危機一滴

不定期連載 陸道をゆく 話数知らず
07/01/13~ リステル浜名湖
第三回 浜名湖ブルワリー杯争奪 浜北勝手マラソン
グルメ街道を行く 浜名湖ブルワリー(地ビール)、マインシュロス(地ビール)
【危機一滴】
1/13(土)
庵庵…鴨居駅〜新横浜〜浜松…新浜松〜遠州芝本…浜名湖ブルワリー
…ユーストア…浜松市北部…湖東東…姫街道…R362…東都筑駅
…都筑駅手前の和菓子屋…都筑駅・メイ・ポップ…三ケ日駅
〜尾奈駅…R301…リステル浜名湖

1/14(日)
リステル…R301…リステル=鷲津駅〜浜松…マインシュロス…浜松駅
〜新横浜〜鴨居駅…庵庵

…:歩き/走り、〜:電車/列車、=:送迎車

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昨年10月末にエクスプレスカード特典のグリーン車旅行でまたポイントが貯まっており、2007年2月の有効期限を鑑みて今回の出走への決断に至った。乗車券+エクスプレス特急券は僅かながらぷらっとこだまプランより安価である。往路はぷらっとこだま、帰路はこのカード特典でこだまのグリーン車に乗車する按配だ。今年初頭に毎日最低20分runを目標に掲げたが、2日連続の長距離走は控えることにした。1日目走り潰してもいいが中途半端はいけない。今回はブルワリーまででなく、ブルワリーからホテルまで走ってみるとするか。30kmは超えるだろう。挑戦だ。
さて、ブルワリーまで走った以前の2回は早目の出発故に朝食は崎陽軒のシウマイ弁当が譲れなかったのだが、今回は遅出である。正月残りの餅を焼いて朝食とし、8時前にノンビリ自宅を発った。ゴマ餅を摘みにビールでも飲むか。こだま565号名古屋行きのグリーン車は程ほどの着席具合であった。多分大半がぷらっとこだま利用者であろう。ぷらっとこだまは世捨て人の通行手形であった。
2時間も掛からずに浜松駅に到着。昨年とは様相が打って変わり近代的な造りとなったが、花の舞酒造の量り売り場が見当たらず残念であった。駅ビルも立派だが、大きな書店も見当たらず将来が危ぶまれる。渋々遠鉄乗り場に赴く。ICカードタイプの乗車券の波は此処にも到来していた。あと2ヶ月で首都圏でもパスネットは引退する。味気ないICカードの固定デザインと毎日付き合わねばならない日々の到来も遠くはないのである。昼間は12分間隔の運行でたった2両編成の遠州電車であった。高架化工事も進行中だが、新浜松駅付近も含めて全線単線であることを今日初めて知った。ボディカラーが真っ赤な江ノ電と呼ぶべきか。
約30分で遠州芝本に到着した。しまった。此処まで来てロードマップを自宅に置き忘れたことに気づく。ええい、なるようになってしまえ。やがて苦しむことを知らず、看板の示す通りにブルワリーを目指す。少々風が強いが晴天だ。そしてブルワリーを難なく発見し、またショックを受けた。2月からは予約営業のみに切り替わると言う。この1月中でも既に週末のみの営業に限定されてしまっていたのである。遠州芝本駅から徒歩8分だが、立地条件が芳しいとは言い難い。飲酒運転への厳罰化が叫ばれる昨今、車がなければ気軽には寄れないこのブルワリーへの集客に翳りが看過できなくなったのだろう。今回第3回目を数える浜北勝手マラソンだが、このブルワリーが使い辛くなってしまう以上、今回が最終回となろうか。地ビールも昨年は6酒類を飲めたのだが、今日のメニューには3酒類しか掲載されていない。年に1,2度ランチに来る程度では、ブルワリーの財政支援にはアントニオは全く無力であった。地ビール戦国時代の一終焉を目の当たりにした。それでも最後のシーフードピザランチを注文し、サラダバイキングにヘヴンズドアの一滴一滴を噛み締めるように飲んだ。前回までと異なり、今日は未だ十分な運動もしていない状況で、ビールの味も今ひとつのように感じてしまう。交通至便な浜松駅界隈に移転しようも、既にマインシュロス、天神蔵と2軒もの競合が犇く市街地に、浜名湖ブルワリーを活かす道は微塵もないと言うことだろうか。これがヘヴンズドアの最後の一杯となってしまうのか。浜名湖ブルワリーの去就が気に掛かる。
