初め2010Special

不定期連載 山道をゆく 第222話
不定期連載 グルメ街道をゆく 話数知らず
不定期連載 麦道をゆく 第18話
10/01/09~
城山(庵選千名山478)
いぶすき菜の花マラソン大会
リトル・プラハ
(ガーネット、ブロンド)
城山ブルワリー
(スタウトエール黒糖、ペールエール枇杷茶、ハーブエールレモングラス、ベルギーホワイト)
【初め2010Special】

1/9(土)
庵庵…7・11…鴨居〜大口…京急新子安〜京急川崎〜京急蒲田〜羽田空港
…QBハウス…空港第2ビル/鹿児島空港…リトル・プラハ…鹿児島空港
=天文館…パームスプリングス天文館…ダイエー…パームスプリングス

1/10(日)
パームスプリングス…鹿児島中央〜二月田…マラソン会場(体育館、市民会館)
…指宿いわさきホテル…マラソン会場…ふれあいプラザなのはな館…指宿
〜谷山…谷山電停〜朝日通…山形屋…パームスプリングス…中央公園
…城山遊歩道…城山展望台…城山観光ホテル…ホルト=朝日通
…パームスプリングス

1/11(月・祝)
パームスプリングス…鹿児島中央〜国分=鹿児島空港/伊丹空港
/羽田空港〜京急蒲田〜京急新子安…大口〜鴨居…小愛夢…業務スーパー
…庵庵

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社内担当が変わって以来、海外出張も久しくなし、某航空会社のマイレージも有効期限が迫ってしまった。国内往復2回は可能なマイル残高である。南国でのマラソン大会を検索すると、成人の日連休中日開催のいぶすき菜の花マラソンを発見した。発券可能な2ヶ月前の朝方、特典旅行受付窓口に電話をすると、往路は始発か11時台の便のみ、復路は直行便の選択の余地は既にないが、鹿児島9時台発の伊丹経由であれば追加マイルや手数料はなく旅行が可能とのことであった。行程を検討し、1日目は薩摩ビール、2日目は城山ビールを標的と定めた。魚見岳登頂はどうだろう。HPなどの観光案内も期待したほど多くはない。しかし、鹿児島はラーメン、薩摩地鶏、黒豚、黒毛和牛、海も近ければ新鮮な海産物から薩摩揚げと、美食天国でもある。
決断は2ヶ月半前となればフルマラソン準備には不十分である。10kmに甘んじよう。11月からの週末の殆どは10km程度の練習を続けた。年末年始はジョギング地ビール、ハイキング地ビールと足・腰・胃の鍛錬を5日程敢行し、準備万端と思っていた。例年のフル走前と異なり、食事調整をしなかったため、体が少々重い。
当日は風呂桶と流しの掃除をしてから庵々を発った。横浜線も座れ、京急新子安まで歩き、乗換えをしながら9時半過ぎには空港第2ビルに到着した。特典旅行の発券手数料を支払ったクレジットカードを自動チェックイン機に投入したがあっさりと窓口に行け、との半券を戻されてしまった。発券カウンターは案の定、連休初日の午前中ともなれば長蛇の列であった。2時間程の余裕を見ておいて正解であった。残念ながら復路便のチケットは改めて鹿児島空港で発券手続きを行う必要があるとのことだが、何とか往路便は通路側座席を確保できた。
まだ時間の余裕がある。到着ロビー1階に降り、散髪した。某10分散髪チェーンの羽田空港店の店員は偶々なのか、女性ばかりで、同鴨居店のぶっきら棒さとは雲泥の差だ。同じ1000円なのに、、、言葉遣いがよりユーザーオリエンティッドである。入店後1秒も待たされず、気持ちよく散髪を終えることができて幸先はよさそうだ。昨年後半は数度に亘りセルフカットで済ませていたため、半年振りくらいに非常にすっきりした気分である。
