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一瞬の浅

不定期連載 山道をゆく 第179話
2005年夏特別企画 第2弾 温泉祭り
05/08/13~08/15
草津白根山(日本百名山、関東百名山、庵選千名山353)
逢ノ峰(庵選千名山354)
【一瞬の浅】

8/13(土)
庵庵−R16−八王子バイパス−入間市内−埼玉県道など−R407−吉牛
−R17−沼田街道(県道25号)−県35号−県155号−小野上温泉センター
−R353−ロマンチック街道(県55号)−暮坂峠の茶屋−R292−道の駅六谷
−ベルツ通り内回り−リンデンベルグ−宿…中央通り、湯畑、西の河原
…宿…翁の湯(源泉:湯畑)…凪の湯(湯畑)…宿…湯畑・焼酎倶楽部…宿(湯)

8/14(日)
宿(湯)−R292−白山火山駐車場…(直行)ロープウェイ山頂駅
…(直行)白根探傷歩道最高地点…本白根山展望地…鏡池
…山頂駅…逢ノ峰…駐車場−宿(湯)…中央通りスーパー
…宿…嫗仙の滝…恵の湯(万代鉱)…宿(湯)…長栄の湯(万代鉱)
…地蔵の湯(地蔵)…宿…レストラン入江…宿(湯)

