不定期連載 山道をゆく 第197話
07/09/29~
長九郎山
グルメ街道を行く 鮎の茶屋(鮎料理)、伊豆高原ビール(地ビール・既出)
【網】

9/29(土)
庵庵−Esso西谷−Jomo鴨居−中原街道−保土ヶ谷バイパス−横浜町田IC
−足柄SA−沼津IC−R246−R1−南二日町IC−R136−R414−道の駅天城越え
−河津七滝ループ橋−箕作−県道15号−道の駅花の三聖苑伊豆松崎
…鮎の茶屋付近の登山口…八瀬峠…長九郎山…池代林道…池代登山口
…県道15号…鮎の茶屋…道の駅花の三聖苑−県道15号−箕作−抜け道
−R414−河津バガテル公園脇−県道14号−R135−東大室
−スカイリゾート伊豆高原…伊豆高原ビール本店…SR伊豆高原

9/30(日)
SR伊豆高原−R135−真鶴道路(新道)−早川−小田原西IC−厚木西IC
−厚木IC−横浜町田IC−中原街道−Jomo鴨居−庵庵

…:歩き、−:車


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また、四季毎の便りが届いた。風景写真入りの葉書はそのまんま1,000円の割引券となるのだ。1漱石は大きい。また伊豆高原ビールに旅立つか。天気予報も覚束ない状況である。伊豆高原至近の低山ではビールを美味しく飲むための準備運動には物足りない。伊豆の山ガイドブックで大抵登場する長九郎山は半島でも南部なので中々触手が湧かなかったのだが、天候も不安そうなので消化試合と決め込んだ。
伊豆程度なら朝出発で十分間に合うだろうが、高速道料金の深夜割引は外せず、せせこましいアントニオは未明に庵庵を発った。この時間帯では中井PAでジャンボメンチカツは揚がっていまい。都合、トイレ休憩のためだけにサービスエリアへ寄り、沼津ICにて高速を降り、R136方面を目指した。此処も午後には大渋滞絵巻が繰り広げられることであろう。鰻屋御殿川も懐かしい。丑三つ時の伊豆半島の背骨ルートをのらりくらりと駆け上っては下りた。所謂、天城越えの天城峠も越えた。エアコン等をオフにしたままにしておくとフロントガラスが曇ってしまう。外気はもう冬支度を始めているのだろう。午前3時台にして追走車両の存在に驚く。天候も不順なれば、登山者の線は有り得ないとして、釣り人当たりであろうか。天候と釣果の相関については未知なのだが、ん年前の社員旅行では小雨の中、西伊豆は釣り船から糸を垂らす度に鯵や鰯が釣れたように記憶している。雨でもアレなら晴れたらもっと凄いのか!?!?
道はやがて、回って回った。七滝のループ橋だが、もう20年も近く前に母親と兄とでバスに揺られて下った記憶がある。確かそのまま河津から踊り子号で帰ってしまったと思う。滝を巡った記憶もない。うぬ。当時は鉄キチだったから、バスでの移動なぞ、スポンサーの親には申し訳ないが記憶に留める余地もなかった。山道を試行錯誤しながら漸く目的の道の駅に到着、時に5時を過ぎており、雨模様の中、コンビニの握り飯を1つかっ喰らっては5時25分、駐車場を発った。
登山道は一応、在った。整備は、、、されているのだろうか。。。ただ、ここ数週間、人跡未踏としか言えまい。蜘蛛の巣は天引き網の如く、山中へ入る者を捕獲する。否、数週間だろうか。逞しく張り巡らされた蜘蛛の巣の糸は、紐、縄、網の3段活用を経て成長を遂げ、強靭さでは人類を寄せ付けなかったようである。拾った木枝を前方に向けて振り回しながら蜘蛛の巣を破りつつ進む。破った蜘蛛の巣の数は3桁に達し、気を抜いて被爆した回数も2桁のオーダーに数えられよう。猿か鹿の声だろうか、同じ方向に進んでいるようだ。人類が乱入して来るとは気付いていないのだろう。無論この地は彼等の独壇場だ。自然が残されている程度では済まなかった。常識的には自然だ。だが、横浜一市民の体験としては、ジャングルサバイバルツアーである。台風9号の爪痕は存分転がっている。倒木の規模ではない。倒林の規模だ。丸い落し物は鹿のものか。熊のそれではないことは先月実地調査済だ。

