庵速特急白山号

不定期連載 山道をゆく 第206話
2008秋プチ縦走II
08/09/27〜 荒島岳(日本百名山、庵選千名山430)、大倉山(庵選千名山431)、
御前峰(白山、日本三名山、日本三大霊峰、日本百名山、庵選千名山432)
【庵速特急白山号】

9/27(土)
庵庵−JOMO−中原街道−保土ヶ谷バイパス−横浜町田IC−東名高速
−海老名SA−浜名湖SA−豊田JCT−伊勢湾岸自動車道−豊田東JCT
−東海環状自動車道−美濃加茂SA−美濃関JCT−ぎふ大和PA
−白鳥IC−中部縦貫自動車道(油坂峠道路)−油坂峠出入口−R158(美濃街道)
−勝原スキー場駐車場…荒島岳登山口…トトロブナ…ブナコブ
…シャクナゲ平…前荒島…中荒島…荒島岳…シャクナゲ平…駐車場
−R158−ホテルフレアール和泉・九頭竜温泉平成の湯
−九頭竜湖駅・道の駅九頭竜−県道127号線−石徹白−前谷
−R156−道の駅大日岳−分水嶺公園…ひるがの湿原植物園脇
…公園−コンビニタイムリー−瀧本屋

9/28(日)
瀧本屋−R156(飛騨街道)−牧戸−R156(白山街道)−御母衣湖
−県道451号線(白山公園線)−白水湖畔ロッジ駐車場…大倉山…大倉山避難小屋
…室堂ビジターセンター…御前峰…翠ヶ池…千蛇ヶ池…お池めぐりコース
…室堂…大倉山避難小屋…駐車場−県道451号線−R156−牧戸−R158(白川街道)
−飛騨の里−R158−ひらゆの森−安房トンネル−R158(野麦街道)−松本IC
−長野自動車道−岡谷JCT−中央自動車道−双葉SA−八王子IC−R16
−八王子バイパス−中原街道−庵庵

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天候不順な週末が続いた。地球温暖化の波には抗えないものの、8月までは殆ど山行脚の予定を地ビール屋探訪に充ててしまっていた。仕事は嵩んでいた。ストレスを健康的に捌きたい。飲むよりは登るか。近場を制圧してしまい、1泊程度以上でないとなかなか未踏山をやれない。山地図を購入せずにいた白山、なのだが、数ヶ月前に山グッズショップで簡単な地図、パンフレットを入手し、省力ながらも機会を窺っていた。横浜からの移動距離は大きいが、メリハリを付けて山に没頭しようではないかと感じた。荒島岳も一緒にやろう。宿はひるがの高原あたりにしようか。荒島先か、白山先か。天候次第で少々迷ったが、土曜は平日の仕事疲れと運転疲れが否めないため行程の短い荒島を、日曜に白山、と決めた。白山先なら中央道を松本ICで降り、延々とR158を走らねばならないと考えていたが、荒島からであれば横浜町田ICから東名を使えば良い。
金曜は幸い夕方外出案件後に早目の帰宅が出来た。行き着けの飲み屋が開店直後で未だ客が入っておらず、心を鬼にして直帰した。4時間弱仮眠して0:30頃からハンドルを握った。ちなみに仮眠後、その店の近くのガソリンスタンドまで赴いたが、未だ店は営業中であった。。。
夜の東名高速は学生時代の某国家機密事業のアルバイトの時に敦賀まで交代制で運転した頃と違わず、日本の物流の支え、トラックの壁が右に左に並び流れていた。矢張りその壁の威圧感に慣れず、運転し易いものではなかった。交通量はとても多い。これが深夜の道路なのか。勿論夜行バスの本数も少なくはない。壁が時速80km超で流れ、日本の物流を支えている。アントニオの乗用車は場違いな、呼ばれざる客なのであろう。辟易しているうちに東海環状自動車道にて針路を変えた途端、常識的な東名以外の交通量に戻った。平均以下かもしれない。快適快適と思っていたが、東海北陸自動車道も含め、一部対面通行区間も残っており、スピードを控える必要があった。白鳥ICから福井方面の看板を頼りに進むと、どうやら中部縦貫自動車道の部分利用をしているようであった。10年前に購入したツーリングマップの記載は意味不明であった。。。対面通行だが無料なのでお得感は大きい。その、ツーリングマップでは不明だったため、このまま進んで予定通り九頭竜湖方面に抜けられるのか一抹の不安が過ぎったが、やがて「普通の」国道らしき様相を呈したので一安心だった。国道の道幅も広く、快適に飛ばすことができた。空も明るみ掛けてきた。横浜0時半発で5時台の登山開始は厳しかった。勝原スキー場の駐車場には既に6台程度の先客が居た。先客と思っていたが、後々「先」ではなかったことが判明するのだが。確かに2パーティーは車の傍でコッヘルに湯を沸かしているなど、ノンビリムードであった。時に6時を過ぎている。勿体無い。空は明る過ぎる。何故貴様等は歩き出さないのだ。寒い?お前等はアホか。俺もアホであることは次期発覚するのだが。