連休初日のANA625便はほぼ満席であった。左斜め後ろのオジサンは如何にもジョギングスタイルであるから、明日同じレースに出場することだろう。625便は無事に着陸した。当初、薩摩ビールのランチバイキングに急行を目論んでいたが、国分行きバス便の経路上でレストラン最寄のバス停は2kmも離れているし、代わりにタクシーを空港から拾うのでは3000円近い出費となってしまう。バイキングで出走前に抱腹してしまうと旅が終わってしまいかねない。大人しく、空港から車があれば1分、徒歩でも10分はかからない霧島高原ビール直営の、リトル・プラハを訪ねることにした。
焼肉ロースター用のテーブルがテラス側に並んでいる。夏場は増卓されるようである。テラス側卓の周囲はビニールで覆われている。夏場はオープンエアーで肉をつつけるのだろう。ここのロースターは炭火でもガスでも電気でもなく、光で焼くものらしい。1人焼肉は手間もかかるため今回は割愛し、薩摩黒豚使用のチェコ料理を所望した。早速黒ビール、ガーネットを大ジョッキで所望した。大ジョッキはスラブ語と漫画の描かれた陶器製であり、ビールの色よりも雰囲気を大切にしているということだろうか。カラメルを大量に使ったピルスナーで、女性には豊胸作用もあるなどとメニューに記載されていた。こんな但し書きは初めてである。レース前日に、ドーピングに相当するのだろうか、、、黒豚のシチューもまずまずだった。空港周辺は高原と言えなくもないのか、良質な水に恵まれているのであろう。大ジョッキを平らげた後、市街地まではトイレなしのバス乗車なれば、もう一杯のみで断念することとした。ヴァイツェンとブロンドであれば、何処でも飲めそうなヴァイツェンは敬遠してブロンドを選択した。やはり2杯目は印象に薄くなりがちである。日本の大手ビールメーカー市販の礎とも言うべきチョコのピルスナータイプである。飲み放題は90分1800円なり。帰路便に余裕がある時にでも再チャレンジとすべきか。グループで肉をつつきながら、の構図が最適の店のようであった。
市街地方面へのバスは10分置き、天文館へは中央駅直行便でも伊敷や吉野経由でも48分か50分と、所要時間はあまり変わらない。当初の予定より30分早い直行便に乗車。接続の良い航空到着便もないようで、車内に乗客は10人程しかいない。高速道、市街地ともに渋滞もなく中央駅にはほぼ定刻に到着し、アントニオ以外の乗客をすべて降ろした。天文館まで最後の乗客となり、地図を頼りに数分で宿に到着した。
宿は2ヶ月前に楽天トラベルからスーパーポイント利用で予約したのだが、キャンペーンで宿泊単価が下がったため、スーパーポイント利用はできないが2泊で約1000円近いディスカウントを享受でき、しかもネット予約では利用できないカード払いもOKとなった。ラッキー!ウッドキャビンは寝台部分が2段で当然別部屋となっているが、寝床とほぼ同等の床面積の部屋がついていた。アントニオは今日のチェックイン第1号だからか、出口付近の1階部屋に割り当てられた。机もあり、カプセルホテルにしては満足な空間であった。大浴場はジャスミンの入浴剤入りであった。一風呂から一段落し、晩飯をどうしようかと街に繰り出すことにした。
何処も彼処も旨そうである。ガイドブック掲載の著名店は値が張るだろうか。しかし、明日は曲がりなりにもレースがあるのだから、食い過ぎや飲み過ぎは良くない、そう思いながら取り敢えず中央駅まで店定めと思って歩いた。うーん、何処も同じようだなぁ、、、ジモティの知り合いが居たらさぞ心強かったに違いない。駅前のダイエーで明日の朝食にとおにぎりと麦茶などを購入し、少々ルートを変えて天文館方面へ戻ることにした。何処も旨そうなのだが、決定打がない。ううむぅ、、、結局宿に戻ってしまい、1階のレストランを利用することにした。偽ビールはdraftものがあるようだが正規ビールは瓶ものしかなかった。場末のパブ風と言ったら怒られそうだが、厨房のおばちゃんの顔を見るや、ひょっとすると此処は相当旨いものを食わせてくれるのでは?