某社員たるべきは

不定期連載 山道をゆく 第240話
11/09/09~
冠ヶ岳、神山(日本三百名山、関東百名山、庵選千名山537)、
駒ヶ岳
【某社員たるべきは】

9/9(金)
庵庵…鴨居〜町田…ファミマ…町田〜(はこね3号)〜箱根湯本
…セヴンイレヴン…温泉場入口=早雲山駅入口…大涌谷分岐
…冠ヶ岳分岐…冠ヶ岳…分岐…神山…防ヶ沢分岐…駒ヶ岳〃箱根園
−箱根湯の花温泉ホテル

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今年も某社社員旅行の季節がやって来た。今年こそ大人しく既成ツアーに従おうと思っていたのだが、旅行委員が態々旅行代理店が提示した以外のコースを検討するか、と吹っ掛けて来たので、確かに昨年より旅行代理店の動きは2週間ほど遅かったのだが、ならばと買ってしまった。提示されたのは金時山であり、難易度的にも申し分はなかったのだが、既踏峰である。であれば。こんな折でなければ目を、足を向けないであろう、なんてのは失礼だが、神山に行こうではないかと考えるまでに時間を要しなかった。某社会長名を冠するこの山に、某社員ならば何人たりとも一度は踏み入れる必要があろう。委員がエンジンに火を点けてしまった以上、国内旅行業務取扱主任のアントニオの旅程考魂は快速運転を続けた。今年の旅行代理店の動きは本当に遅かった。色々とアントニオのプランにケチをつけようとしていたが、最終的にはアントニオの計画通りとなった。無理難題は提示しなかった。ホテルの送迎バスの確保くらい、代理店の当たり前の業務だろうに。
お約束のように往路はロマンスカーでの入箱を希望した。細工は流々。天気さえ良ければ。。。
当日は8時前に小田急町田駅下り線ホームでの集合とした。昨年の新宿に比べ、待ち合わせに利用できそうなスペースも乏しく、一瞬は隊員が揃っておらず乗り遅れる者が発生するのではと心配していたが、何とかなった。8:02、町田駅2番線を発ったはこね3号は、昨年の日光1号と異なり、通勤客も少なからず運んでいたようだ。普段、本厚木以西は各駅停車の急行列車に乗車していたので、特急にしては停車駅数は多い部類ではあるが、数々の駅を通過するのに溜飲が下がった。
やがて、箱根湯本に到着。取り急ぎ、一番近いコンビニに向かい、お昼向けにおにぎりなどを大量に買い込んだ。湯本へは戻らず、一つ先の温泉場入口バス停に進んで湖尻方面行きバスを待つ。山方面からの下山車両が目立つ。金曜だと言うのに、、、通勤客なのか、はたまた木曜休みな方々なのか。この交通量を見るにつけ、箱根の経済は回復しているように感じるのだが。J系統のバスは九十九折を喘いで行く。途中の乗下車客や周囲の交通量も少なくはなく、早雲山駅入口には予定より10分以上は遅れての到着だったのではないだろうか。
ホテルの方にはケーブルカー利用の旨しか伝わっておらず、ケーブルカー改札内を心配そうに探していらっしゃったようであった。挨拶して荷物を車に預け、いざ出陣。
駅には観光客数多なれどもハイカーらしき人は見かけなかった。駅前登山口からはやや急な登りが続いた。早雲山は大涌谷側と比べれば少々歩かれていない感じだが、それでも歩き易い部類だと感じた。徐々に雲も多くなり、岩の湿り気も増し、それなりの山らしいルートを歩いている気持ちになった。何しろ誰とも擦れ違わず、空いているのが良い。これも箱根なのだ。分岐から登り返しが少々あったが、 後は割りとなだらかで極めて歩き易かった。天気だけが玉に瑕だ。冠ヶ岳も元々展望に乏しかったが、更に真っ白であった。分岐から神山へ向かう途中、藍色の、南関東以外では見たことがない花を確認した。トリカブトである。奥多摩での記憶は微妙だが、神奈川県では初めてである。神山にトリカブト。我々を迎えてくれていたということだろう、なぁるほど。いや、驚きであった。
神山山頂も広いスペースにはなっているが、展望はなかった。買い込んだものを広げた。一緒にビールも。曇っており、Tシャツでは肌寒い、涼しい。かんかん照り&高温の方がベターだったが、偶には霧中の山も有りだろう。防寒用のレインウェアはホテル行きのワゴン車荷物として預けてしまっていた。隊員中、アントニオのみが半袖のままであった。留まっていては寒いので、ロープウェー乗り場で待っていると伝え、山頂を発ち、快速運転を始めた。歩き易い。快適だ。惜しむらくは天候だ。
ガスは薄まりを知らず、霧雨のように感じる。風もある。駒ヶ岳山頂に来たが芦ノ湖の展望は何処へ。13時過ぎだった。旅行代理店向けのスケジュールには、お爺さんペースで通知しており、それより2時間以上早い段取りである。他の隊員達も10分も待たずに到着した。
ロープウェー下の箱根園からは宿の送迎車にお世話になるべく、電話しようとするも、天候で電波状態が芳しくなく、アントニオのケータイからは通話ができなかった。しかし、同じ何処も端末の隊員のケータイではしっかり3本立っていたので、代わりにホテルにかけて貰った。未だ部屋の準備ができていない、と言う。それは構わない。箱根園で延々待たされるの出なければ。
霧中の吊り篭に揺られること7分、下界に戻る。空は灰色のままだ。程無くワゴン車に便乗し、宿へと向かった。
宴では久々にフィーバーした。宴は良いものだ。その後も仕入先との電話会議、顧客への回答作成作戦会議など、通常の社員旅行と異なり、飲んだ暮れなかったのが幸いだったかも知れぬ。
防ヶ沢分岐から直接ホテル方面へ降りられる登山道の利用を一時は考えていたのだが、翌日、ホテルからその下山口方面、硫黄地獄方面を目指して散歩を始めたらホテルからちょっと歩いた地点にバリケードが張られていた。その道を利用していたらどのような結末になっていたのだろうか。土砂災害で通行止めになってから6年は経過している筈だ。その間にケーブルカーは廃止された。一時は考慮していた山道下見も決行もせず正解だったか。偶の箱根にも味があった。晴れたらまた訪れたいものである。
(完)

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付録:
山旅アドバイス ・はこね3号は車内検札はなかった。 ・今回利用したバス、或いは箱根園からのバスは何れも伊豆箱根鉄道 である。バスのフリーチケットや、ロープウェー込みのそれも 販売されている。