6:27 駐車場発。いきなりのシュナイダーコースである。どう攻めるか。。。少々日も高くなれば傾斜が緩くなるのではとみな様子を窺いながら駐車場で待ち侘びているのであったのだろうか。アントニオは脇から回ろうとしたが、アントニオ程の上背のすすきに阻まれ回り切れなかった。結局舗装されているシュナイダーコースの餌食となった。リフト区間を一つクリアすると、その先にハンゴンソウの株が未だに力強かった。オヤマリンドウの藍色も、キオンの黄色も未だ未だ力強かった。カライトソウは少々色褪せているようにも見えたが、もう10月にもなろうとしている矢先にまだ花々は頑張っているのだ。それに引き換え、駐車場で油を売っている霊長類は、、、

紆余曲折を経て7:01に登山口碑脇に立った。山はこれからだ。トトロブナにブナコブなど、合う木も合う木もブナブナブナ。どの木もどの木もブナブナブナ、が続く。確かに急登かとおもいきや、然程長くは続かず、テンポ良く駒を進められた。
シャクナゲ平に到着したのは7:56である。真登山口から此処までの区間新記録だろう。少々手前で先行するお爺さんは抜いたが、小休止しているうちに追いつかれた。5時間半も高速などを運転し続けた挙句の区間新記録は自賛に値する。


その後、少々失速したような気もしたが、山頂が呼んでいるからには逆位置エネルギーを味方にずんずんと歩を進めているうち、8:40山頂に到着した。一番乗りである!さっきシャクナゲ平寸前で追い抜いたお爺さん以外に人を見なかったってことは、駐車場の残り5,6台のパーティーのうち、先んじていたのはこのお爺さんのみで、残りのメンバーは未だ出発していなかったことになる。嗚呼、車のナンバーを見れば、アントニオより条件の良い地方からの車ばかりであった。亀は睡眠を惜しんで登り、兎は駐車場で寝入っていた。1番乗りとは思わなかった。早起きではないのだが、32文の得である。風が冷たい。しかし、この大晴天だ!クーポンを買い込むまで通っている地ビール屋Baird Beerの店主が開業当時周囲からは長続きはしないと蔑まれてつい先日100番目の銘柄をリリースしたのだが、「ざまあみろ!エール」の名前であった。ざまあみろ!エールに乾杯だ!!!しかしながら、地図を持たずに登ってきてしまったのには若干の後悔があった。見える山々の名前が判らないのだ。辛うじて白山方向だけは山名標があり助かった。でも御嶽、乗鞍、北アは見えていることは相違ない、、、電波反射板が数年前に撤去され、殺風景から解放されたのが幸いである。勝った。今日は勝とうとは思ってはいなかったのだが、奴等がみな負けたのだ。兎の奴等め。ざまあみろ!

