不定期連載 山道をゆく 第160話 04/07/31 下台倉山(庵選千名山291)、台倉山(庵選千名山292) 池ノ岳(庵選千名山293)、平ヶ岳(日本百名山、庵選千名山294) |
【走れメロス】 7/31(土) 庵庵−R16−八王子バイパス−入間IC−上里SA−小出IC−出光GS −R352−奥只見シルバーライン−鷹ノ巣…下台倉山…台倉山 …池ノ岳…平ヶ岳…玉子石…台倉山…下台倉山…鷹ノ巣 −小白沢ヒュッテ 8/1(日) 小白沢ヒュッテ−R352−奥只見シルバーライン−A Coopゆのたに店 −小出IC−塩沢石打SA−高坂SA−入間IC−R16−八王子バイパス −庵庵 −:車、…:歩き ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ |
業務は躍る。 |
何処から、何時から週末モード、否、戦闘モードへ切り替えるか、判断をしかねているうちに重い仕事がやって来た。物の無い所に事故は発生しない。検証プログラムが動かない。花金に誰もが酔い潰れている時間帯であった。動かない。上司にもヘルプを請っていても遅々として進まない。是はお客様に環境情報を突っ込んで聞かなければ、と思っていたが気付いた頃には夜分も遅く、既に帰宅の途に就いてしまった模様である。何を頼れば良いのだろうか。動けない。友人からの携帯電話に出ることも出来ない。2,3時間の仮眠を採るには既に出発している必要があろう。遂に終電も尽きる。山、諦めるか。でも今頃、友人は携帯電波圏外に突入してしまっていることだろう。 |
「冷えたビール持って行くので、ご期待あれ!」 |
何度この友人の言葉を裏切ろうと思ったことか。精根尽き果て、お客さんに謝って来週早々環境構築の情報収集に赴くしかないですね、と上司と今日の最終結論を導き、何とかタクシーの人となった。既に1時を回っている。然し、やるべきはやったからなのか、心身ともに尽き果てたと思っていながらも仙人の心境でタクシー内を揺られていた。やるべきはやった。今日は仙人になるのだ。戦闘モードに入るのに力が漲ってくる、とは感覚が違う。疲労の潮がずんずんと引いていく。矢張り死期が近付いているのかも知れぬ。だが、死ぬ前に登らなければならないのであろう。この時刻まで運転してくれるタクシーの運ちゃんに感謝しながら家に辿り着き、急いで支度を調える。寸分の休息もない。土曜日午前2時、休部号はガレージを逸脱した。 |
R16は何時もの通り、まずまずの交通量である。流れに棹差し、アクセルを踏む。入間からスロットル全開で突進だ。う〜ん、今からだと何時に着くかな、、、眠い。少しは休息を採るべきか。何とか上里SAまで頑張った。トイレに寄り、眠気覚ましに無糖の缶珈琲を所望、再び本線に戻る。 |
上里SAを出たのが、3時台後半であった。そして、間もなく、4時を迎えた。約束の4時である。未だ群馬県を走っているのだ。どう足掻いても、5時台に到達できるか微妙な線である。幾ら最近山登りをしていない彼だからと言って、1時間も差があればもう遥か彼方であろう。辺りはすっかり明るくなってしまった。小出ICの例の24時間スタンドで給油をし、急いでR352を目指す。数台、同一方向を目指す車を追い抜き、6年前の秋に巡った錦繍の奥只見路に舞い戻る。エメラルドグリーンの奥只見湖。今回の木々は青々としているが、ドライブするだけでも簡単に心の洗われる大自然に、暫し遅刻を忘れさせられていた。ワインディングの数は半端ではない。道幅も狭く飛ばし屋でも億劫になりがちな湾曲路だが、其れは自然に踏み込んで道を織り成すには致し方あるまい。何処までも緑、何処までも青。小学生の頃に日本ランドで乗った、水陸両用探検車?を思い出す。R352には所々、水捌け用の窪みが存在し、昨晩以前からの雫を湛えた水路に休部号は暫しざっぷ〜んと浸かるしかなかった。前回、小武川林道で散々汚れた挙句に洗車したばかりであったが、そんなことはどうでも良い。ざっぷ〜ん。帰ったらまた洗車すれば済む話だ。対向車の少ない時間帯とは言え、平均時速を30kmを上回らせるには困難が付き纏う。やがて、鷹ノ巣のヒュッテの数々が視界を過ぎる。小白沢ヒュッテも通り過ぎた。もうすぐだ。 |
![]() ![]() |
![]() |
![]() ![]() |
あれは、見掛けたことのあるシャツだった。何故斯くも早く遭遇したのか。聞けば、セリヌンティウスも出発が遅れ、鷹ノ巣を発ったのは5時半だったと言う。遅れたとは言え、約束は守った。少し、肩の荷が下りた。山頂では間違いなくムギチャーゼが確実に待っている。二箇所の水場に目ぼしい水量はない。水は当然麓から担ぎ上げるものである。山慣れた2人とは言え、池ノ岳を目前に控えた稜線にて追い付いた先行者等と数珠繋ぎになりながら喘ぐ。近くて遠い池ノ岳。風が強い。雲行きもやや怪しさを増していた。麦茶指数が急速に低下していた。太陽光線よ、もう少しだ、頑張れ。俺が寝ずに頑張ってるのだから、確りやれ。 |