空腹を癒し、近所のスーパーのトイレで着替え、準備は調った。少々風が強い。素直にR362に沿えば道を間違えずに済んだのだがそれは冒険心が却下した。方角に間違いはなかろうと、R362よりやや南側を西へ進んだ。積もりだった。県道391号線、261号線辺りをさ迷っていたのだろうか。地図なき未知の道走行に、風さえ冷たくなければ爽快な大陸人魂を抱けていたであろう。地図なき道。ジモティに何度道を尋ねたことだろう。何時しかR362より大分南下してしまったらしい。姫街道は何処に。北風は吹き荒ぶ。何とか天竜浜名湖鉄道沿いのR362に復帰したのは西気賀駅手前であった。天浜線7駅分相当である。風の冷たさには閉口ものであった。
R362に合流してからは速度を落としながらも未だ西へと進んだ。宿まで走るのは脚がもたないだろう。浜名湖佐久米駅以降、駅舎に寄っては次の列車の時刻を調べ、進むか止まるか思案を重ねた。東都筑駅で大きく迷った。あと数分で列車が来る。逃せば約1時間はない。だが乗ってしまえば宿までコンビニにぶち当たることもなく、明日の朝飯をホテルの値高いモーニングビュッフェに委ねなければならないのである。数分の逡巡の末、アントニオは再び国道を走り始めた。メイポップの随分手前に、味噌饅頭定価90円のものが60円との看板を見つけてしまい、その和菓子屋に吸い込まれてしまった。遠州路を何時しか半袖とランパンで走っていたアントニオの背中に、アニマル浜口の「気合だ!」の4文字が店のおばちゃんの目に留まってしまった。「それで寒くないのかね、気合かね、やっぱり!?」体感外気温は摂氏一桁台だったことは間違いない。寒いことに相違ない。我を動かすのは気合か、執念か、怨念か、妄想か、野望か。ここに列挙していないものか。ここに列挙していないものに動かされてみたいものである。味噌饅頭2個で栄養補給をし、メイポップを目指す。明日の朝食用のパンを購入しようとすると、店内の籠に、「ご自由にお取りください」の表示とみかんがあるではないか。ラッキー!早速お持ち帰りとさせていただいた。
さて、東都筑で列車を逃したばかりである。次の便まで軽く4,50分はあるだろう。進むか読書タイムとするか、メイポップの存する都築駅にて取り急ぎ時刻表と運賃表を眺めた。愕然とした。
東都筑からの運賃とここ都筑駅から尾奈までの運賃が変わらないのである。
これでは走り損だ。次の列車まで未だ存分時間はある。東都筑辺りで弛緩してしまった影響で脚エネルギーに減退の一途だが、高々数十円程度の節約のため、再びR362の人となった。行程中後半に走りを盛り込んだツケでホテルへの到着申告時刻より2時間は遅れてしまう計算だ。しかし、走らねばならなかった。ヨタヨタ走りのアントニオは日暮れの三ケ日界隈を這っていた。尾奈まで残り2駅である。だが、もう走る気力は残っていなかった。大人しく列車を待った。
対向の列車はレトロ調に新装されたデザインが目に付き、慌てて携帯のデジカメで撮影したが、ぶれてしまった。既に、夕日の映える猪鼻湖の撮影は断念せざるを得ない時刻となっていた。