そう、下山は、真正面に白山を臨みながらなのである。痛快、痛快!下山し始めて10分くらいか、相次いで勇壮感溢れる2人のハイカーと擦れ違った。挨拶はなしだった。彼等が一番乗りを目指していたことは想像に難くなかった。「ざまあみろ!」心の中で叫んだ。挨拶もできねぇ野郎が1番乗りなど糞食らえである。アントニオ亀の脅威にせいぜ平伏すが良い。最も、庵速亀の前に兎は駐車場で寝ていなくても勝てなかったかも知れないのだが、ふっふっふー!
快調、痛快、大晴天のうちに10:47、無事に駐車場に舞い戻った。良い山だった。素晴らしかった。来て良かった。5時間半を越える運転疲労もぶっ飛んだ。
R158にて岐阜県側に戻る。そうか、休部号で福井入りは今回のツアーが初めてか。愛知県、岐阜県も初だったか。良く走ったな。レストランで昼飯を採った。地元らしい幸の載る定食が1守礼門掛かり、日替わり定食は和風ハンバーグだが、1漱石さんでもお釣りが来るのだ、、、食事は民宿の夜食に期待を篭め、此処は経済重視政策に落ち着いた。その後、九頭竜温泉を楽しむ。いい湯だった。未だ今日は時間がたっぷりあるぞ。
九頭竜湖駅に道の駅が併設されていた。土産物売り場の地場産物は興味をそそるのだが、、、明日まで日持ちするもので少量で済むものが見当たらない。野菜類を今買っても荷物になり、ついぞや一切買い物もせずに辞去してしまった。今回の旅に余り食を期待せず、食堂調査もしなかった。来月の健康診断を控え、態々食をセーブしようという気持ちではないのだが、何故か地場食欲が湧かなかった。病気でも何でもないのだが、、、
大野市や郡上市など、沿道の至る所に田舎暮らしを推奨する旗が風に靡いていた。特に福井県大野市の県道127号線沿いは畑を耕す土地も微妙で、狩猟や釣りが出来ないと生活に苦しむことであろう。
ひるがの高原集落街に到着したが、未だ昼過ぎ故に、適度に時間を潰すことにした。分水嶺公園。此処から左への水は長良川を経て太平洋へ、右は庄川などを経て日本海へ注ぐ。日本的視野に立てば壮大なスケールの凝縮だろうが、太平洋の水も日本海の水も蒸発して山に降り注ぎ、酒蔵を潤す仕込み水になると太平洋も日本海も無い。旨ければそれで良いのだ。
時間が余り過ぎてしまったので、肌寒い中、公園を外周した。1週した辺りの土産物屋で地場牛乳で作られたらしいソフトクリームを所望した。寒い。ソッフーは1つで十分だった。その後、コンビニでドーピング剤を仕入れ、滝村屋へとチェックインした。
貸切だった。予約時に電話に出たおばさん、嘘のつけないA型だったのであろう。ひるがの高原ホームページに載っていた民宿電話帳リストだが、数件は通じず、もう数件は多分空いているのだろうが満室と断られた。その、1人のみとのことで地元の幸と思われるモノが余り夜の食卓を彩らなかったのが残念ではあった。仕方が無いので晩飯は米櫃内の、恐らく5合相当を完食して訴えるしかなかった。ビールも大瓶で腹が膨れ、久々に食い過ぎで死にそうになった。昨年9月新得旅館の晩飯以来だろうか。。。新得旅館は貸切でも地元の幸が満載であったのだが、、、
ここ最近、アミノ酸ドーピングが欠かせない。9/12プチ縦走依頼である。ドーピングを済ませ、恐らく20時台であろうが、構わず床に就いた。平和なひるがの高原であった。
夜が明けた。
アミノ酸ドーピング効果が少々出ているか、思ったより体調は悪くない。貸切なので時間は早くても構わないとのことなので、6時に朝食をお願いしてそそくさと掻っ込んだ。宿代も1人割増しみたいなこともなかったのだが、500円程度上がっても良いから夜はもう少し地元の幸を口にしたかったものである。
沿道の外気温計が6℃や8℃を示している。9月末なのだ。寒い訳だ。路面凍結の季節も駆け足でやって来る。白山クラスに登山可能なのは今シーズン最後であろう。関東など至る所でゲリラ雷雨の記録された夏だが、御母衣湖、御母衣ダムか、満水には程遠かった。水は大切にせねばなるまい。バイク用ツーリングマップにも記載されていたが、荒涼感は拭えない。それに浸っている訳にもいかず、先を急ぐ。白山公園線沿いに2匹の猿が出没したが、今日は彼等をフレーム内に追う余裕はなかった。コースタイム上は10時間半を越える長丁場なのである。明日は出社だからそれなりの時刻には横浜に戻らねばならないのだ。
7:40白水湖畔ロッジ駐車場を発つ。30台近い先客が居ようが構わない。昨晩、宿のおばさんに「今日は荒島、明日は白山。天気は持つか?」と聞いても連れない返事であった。まさか荒天を知って隠してたのか、或いは蛭ヶ野の宿から白山を目指すようなものは皆無のため、同じ岐阜県内と思うのだが、サポート対象外だったのであろうか。まぁ良い。晴れ切っては居ないものの、視界が晴天時同様に確保されており、時折薄日も差すなど、登山し易いコンディションといえよう。
後ろを振り向けば、雲海上に浮かぶ御嶽、乗鞍、中ア、北アの群れ群れが幻想的である。白水湖はエメラルドグリーンの水面を湛えている。平瀬道、何故斯くも登り易いのか。勿体無い。紅葉は2,3分とは言え、9月末週末なら駐車場が倍くらいの車で溢れていてもおかしくはなかろうに。。。
9:02、大倉山避難小屋に到着。恐らく区間新記録更新であろう。そもそも荒島岳白山登山において地図も購入していない安直振りなのだが、登山グッズショップで無料配布されていた白山絵地図によれば、コースタイムは2時間50分の区間である。天気は持っているが午後大きく崩れても文句は言えまい。急げ。ピークを狙え。
カンクラ雪渓の白さには特に驚きもなかったものの、稜線最終コーナーを曲がったと思しき先の池に薄氷を見つけ、改めて寒さを痛感した。寒い訳だ、、、風冷たい、、、太陽は隠れてしまっているが、降られもせず、展望にも遜色は無く、極めて絶好のコンディションだろう。ハクサントリカブトは花季末期の今でも高山に居ることを知らせてくれる有難い花である。タカネマツムシソウだろうか、本当に今シーズン最後の力を振り絞って萎れるのを防いでくれていたようだ。