8/15(月)
宿(湯)−R292−R145−R353−市城−県35号−渋川伊香保IC
−上里SA−入間IC−R16−八王子バイパス−西谷−庵庵

−:車、…:歩き・走り

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
先月にリフレッシュ休暇で10連休も消費してしまい、また、夏期休暇向け充当可能な2日のカードも既に黄金週間に消費してしまっており、会社カレンダーでの休日は13日から16日の4日間に限定されていた。何処も彼処も混雑だろう。宿の予約も今更不可能だろう。そんな矢先に草津や木島平近辺の素泊まり宿の空きが幾つか発覚し、未踏の200名山を攻めようと急遽計画を練った。苗場の帰路に確認した鳥甲山、ロングコースの佐武流山、野反湖北の大展望白砂山をピックアップし、色々と考えては各点を長い線で結ぶことにした。3連泊も予約は不可能ではなかったが、帰路の渋滞が億劫なので満を持して2泊のみ予約することにした。晴れれば金曜日の夜のうちの出発を虎視眈々と狙っていたが、天気予報は山登りを諦めさせようと躍起になっていた。天気が悪ければ初日はのんびり温泉行脚で良しとするか。前日になり、明日は絶対天候が回復しないことを確信後、目覚まし時計の針を遅らせることにした。
【8/13(土)】
草津までのルート上の温泉ガイドを模索した結果、小野上温泉に決定、営業開始時刻から逆算し、現地までオール下道の場合の出発時刻を割り出すと、庵庵発4時で大丈夫との結論に達した。気の重くなりそうな寒空の下、何時ものようにR16を北上する。もう6年も前に両神山に赴かんとした折に、入間の先、稲荷山公園まで進んだことがあったが、其れより先は未踏だった。もっともスクーターで木更津側末端部や久里浜側末端部は制覇しているため、オセロの理論上はR16は完走と言えなくもない。未踏だから新鮮な気分でとまでは行かないが、お盆初日にしては思ったより渋滞していない国道や県道を縫って埼玉県を駆け抜けて行った。雨天プランと言うのは世の辞書にはなくなって久しい。下道は混雑してはいないが、刺激が少ない。風景の各構成物の魅力が天気によって半減してしまったと言えるのか。偶にはスピードを出したくなるが、高速道に乗ってしまったら何処を彷徨って時間を潰すべきか迷ってしまう。下道を堪えては3時間程で中山道に到達する。中山道のイメージと言うと長野県とか中央本線のイメージが過ぎるため、本庄や熊谷となると抵抗感が否めない。抵抗感を払拭するため、吉牛に寄って腹拵えをする。久々に地上に降り立った気持ちで豚鮭定食を所望する。数年前は牛鮭定食ではなかったか。地上にはこのような食べ物があったのか。懐かしい香りがした。
国道は高崎周辺でバイパス化して流れも良い。高崎を越えてからは沼田街道に針路を変えた。国道より此方のルートの方がより真っ直ぐに北を目指しているようだ。渋川に近付き、県道35号線方面に曲がる。学生時代、鹿沢のセミナーハウスを目指した時にも利用したルートである。終に小雨も煙る。確かに今日はダメージは少ない。あ゛、傘を忘れた。雨の旅が脳内にインプットされていなかった証拠である。程無くして吾妻川を渡ってR353側に移り、小野上温泉センターに到着。10時営業開始まであと十数分は時間があるか。4時前に既に自宅に届いていた朝刊に目を通していると、従業員と思しき方々が続々と登場して来た。うむ、ぎりぎりではないか。心は既に温泉モード、雨の中の車内で新聞読了には程遠い状態で、温泉の暖簾を潜ることにした。
2重露天と呼ぶべきか、岩風呂が2槽並んでいた。最初に造った岩風呂の露天だけでは手狭になって後から屋根を付けたのか、元々屋内展望風呂程度だったのか不明だが、内湯の隣に岩風呂が1槽ある。更に建て増しした正真正銘の露天の岩風呂が1槽存在した。土曜日、温泉に開店と同時に駆け付ける者の数は決して少なくはない。が、年齢層は確かに上である。雨が降って止む無く朝からの温泉だが、周囲の方にとっては週課なのだろう。其の週課に「歩く」を追加するとより健康的になれそうな方が多かった。
温泉を出てまた国道を西へ進むとホームセンターが見つかったので傘を購入した。給油後、四万温泉方面にR353をそのまま進む。11時台でお盆としてはまずまずの交通量である。県道55号に曲がっても車の数は減らなかった。ロマンティック街道の愛称で多くのバイクの往来を予想していたが1台たりとも擦れ違うことはなかった。彼等もお盆休みなのだろう。運転では左程の体力は消耗しない筈だが、目と神経の疲れが空腹に一役買っていた。インターネット情報に拠れば道の駅六合村には焼きたてパン屋があるらしい。焼き立てパン第一主義者の胃が疼く。其の期待で自然と腹も減ってきた。晴れていれば気持ちよくバイクでも飛ばせるルートなのだろうか。天候不順でハンドル捌きも軽いとは言えない。湾曲路を上り切った暮坂峠に茶屋が一軒あり、軒先でとうもろこしを焼いていた。食欲をそそられてしまったアントニオは急停止し、もろこしを所望する。若山牧水ゆかりの地域で歌碑が街道沿いに点在するらしいが、山欲を治められず完全に気持ちの切り替えが出来ないアントニオの前には其の存在感は風の前の塵に等しかった。晴れていれば草津白根の遠望が山家の登山欲をそそったことであろう。残念である。
峠を越え、胃が山の幸を求めて三千里、早く来い来い道の駅と思った矢先である。沿道に食堂を探そうと目を凝らす。すると秋波を送る建造物が1軒見つかった。建物の前を通過し寸分の間悩んでは戻り、実態を確認することにした。「暮坂高原 花楽の里」と言う地場土産物屋と併設した食堂に足を踏み入れたところ、六合村カレーの他は蕎麦程度しかなく、芸の貧弱さに涙を呑む。この山間の地で是だけの芸しか披露出来ないとなると、道の駅と言う俗化した売り場に果たして欲しい物が見つかるか、絶大な不安を抱えながら街道を下ることにした。
R292に合流して間も無く道の駅に到着。「六合村の謂れ」が観光案内パンフレットと共に並んでいた。明治33年7月1日、当時の草津村が分村した際の草津町でない側の一方は、構成としては入山、小雨、太子、日影、赤岩、生須の6つの村なのだが、是を1つに合わせて六合村とし、古事記や日本書紀以来の読み「クニ」を充てたとのことである。売り場を隅々まで目を凝らして眺めるがパンは見つからない。大体、焼き立てパン屋でパンを探すのに目を凝らす必要があるのか。俺のパンは何処だ。広告に偽りありか。パン焼き器のメンテナンス費用と売れ具合が合わなくなって止めてしまったのか。六合破れてパン屋なし。六つも村が合わさって是しか出来ないのか。六合に名前負けしていないか。旅前の期待感の大きさを鑑みると、この罪は重い。食への裏切り。慣れない雨中のドライブの心掛けが悪かったのか。