そんな予感がした。豚骨の味噌煮、。枕崎の鰹腹皮焼きを所望した。果たして、何れも100点満点を超える味覚であった。グレイトである。豚骨煮は当然骨も噛み砕ける程の軟らか煮であり、味噌出汁が程よい甘酸っぱさで、ご飯を注文せずには居られない逸品であった。鰹の腹皮焼きも肉厚は十分にあり、ポン酢醤油ですっきり味、これまた自分の選択眼の正しさに、勝ち誇らざるを得なかった。おばちゃん、有難う。ご馳走様。レース前日でなければ大量摂取したかったのだが、割愛させていただいた。
早目に床に就いたのだが寝付けなかったような、それでも少しは意識を失えたのか、4時前に出発準備を始められた。日曜午前4時台の天文館界隈は「もう」明るく、ではなく、「未だ」明るかった。深夜料金のタクシーも駆けずり回っている。新宿や渋谷のような賑わいであった。彼等には付き合っている余裕はないのだが。案の定、中央駅は午前4時台とは思えない賑わいであった。当初、少しでも運賃を節約しようかと、少々小走りして南鹿児島駅で指宿行き乗車を考えていたのだが、中央駅1番線ホームはマラソンランナーが溢れるばかりであり、途中駅乗車で着席できる確率は1/(6.02*10^23)を下回っていたと思われた。入線した車両はキハ200系なのはな色であり、後ろ2両はロングシート、前2両は転換クロスシート車だった。改札に近い後ろ寄りで待つ訳のないアントニオは、先頭車両ドアと思しき待ち行列、それもどうやら3両目程度のところに並んでいたのだが、入線&ドアオープン直後に猛ダッシュで先頭車に滑り込んだ。ラッキー!!全座席は瞬く間に塞がり、予想通り多数の立ち客が出た。4時台の列車でこの殺人的混雑なのである。大会実行委員会は臨時列車を運転させるべきであろう。
4:51、定刻に駅を発つ。途中駅でも幾人かのランナーを拾い、指宿枕崎線始発各駅停車は南を目指して走っていた。夜の明けぬ中、錦江湾の存在を車窓より知る術もないまま、指宿の一つ手前、二月田で下車した。30名程度のランナーが下車した。残りの面々は指宿駅から有料シャトルバスを利用するようである。確かにフル出場者は出走前に3キロ程度も歩くのはエネルギー浪費とも言えるだろう。シャトルバスも殺人的な混雑なのではないか。二月田までの方が運賃も安いのだ。出走まで未だ3時間もあるから、当然アントニオは徒歩で会場を目指すことにした。沿道の側溝から湯気が立ち上っていた。近隣の水道水は温泉なのか?単に気温が低いから湯気が出ているのか?満を持して地図を持参したが、ジモティらしきランナーについて行けば迷うこともなかった。参加数2万人の中、大半の面々が自家用車で来ているようであった。関東近郊の大会では考えられない。最も、列車の本数も少な過ぎるのも難点であったが。暗闇の中、煌々と光るテールランプの列。夜明け前の異様な光景であった。年に一度の大イベント前でないと発生し得ない構図ではなかろうか。
体育館で受付を済ませ、シャツにゼッケンを貼り付けたり、館内飲食禁止の張り紙あれども他に場所もないから止む無くおにぎりを食べたりして時間を潰していた。1人参加の難点は荷物の保管にある。上着を押し込むべきザックは持参したが、大会冊子や景品、そう、Tシャツに加えて土産として鰹節のパックが4袋もついてきたのだが、貴重品以外の物を体育館などに放置する当てもないため、ザックに総荷物を詰め、貴重品預かり場に持参した。出走までまだ1時間はあるが、、トイレは何処も長蛇の列であった。周囲を歩き回り、駐車場脇設置のレンタルトイレボックス列前に並んだ。ボックスは20程度並んでいたが、既に10数ボックスは誰も出入りがないように見られた。何故だ、この数珠繋ぎの待ち列があると言うのに、、、どうやらモノが詰まって流れない状態のボックスが続出しているようである。洗浄液が凍結してしまったのか?キャパをオーバーする利用があったのか?2万人が押し寄せた大会の、紙面には登場の余地もない悲劇であった。