尾奈駅で下車した者はアントニオただ一人。乗車する者もいない無人駅であった。さて、残り1.4km程、最後の気力を振り絞って走った。近所の小学生は自転車乗車にはヘルメット着用が義務付けられているようである。それから、擦れ違った人への挨拶も、である。挨拶を明後日の地で貰えるとは嬉しい。挨拶をした方が勝ちである。遠州路の小学生、天晴れ。気持ちの良い猪鼻湖岸沿いの行脚であった。
ホテルに到着した。予定より2時間は遅い。晩飯まで1時間ないのでそそくさと温泉に向かった。膝サポーターによる擦り傷に温泉が染みるものの、3時間半を越える足旅を癒すには適当な湯温であった。
さて、3日前には夜食の予約を従来通りメールで済ませたのだが、18時に食堂に赴けどもアントニオの部屋向けの卓は用意されていなかった。「担当の○○氏から承ったとのメールを貰っていたのだが」と詰問するも、その○○氏の不手際は拭えなかった。なに、予約もクソも、ディナービュッフェなのだ。1人分程度の卓が増えて食堂側が困ることもなかろう。そして案の定、急遽用意された食卓の真ん中にはしゃぶしゃぶ鍋が鎮座していた。今日は精魂尽き果ててだからか、年の波か、食欲が昨年より減退していたことは否めなかった。ディナービュッフェだが、前回はしゃぶしゃぶを2皿は食べ尽くしたと言うのに、今回は1皿でギブアップである。ビュッフェ形式も卒業か。このリステルでの夜食も卒業か。リステル泊まりも卒業か。浜名湖ブルワリーの終焉と言い、浜北勝手マラソンは今宵で幕を閉じるのだろうか。
夜が明けた。寝坊した。早朝に20分runをし、朝風呂を嗜んでから日の出の写真でも撮ろうと思っていたが既に日の出寸前であった。昨日の走り疲れか、平日の激務が祟ったのだろう。撮影をしてから着替えて界隈を20分程走り、温泉に浸かって汗を流す。そして昨日メイポップで購入したパンを食べ、少々読書に勤しんでいるうちに9時半近くとなった。ロビーに行き、精算を済ませる。土産物、、、を、浜松駅で発見できなかったうなぎボーンが見つかったぞ。会社向けのモノも見繕って行くか。やがて9時45分頃フロント呼ばれ、玄関に赴いた。
カローラ1台。
公共交通機関を利用してこの宿まで来る酔狂はアントニオを除いて皆無と言うことか。タクシー代わりである。宿には申し訳ないと感じたが、これも宿のサービスなのだから使わない手はないのだ。お爺さん運ちゃんとは昨日走ったことからマラソン話題で盛り上がった。今日も界隈で何かしらの大会が催されるとのことである。国道は幾分歩道が狭いのが難点だが、鴨居の市街地走行に比べれば遥かに爽快な遠州路runであったと言えよう。お爺さん運転有難う。鷲津の駅で礼を述べたが、嘘をつくのが苦手なアントニオは、「また来ますので」とは言えずにカローラの許を去るしかなかった。丁度ホームに滑り込んで来た浜松行きの各駅停車に駆け込もうとしたが、階段を昇っているうちに間一髪、行かれてしまった。20分待ちである。ううむぅ。急いではいけない。読書をしながら時間を潰す。次に来た特別快速電車は8両編成のため空席には余裕があった。
ノンビリ歩いてマインシュロスに赴く。引き続き読書の末、ランチを待った。やがて卓に登場したサーロインステーキランチに加えて注文した都合2杯の地ビールの味に遜色はないが、今日も全く運動らしい運動をせずにでは有り難味も半減である。思い巡らせば、通算すると今回の走行にて浜松駅から遠州鉄道沿いに遠州芝本、そこから天竜浜名湖鉄道沿いに弁天島まで2本足でクリアした計算になる。残り、弁天島から浜松まで走れば、浜名湖、猪鼻湖一周完遂である。果たしてその機運は訪れるのだろうか。時速220kmの勢いで遠のく遠州路であった。
(完)

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付録:
陸旅アドバイス
・浜名湖ブルワリーのレストランは、2007年2月以降予約営業に。