さて、気を取り直したいが腹が減ると人間誰しも機嫌を損ねるものである。北上しては草津方面に曲がると、数分の運転で温泉界隈の一角と思しき地点に紛れ込んだ模様である。道は細く、交通量も多い。落ち着いて地図を確認しながらの運転も出来ない。一方通行も多そうだ。中心部を一旦抜け出し、何とか外周のベルツ通りに至った。一歩踏み込んだところで、此処は車で巡る町ではないと感じた。食堂は何処に。グラススキーやパターゴルフなどの客で賑わっている天狗山のスキー場下の駐車場に車を止め、食堂のメニューを見ても此処も魅力を感じなかった。ベルツ通りを再び巡ると、リゾートマンション街道とも呼ぶべき界隈に到達した。宿も近いのだろう。レストランも数軒目に付く。適当に車を停めて数件を眺めているうちに、宿のお勧めにもあったリンデンバウムが見つかった。ドイツソーセージ専門店である。初日昼だが少し奮発するか。と言いつつも一応ランチメニューとして幾つか選択肢はあった。売れ筋はハンバーグ定食とのことだが、ソーセージ屋でハンバーグで大衆は満足するのか。ハンバーグ定食が最安値なので売れ筋と言うのは合点はいく。然し、此処はソーセージ屋だ。正しいソーセージ道を歩みたい。「ポトフなんかもお勧めですよ」そう、そうだ、その意気だ。パンにはソーセージの燻製ペーストが添えられていて、是を塗って食べると君もドイツ人になれる。パンもしっかり温められていた。ソーセージ屋では普通、このようなものを食すべきだろうと、周囲でハンバーグ切断に余念のないファミリーを尻目に舌鼓を打ち続けていた。宿のお勧めの食堂、当たりだ。満足だ。
宿のクーポンの但し書きには現在改装中のマンションとあったため、遠くからでも見分けがついた。正午を過ぎたばかりでチェックインには早過ぎるとは思ったが、フロントに尋ねてみれば入室okとのことで早速荷物を運ぶ。建物が消防法の規制によって冷房装置を設けることが出来ないと注意書きを見つけてしまった。部屋の真ん中には扇風機が立っていた。是を知っている者は、この時期にこの宿には泊まらないと言うことなのか、、、だが、扇風機道三十余年のアントニオにとっては怯むには足らない挑戦である。然し、館内を巡ると、自動販売機に発泡性麦茶、偽麦茶に大豆茶も提供されていないことには衝撃を受けた。
早速、界隈を散策する。酒屋は探せば幾らでもあって安心した。土産物としては饅頭が有名なのか。晩飯は其の気になれば自炊道具の揃っている宿で摂取も可能だが、休日は多少楽はしたい。西の河原公園通りには飲み屋が何軒か存在するのが確認できた。なーんだ。鳴子温泉みたいに食事付きの宿ばかりではないと言うことか。一人では入り辛い店も多そうだが、何とかなるだろう。
町内の随所にザスパの選手の写真入りポスターが掲げられていた。選手の紹介文には、珍しくも各選手の勤務先が掲載されている。だが、彼等の勤務先はホテルや旅館等の宿泊施設しかないようだ。サービス業の町、草津だった。
一箇所、温泉饅頭売りの激しい店があり、通行人に蒸かし立てを無理矢理試食させていた。従業員5人くらいが夫々片手に20個くらいを載せたお盆を掲げ、ゲリラ逆試食作戦を敢行していた。其の気になれば4,5個くらいは平らげられるだろう。ただ、草津界隈のメインストリート的存在の西の河原公園通りであるから、夫々の観光客がこのルートを通るのは一度や二度程度には収まらず、大抵の者は既に食べ飽きて敬遠をしていた。饅頭売りも楽ではない。一応お茶も同時に配られているのだが、何しろ暑いのに熱いお茶だ。かと言って饅頭だけなら途端に脱水症状に陥りかねない。
大体町の様子も掴め、また晩飯の場所の確保も特に困らないと判断出来たところで、外湯巡り大会に移行する。先ずは、翁の湯である。宿からは近い。同じ通りに面する西の河原温泉は観光客でごった返していたが、此処翁の湯にはジモティと思しき方若干2名しか居ない。観光客はそこまでしてお金を払いたいのだろうか。君達は本当の草津を知らない。僕も知らないけれど。悪くはない湯加減であった。温泉の能書きには、1日に3,4度以上の湯はあまりお勧めでないと謳われていた。草津は強酸性なら、小野上温泉はぬるぬるだから強塩基性なのだろう。小野上と此処で中和したので、あと残り3,4度、1日で5,6度の温泉に浸かっても弊害はないと計算した。
次に凪の湯を探す。地図に拠れば西の河原と湯畑の間なのだが、中々見つけることが出来ない。路地が入り組んでいて見えないのか。少々高台的場所に上って俯瞰すると、表通りの裏側に其れらしき建物が発見された。迷うこと十数分、飲み屋の裏に半地下状の建物が見つかった。此処は見つけ難い。一発で発見できたら、草津道一級は難くない。
二湯を制した頃にはどっぷりと日も暮れていた。湯畑方面の飲み屋で引っ掛けようと西の河原温泉付近から店を色々と覗き込んだが、客が集中して相手にしてくれない店、空いているが飲み物に乏しい店ばかりでアントニオの時の波長の合う店が見つからず、少々面食らっていた。そんな中、湯畑の南側のたこ焼き屋の隣の飲み屋は失礼だが左程高級には見えず、ボラれまいと思い、客が1人も居ない中、暖簾を潜ることにした。2階はお好み焼き屋らしいが、暑さでばてたのか、濃厚な食べ物には目が向かなかった。そんな状況でさえ駆け付け1杯目はジョッキの黄金清水を所望してしまい、胃に更に負担を掛けていた。たこ焼きも少しは食べたいと思ったらお通しで登場して来た。なる程。2杯目は群馬産の蒟蒻焼酎を希望したが残念なことに売り切れであった。止む無く鹿児島の芋をロックで飲み、宿に戻ってまた温泉してから目覚ましをセットして床に就いた。
【8/14(日)】
結局午前中のみが勝負、の天気予報に追われ、3時半頃に宿を発つ。真っ暗闇の中、R292を駆け上る。途中、強烈な硫黄臭の漂う箇所に突入し、山頂までこの硫黄ガスに追われるとしたらチンタラ歩く訳には行くまいと恐怖心を覚えた。然し、白根火山駐車場に近付くと其の臭いは霧消していた。