魚見岳の絶壁の麓の市民会館前のスタートライ付近に、スタート30分前には並んでいた。自己申告制だが、40分切れる人、40~50分台の人、50~60台の人、、、とスタート位置を区分けられていたため、大人しく40分台ゾーンの先頭位置にて出発まで待つこととした。寒い、ううむ。レインウェアのジャケットを羽織ながらゴングを待った。
今時のレースにしてスタートラインに赤外線センサーが設置されておらず、ネットタイムを計測してくれないのが残念であった。しかし、大人しく40分台ゾーンに並んでいたにも拘らず、前に居ながら俺よりチンタラ走っている奴が、1人2人の数ではなかった。終盤で虫の息状態なら未だしも、数十人は自然と後退して行ったことには腹が立った。嘘つき野郎め。不正ランナー野郎め。貴様らは俺の前を走る資格は微塵もない。指宿の蒸し風呂に埋もれるがよい。くたばれ。さようなら。
フルでないからか、キロポストもなく、ペースが掴めなかったものの、沿道の声援に応える余裕は十分あった。いわさきホテルで折り返し、魚見岳を真正面に構えながら走った。給水場もあったが10kmなら不要だ。給水所での停止によるロスを防ぎたい。
残り3kmは苦戦したものの、目立った減速なしに47分13秒のタイムでゴールすることができた。「フル」から「10km地ビール」に転向し、走る練習量を減らしてしまったのだが、まずまずの結果をと思われる。このクラスの最年長であることから、クラス410人中35位とは誇示しても良いだろうか。総合3294人中183位も然り。
担当者の貴重品のずさんな管理に憤りを覚えたものの、幸い紛失物はなかった。参加賞として貰ったクーポンでぜんざいをいただき、舌を火傷してしまった。うどんを食べれば抱腹状態となり、蒸かし芋とおにぎりはお土産とせざるを得なかった。無料でこれだけついてくれば、とても露店の黒豚串を初めとする逸品に手を付けられないのは止むを得まいと思いながら会場を後にした。気分は既に今宵の麦に傾いていた。
更になのはな館の入場無料クーポンまであれば使うに越したことはない。出走前までは宿に戻って一風呂でも構わないと考えていたが、ゲンキンなアントニオはタダなら汗を流そうかと素直になった。アントニオ入湯直後は未だ空いていたが、風呂を上がる頃には続々と10km走者達が押し寄せて来た。先んずれば温泉を制す。残念ながら館内にてビール販売のサービスはなく、それは夜まで待てとの神の思し召しと素直に受け取り、だいぶ冷めてしまった蒸かし芋を齧りながら指宿駅へと向かった。だが、アントニオの麦覚は千里を走っていた。指宿駅前の酒屋の冷蔵庫に、薩摩高原ビール?で飲み損ねたヴァイツェンの瓶を確認したのである。確認したのは店外からである。数秒の逡巡の末、涙を呑んで割愛した。我慢我慢。今晩の1杯に。涙は呑んで麦茶は飲まず、、、
指宿駅には10kmランナーが続々と詰め掛けていた。1時間に1本しか列車の来ない路線である。皆同じ快速に乗るに決まっている。一足先に着席位置確保を鑑み、折り返し列車到着まで30分もあったがホームに入場した。本日2回目のレースである。駅員氏は、次の快速が3両編成であることをその入線約30分前に一度告げただけであったが、アントニオは聞き逃すことはなく、ホーム内の、改札から数えて3両目の真ん中のドア位置を示す表示のある箇所に立った。徐々に後ろに列が長くなって行く。後ろが非常に煩い。アントニオの位置よりもう1つ山川寄りにドアがある筈だが、勇気を出して列を作ろうとしようとする者は皆無だった。