9:57、室堂に到着した。生は売り切れていた。外気は1桁度だろう。缶でも飲む気が起きないぞ。。。薄日がすっかり隠れてしまったのか、、、ピークへ急げ。ビールは二の次だ。



10:30。山頂。360°の大展望。雲海。冷風。展望が広がりながらも寒々としているところが霊峰らしい。本当に寒々しているため、体を動かさないと凍死でもしてしまいかねないと、山頂滞在は短時間にして池巡りコースへと進んだ。大小合わせて何個の池だろうか。紺屋ヶ池、油ヶ池、翠ヶ池、血ノ池、千蛇ヶ池、、、なぜかワカランが多数の池と言うと12は必要かと思ってたが、そこまではないのだな。とも聞くが、登頂で目的を達成し、寒々としている中での印象は極めて薄かった。済まぬ、池の面々よ。



11:22、室堂に戻る。この気温、アントニオをビーラーに仕立て上げるには艱難が大き過ぎた。室堂、山小屋なれど、朝食は6時半からと言う。ご来光は朝飯前に、と言うことだろうか。8分程の小休止の後、アントニオは室堂を発った。アントニオが山小屋でビールを飲まないとは!それ程寒かったのである。

下山路の目の前に雲海だ。御嶽、乗鞍、笠、槍、西穂、奥穂、槍、鹿島槍を見ながら、エメラルドグリーンの白水湖を見ながらの下山もまた楽しい。登りは言った様に全く大変な道ではない。さすが霊峰だ。天晴れ平瀬道。

下りも割となだらなかため、つい飛ばしがちだが、写真を適度に撮りながらが全体最適を生むのではないかと勝手に思っている。大倉山避難小屋を過ぎた後、沿道を良く見れば、モリアザミ、ミヤママンネングサにハクサンカメバヒキオコシが今シーズン最後の力を振り絞って花弁を開かせていた。頑張った、頑張った。
13:14、駐車場に到着した。アントニオより先に到着して駐車場を発った車は10台程度か。狭い白山公園線、日曜の午後なれど、まだ登山口に向かう車があるとは呆れた。明日も明後日も休みの連中なのか。羨ましい。御母衣ダムはガイドブックにあるように、国道を南下しながら見るロックフィルの城壁の様は異様であった。
温泉ではせめて石鹸を使って汗を流したいと思い、白水湖畔ロッジのそれは敬遠したものの、R158沿いにある、桜香の湯は道の駅桜の郷荘川併設なので興味が薄れ、道も空いていれば温泉欲も忘れて高山市街地までも随分と飛ばしてしまった。
飛騨の里でピットインを試みた。 乗鞍はピルスナーだろうか。焼岳はアルト、穂高はケルシュなどとの命名である。アントニオの前にそれはないだろう、、、うーん、穂高も乗鞍も焼岳も、本物は遥かに歯応えがあるのだが、店員の応対振りが悪く、味覚神経もやられてしまったのか。だいたい、売る気あるのか。接客の仕方、判っているのか。お食事ですか?くらい声をかけてくれても良さそうなのだが。焼きカレー鍋の柄が熱く火傷し掛けたし、ビールも何だか有り難味を感じなかったし、この店にもう来ることはないだろう。
高山市街地を抜け、再びR158を飛ばす。2週間前の黒部行きの時と同様、何故か今日もひらゆの森に来てしまった。今日は到着も遅く、温泉後に近隣の土産物屋も閉まってしまい、明日以降の弁当のための食材をとの目論見も打ち砕かれてしまった。安房トンネルの料金所は未だにETCが利用できず閉口ものだった。野麦街道では先行くバスが渋滞を醸し出していたが、ペースメーカーだと思えば怒りも発生しない。中央道は小仏トンネルから西側で何時もの通りの渋滞であったが、日曜も20時頃ともなると思ったより流れていた。八王子IC下車後の下道も順調だった。長かった。明日は仕事だ、ふーっ。
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付録:
山旅アドバイス
・東海環状自動車道、東海北陸自動車道ともに対面通行区間あり。
・油坂峠出入口側から白鳥西ICで下車しないと白鳥ICで下に
出られず高速に乗ってしまう。
・飛騨清見ICから高山ICまで無料で開通してた(;_;)<中部縦貫自動車道
・古里古里の国はネットに10%引きクーポンあり。