![]() ![]() |
![]() |
下山を進めると、頂上近辺の雲行きが嘘の様でまた夏の日差しを一身に浴びなければならなかった。蝮や蜥蜴も蔓延る。ワイルドな夏山だ。少しペースの落ちたセリヌンティウスより先んじて下山し、駐車場の車で仮眠でもするか。だが、ものの10分程度で彼も下山し、ベルギービールを目指す。 |
宿の暖簾を潜り、ベルギービールの前にアサヒビールで乾杯する。美味い。ベルギービールの前にへべれけになって味覚を失うのか。今日は其れでも何時も以上に自分に飲む権利を授与せねばならなかった。風呂を沸かして貰い、汗を流す。温泉ではないが疲れが引く。そして湯上りにごっくんとベルギー産の片鱗を垣間見る。チェリー?混じりでジュースの様で飲み易い。氏は飲み好きなれども現在求職中の身では宿泊代を捻出することが出来ず、次回は白馬岳辺りで会おうとの言葉を交わし、ヒュッテを辞去した。 |
晩飯までの時間潰しのために普段読めずに居た雑誌等を持参するも、何時しか睡魔に降参していた。気付いたら晩飯の時刻であった。ヤマメの塩焼きに山菜からヒヨコ豆入りのピザ風まで、宿の主人櫻井氏の腕の幅を彷彿とさせる食卓であった。私以外の客は、生粋の釣り人2人とマウンテンバイカー兼釣り人1人の合計3人であった。バイカーは天泊だが晩飯だけはヒュッテで味わいたいとの事である。其処には奥只見山中の団欒があった。クーラーなぞ要らない。飯は美味い。ビールも進む。 |
発電所が福島県側にあるから、印税ならぬ電税のような収入が檜枝岐村にはごっそり入る、だから各種観光施設も綺麗で充実しているとのことである。だが、湯之谷村には涼風があり、ベルギービールが存在するのだ。そして釣り人が憩い、笑う。私はこれで良い。 |
4人の客のうち、ベルギービールを大量に摂取しているのは私だけであった。シメイの白のドロドロ感に、天一の出汁を思い出すのは私だけであろう。アレだけ飲んで、未だ味覚は抜群である。どれだけ飲んだのだろうか。 |
晩飯卓に最後まで居残りながらベルギービールを堪能し、歯磨きをしてトイレに寄り、そして部屋に戻って布団を敷く前に気絶していた。 |
気付いたら翌朝4時過ぎであった。さぁ、布団を敷こう。ヒュッテだが畳の和室だ。畳の硬さ。アントニオは生粋の日本人である。4時過ぎまで、畳に抱擁されていた。クーラーもないが涼しかった。気絶するのも無理もない快適空間であった。 |
7時半過ぎ頃か、そう言えば昨日は朝食の時刻を聞き損ねていたが、食卓には皿が既に並んでいた。納豆、海苔、川魚の塩焼き。日本の宿の朝飯。程無く2人の釣り人が早朝からの釣り課を持参して櫻井氏に捌いて貰っていた。またバイカーも良く寝たと知らず知らずのうちにヒュッテに吸い寄せられていた。 |
さて、朝飯を堪能し、何時頃帰るか。ストレスを霧消に来たのだ。帰路で渋滞にはまるのは御免だ。だが、A Coopゆのたにには寄りたい。8時半過ぎには帰り支度を調えたものの、折角だからとフレンチ珈琲を頂きながら、ヒュッテ内に居並ぶ酒々のボトルを物色する。あ、是だ、HPに載っていたワインだ。収益の一部が子供地球基金に還元されると言う。昨晩随分ヒュッテに還元したけど、今日も還元しようか。お勘定をお願いして愕然とした。ヒュッテの宿泊基本料金に対し、飲み代が其の約1.5倍に達していたのである。セリヌンティウスが宿泊していなかったにも拘らず、私の払った代金は、通常の宿泊費の2倍を遥かに越えていた。良く飲んだものである。。。氏と一緒に宿泊していたら、合計で3人分は軽く越えるたことであろう。。。左程心地良く飲めたことであろう。。。 |
次回は何の序でに寄ろうか、思案をしながら宿を辞す。出来れば何の序ででも無い方が良い。深緑の中で深呼吸が出来れば良い。R352のワインディングは今日も容赦ない。昨日に比べて対向車も多い。マイクロバスさえ通る。だが、青空にエメラルドグリーンは永遠だ。いっそこのまま埋没してしまっても良い、そんな気持ちにさえさせてくれる奥只見の大自然。さだまさしのBGMすら不要だ。銀山平に近付くに連れ、サンデードライバーも増えて来た。そして急速に喧騒に巻き込まれながら、後ろ髪引かれる思いでR352から曲がった。 (完) ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 付録: 山旅アドバイス ・R352の銀山平以東は災害で通行止めになる確率が高い。 湯之谷村建設課に電話して状況を確認するのがお勧め。 また湧き水が至る所に流れているため、車は暫し水浴びを 余儀なくされる。水捌けのために所々窪みがあるため、 夜間の通行時は注意が必要。 ・登山道の水場は軒並み涸れている。 |