果たして、なのはなDX4号は少々の立ち客を乗せた状態となったまま、指宿駅を発った。おおお、それを見越してアントニオは進行方向向かって右窓側の席を確保したのだ。錦江湾は果てしなく青い。午前中のレースも何処吹く風、至って穏やかな波に見えた。俺はやったぞ。10kmだが。谷山で下車するまでの間、想像以上に長時間、青い海に魅せられていた。往路も実は海側の席に陣取っていたのだが、始終暗闇でその存在には気づくことはなかった。不思議だ。帰路はずっと魅せられていた。なのはなマラソン開催時期の日照時間的にはあり得ないのだが、出走前にこの青い海に見せられていたら果たして結果に影響が出ていたであろうか。光合成ができていれば?今日以上の結果を出すには、今日まで以上を出し続けていく以外、難しかろう。早、20km地ビールに転向か。20km地ビールの先は、30km地ビール、そしてフル地ビールの階級に至れば、どんなマラソン大会、どんな辺鄙な場所に存する醸造所も恐るるに足らず。百名山が失われる心配はほぼ不要だが、醸造所には栄枯盛衰があり、急ぐ必要があるのだ。閑話休題。何が閑話休題なのだ。谷山からは市街地見物を兼ねて市電を利用することにした。
市電は何処まで乗車しても運賃は160円である。JRの谷山駅から谷山電停までは5分程歩くが、鹿児島までJRでは270円かかるし、指宿枕崎線の本数も少ない。市電は路線バスが如く押し釦があり、降車乗車客がいなければ停留所を通過する。南鹿児島までは専用軌道だがそこから北側は併用起動である。宿へはいづろ通下車でよかったのだが、今宵のイベント拠点のホテル行きシャトルバスのバス停を事前にチェックすべく、1つ先の朝日通で下車した。
目の前のデパートは山形屋と書いてヤマカタヤと濁らない読みだ。アントニオがその脇を掠めようとするや否や、本日第2回目のからいも餅搗き大会が幕を開けた。搗き立ての餅!美味そうだな!当然餅目当てで観衆に加わった。子連れの親は、子供に模擬搗きさせた写真撮影に暇がなかった。だが、餅が搗き上がり、本日3回目のレースが幕を開けた。欲しい方は列に並んでくださいと店員が言うや否や、卑しき大人達は秒速300mのスピードで列に突進した。列にはなっていない。膨れ上がっている。押し競饅頭である。押されたら、餅は、ない。皆、顔は笑ってるが心は必死だった。浅ましい。見苦しい。しかし、遠慮は餅を失う。皆命懸けで、一人ひとりが20馬力ぐらいのパワーで押し競饅頭をしていた。子供の餅搗きの杵が臼を逸れてしまうより遥かに危険度は高かった。このような親を見て子は育つのか。強いに越したことはない。将に弱肉強食。皆、餅に飢えていた。蒸かした薩摩芋入りの餅だが、死に物狂いで並んで手にした割には思ったほど美味しくはなかった。山形屋さん、済みません。入手方法に問題があったからか。運が悪かったのか。からいも餅争奪戦の呆気ない幕切れであった。
宿に戻り、本稿下書きを認めたりするうちに、麦酒の呼び声が聞こえて止まなくなってしまった。当初、城山観光ホテルのシャトルバスを朝日通付近のバス停から乗車する計画であったが、城山はどうやら歩いて登れるようだから、魚見岳をパスした今となっては体力万全、厳しい山をよこせ、くらいの気持ちの余裕があった。何事も麦酒の前に壁とはなり得ないといった心境であった。
城山は果たしてハイキングコースも複数通じており、市民の憩いの場となっていた。山頂周辺は猫の庭と化していた。塔ノ岳や金華山の鹿の如きか。否、此処の猫たちは彼等のような卑しさはなく、観光客からのお零れを強請ったりなどの醜さは全くなく、大人しかったのが幸いである。市街地の向こうに薄っすらと桜島が浮かびあがっている。夢は麦野を駆け巡る。ビュッフェレストラン、ホルトの外苑にて17時のゴングを待つのみであった。ブルワリーの撮影に勤しんでいるとケータイのバッテリーも消耗した。iPhoneに機種変更した知人夫妻からその旨の通知メールが届いたのだが、今日は返信を書いている余裕はなかった。本日第4のレースも間も無く開演なのだ。申し訳ないが、返信メールを書いていたばかりにこのレースに乗り遅れる失態は許されなかった。指宿の敵はなかったが城山で討て。