駐車場には幾重の車が待機している。高々草津白根山でも、駐車場仮眠で気合を入れて登らんとする者ばかりなのだろうか。時刻は4時を回り、少しずつ空が明るみを増すが、壮絶なガス劇場に観衆の殆どが狸寝入りの模様だ。4時に出発しても7時には戻って来れる軟弱登山ルートだから、果報は皆寝て待っているのだろうか、動きは鈍かった。誰も動かず、先導する者もおらず少々面食らったが、5時になって意を決して薄暗い登山口から歩き出す。駐車場からロープウェイ乗り場まで適度な散歩コースであるにも拘らず、日中にはバスを走らせている模様だ。愕然とした。バスの排気ガスによる植生への影響をどのように考えているのか。 観光地と化した哀れな白根山である。遊歩道最高地点まで常人速でも往復3時間程度と言うのに、ロープウェイでは更に30分程度短縮できるのに、それでも楽したいのか。既に此処を踏破した山仲間が俗化し過ぎていると言っていたが其の言に偽りなし。駄目過ぎる。とは言うものの、今日は先頭ランナー、今は独占状態である。人が寄ってくる前に歩き回ってしまえ。逢ノ峰は後回しでも良いだろうと、往路は巻き道を辿る。十分経過しただろうか、蛻のリフト乗り場に到着。リフトを無視して少々湿り気の多い、オオカメノキやシラビソに挟まれた登山道を更に進む。最高地点に近付くに連れ、沿道も少々花めいてきた。ヤナギラン、ヒメシャジン、ヤマハハコ、アキノキリンソウあたりだろうか。 そしてやっぱり山頂周辺にはこの花が必要だ。コマクサだ。強く生きろ。観光客に踏み潰されるな。風に雨に負けるな。最高地点なんて簡単だ。庵速で駐車場から56分が経過していた。



