムを狙いたいところだが、アントニオが其のビュッフェに挑まなかったが為に食われずに済んだ肉塊にも、五分の魂である。
(完)

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付録:
陸旅アドバイス
・天神蔵自体は10:30から営業だが、食堂は11時から。