ゴングが鳴った。予約者と思しき1組に先を越されて2番手での入館となった。桜島に面したテラスを臨む席に陣取ることができた。ホテル併設レストランのビュッフェだから、刺身の数種類はあって然るべきだろう、、、しかし、生魚は鰹のカルパッチョ程度しかなかった。イタリアンフェアだからか、、、豚肉牛肉料理も散見されたが、黒毛和牛なり薩摩黒豚などの但し書きもなく、恐らくビュッフェ価格で賞味するには百年早いとお叱りを受けることなのだろう。 望む麦茶は4酒類、スタウトは何だか醸造アルコール入りのような味で少々気落ちし、続くお茶入りペールエールに少々気を取り戻し、レモングラスに柑橘感を堪能し、ベルギーホワイトに至る頃には味覚も十分麻痺をしていた。今日、懸けていた割には、、、という辛口採点である。ビュッフェゆえに洋菓子コーナーを何巡もしてしまったのが敗因かも知れぬ。スタウトで言えば、同じ九州内のひでじ、ゆふいんや大山に我が厚木を並べてしまうと遜色が否めなかった。アントニオの全4酒目制覇を見届けてくださったスタッフの迫田さん、有難う。次回、スタウトの完成度を上げてくれたらまた来たい、そう思いながら桜島のシルエットの彼方へと去った。
シャトルバスを朝日通で下車し、また山形屋に寄る。と言っても館内に入るのは初めてだが、中に入ると建造は相当年代モノであった。上手い具合に此処らしいお土産菓子が割引セールワゴンに載っていた。知人への土産を数袋購入し、宿に戻った。
連休最終日、今日は昨日より2時間近く遅い宿出発だったのだが、天文館界隈は「まだ」明るかった。。。酔い人達の経済貢献に敬意を表しながら鹿児島中央駅に再び立つ。国分行きの電車はたったの2両編成なれども、割と新しく、ヘッドレストがミッキーマウス化された転換クロスシートのワンマンカーで、雰囲気は悪くはなかった。昨日のなのはなDXからの車窓と言い、今日のそれと言い、錦江湾は穏やかな水面を湛えていた。海苔養殖筏が安らぎを醸し出していた。昨日の出走前のランナーでごった返していた車両とは雲泥の差である。
終点国分で降り、バスを待つ。鹿児島市街地からのバスの方が遥かに時間の節約にはなっていた筈だが、200円近くをけちるためにこのルートを選択した。国分からのバスが渋滞にはまることは非常に考え難かった。内装も路線バスの車両が8:10過ぎに国分駅前に到着した。予想通り渋滞もなく、約20分後には空港に到着した。
チェックイン、荷物検査場を通過し、待合ロビーに進む。売店には薩摩ビールの生が610円で販売されていた。恐らくヴァイツェンだろう。うーん、、、年末年始の麦欲はどこ吹く風、ヴァイツェンと予め判ってしまうものに投資するのはいかがなものかと感ずる昨今であった。
帰路便は既述の通り、伊丹経由を余儀なくされた。今日の544便や昨日の625便は割と若いCAばかりであったのだが、伊丹発東京行き22便は年季の入ったCAがほとんどであった。適材適所配置?長時間フライトは若くて体力が必要だから?偶々なんだろうか。旅はもう終わり、現実に戻れ、とのイメージ効果がある、ということか。確かに早めに旅を切り上げてしまって少々損をした感じも否めなくもなかった。
鴨居に戻り、なんとはなしに焼き立てパンが欲しくなり、小愛夢に足を運んでしまった。体調調整は兎も角として、体重調整が全くできぬまま、10kmレースは幕を閉じてしまったのである。
(完)

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付録:
山旅・麦旅アドバイス
・天文館周辺日中は渋滞あり。