そして、先程までは松崎の海が雲下に覗いていたのだが、どんよりとした空が遂に泣き出したのである。ガスが瞬く間に立ち込め、視界も寸前まで落ちてしまった。ううむぅ。山頂まで、せめて山頂まで〜、との念は天には通じなかった。しとしとと、降り注ぐ雨。なんと無しに持参したレインウェアがなければ、とても悲惨な状況に陥ったことであろう。山頂のやぐらからは僅かな半径の石楠花海原の外周に、霧海原が広がるのみであった。


数分待って視界明瞭になることも期待できず、退却を決意した。途中、上部の林道からの分岐について指導標が見当たらず、15分以上は彷徨ったものの、逡巡の末針路を何とか定め、下り、下りた。台風で林道も瓦礫の山である。落石と言うか、落岩と言うべき規模の物体が林道を塞ぐ。並みの4輪駆動車では通行不可、戦車のみが通行可能な状況だ。台風は厳しかったが、何とか歩けたのが救いか。

10時32分、池代口に下りた。途中のロスタイムもあれど、コースタイム以下に収めることができた。人一人と擦れ違わず今日最初で最後のハイカーだったのであろう。あの蜘蛛の巣の発達具合からして、数週間は放置状態だったのだろう。ジャングル1.0どころか、ジャングル-5.0くらいの歯応えのある長九郎山であった。池代側から林道を車で昇って横着を、と一度は脳裏を過ぎったが、道の駅に置いておいて正解であった。

腹も減り、そのまま食堂へ直行する。先日、区の図書館で仕入れたガイドブックに記載されていた、鮎の茶屋に到着。「準備中」の表示に恐る恐る戸を開ければ客の声も聞こえる。女将さんも「準備中」表示に気が付かなかったとのことだ。やれやれ。うるかの3年ものを早速頂いた。活鮎の腸を天塩で寝かせたもので濃厚、腸もこれで浮かばれることだろう。串焼きの鮎も生きた状態で火炙りの刑とは少々残酷な気もしたが、猪肉なども併せて、閑静な食事処に味わい豊かな焼き物を堪能できた。
美味しい食事で気分も回復した。駐車場に戻り、宿を目指す。さて、県道15号を東へ走り、箕作の交差点からR414に入った途端に渋滞である。前に車が数台往生していた。事故で車が国道を塞いでしまっているとのことである。事故関係者が後ろに並ぶ車にいちいち回り道を使ってくれと説明していた。手元にあるバイク用ツーリングマップの縮尺では、そんな道の存在を確認することはできなかった。だが、動物的感覚ですぐさまUターン後に抜け道を発見した。100mくらいだろうか、アップダウンもあるが、途中で行き違いができない程狭く、この抜け道を知っているであろう、R414側からのトラックが、我が休部号の通過を待っていてくれたようである。済まぬ。済まぬ、と言っても事故った者が一番悪いのだが。左程のダメージなくクリアできたのが幸いだ。長居していたら、事故者を罵るだけで建設的でない時間が過ぎ去っていただけであろう。
国道は山間部へ入ったものの、R135方面へのショートカットコースが地図上に発見され、早速利用させて貰った。峰山トンネルの先を右折し、バガテル公園の脇を通過するこのルートを、よもや歩くことになろうとはこの時には予想だにできなかった。公園の先で県道14号線に合流し、河津川の右岸沿いに河口方面へ下り、R135に合流した。後は道なりに北上するのみ。今井浜、稲取、片瀬、熱川、北川、大川、伊豆高原、城ヶ崎。この国道より起伏の激しい、言わば旧街道を2ヶ月後に歩くとは露にも思わなかった。東大室の交差点を、従来とは異なり、南側から左折し、今宵の宿はスカイリゾート伊豆高原に到着した。さて、このマンションだが、故黒川紀章氏が設計した、洗練されたデザイナーズマンショである。ヘリコプター等で上空から眺めたらさぞかし壮麗なのだろう。各部屋の意匠にも氏の息が籠められているのだろうか。合掌。
夜は当然、持参した葉書割引を駆使すべく、マンションから徒歩10分程の伊豆高原ビール本店に世話になり、存分水分を補給させて頂いた。
翌日、日中の渋滞で気分を害するのも躊躇われ、金曜までで台風9号による西湘バイパス崩壊に伴う暫定通行料無料措置が終了してしまったものの、小田原厚木道路を快走した。時は金なり。9時台に帰庵した。早起きは32文の得。
(完)

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付録:
山旅アドバイス
・池代口に駐車スペースはない。