展望地点に移動し、ガスの分け目を狙う。雲間には時折、力強い朝日を感じる。暫く佇むと、レンズがその容姿を的確に捉えられているか自信はなかったが、薄っすらとあの浅間山が顔を覗かせたのである。一瞬だった。今日は午後に向かってまた天気が崩れる予報だから、其れが今日最後の「浅」だったのではなかろうと思う。一瞬を迎えられた。俺は山家だ。駐車場には数十人が居た筈だが、今此処から浅間山を目撃出来たのはアントニオただ一人なのである。


下山途中は数人の若者とも擦れ違った。この程度なら「ハイキング」と呼ぶに適当なアクティビティと言えよう。果たして浅間山は君達に向かっても微笑むのか。はたまた浅間山の聳える方角がわかるのか。地図を持っているのか。山を愛せ。できれば次回からは正しく。

リフト乗り場からは、往路ではパスした逢ノ峰を越えた。アサツキが色褪せながらも咲いている。山頂では愈々ガスも濃くなり、足下の駐車場すら覚束ない。駐車場に戻ってから、観光客の多さに辟易して寄ることを躊躇っていたが、折角だからとお釜を目指す。コバルトブルーの水面は瞬く間にガスが覆う。一瞬のコバだった。
駐車場に戻ると、裏側で幾人かの農家と思しき方が騒がしい。行けば朝採りきゅうりにインゲンの詰め放題売りである。一袋300円なり。袋は左程大きくない。仕方ないので柱状物積重ねの法則で効率良く詰めていくと、オバサンは「上手いねぇ」と言う。片やオジサンはアントニオの戦法に危機を感じ、「はい、制限時間一杯でーす」と叫んでいた。でも、一回り細いものを小机のスーパーのバーゲンで狙うことを考えると取り立ててお買い得感はなかったのだが、親父をギャフンと言わせることが出来て本望であった。
今日は既に横手山などの展望も諦め、朝の8時台にR292を草津温泉街へ向けて下ることにした。四万方面、榛名や浅間隠等の山並みもはっきりとしている。2000m以下の地域は概ね好天に恵まれていた。R292からの眺めは遜色無いとは言え、山頂からの其れと比べれば有り難味、高揚感等、幾重にも不足する心的状況であった。
宿に戻り、きゅうりを冷蔵庫へしまい、本日2回目の温泉湯に浸かる。未だ弱冠の8時台である。汗を洗い流した後、宿の壁に付けられたジョギングコースマップを何気なく眺めていると、嫗仙の滝が紹介されているのが目に付いた。マップ中に紹介されているコース中で最長距離を誇るようで、地図の縮尺が非常に怪しいが一応所要時間も掲載されており、是も悪くは無いかなと思う。きゅうりを食べなければと、滝から戻ったら宿で昼食にしたく、スーパーを目指す。
朝も早よから、と言いつつも既に10時頃であったが、草津の交差点付近でバイクとサンデードライバー車両の接触と思われる事故が勃発し、救急車の出動であった。敢えて言おう、お盆の草津をバイクで走るための道はない。草津はバイカーにとっては鬼門かも知れぬ。道が細い、アップダウンが激しい、サンデードライバーが輪を掛けて草津音痴でハンドル捌きが覚束ないなど、目も当てられない状況だ。なのでアントニオは歩く。スーパーの惣菜売り場に赴けば、昨日の残り物半額セールのものを2品と電子レンジ可のご飯、飲み物を買い揃える。宿に戻っては早速、嫗仙の滝と、出来れば帰路に1箇所、共同湯をやってみたいと考えながら装備品を固め、サンダルに履きで再び草津の町を歩き出した。
国道を一旦東へ1km程歩き、林間の道路に逸れる。下り一辺倒で交通量も殆どないが、何故か片側一車線の割と整備の行き届いた道だった。恐らくこの道を初めて通過する者ならば、車両の速度を緩めるものだろうが、幾台か手馴れたスピードでアントニオを追い抜いて行った。明らかに滝散策者とは様子が違う。暫く歩くと氷解した。道場だった。少し進むと駐車場があり、小型バスさえ停車していた。宿の町内ジョギングコースの一環と高を括ってサンダル履きで赴いたのだが、其の先は山道らしい道になり、面を食らう。それでも道具のハンディキャップは己の力量でカバーし、先行く散策客を余裕で追い抜く。滝壺まで一切の登りはなかった。町から下りあるのみ。滝壺の寸前の泥濘で足を滑らせたものの、何とか目的地に近付いた。滝壺付近は沢となっており、履物は余裕で浸水してしまう。大型三脚に一眼レフを構えたカメラマンの殆どがゴム長靴など、足回りも重装備で固めていた。アントニオのサンダル履きも強ち沢に不向きでもない。カメラマンの数は10人にも上った。10人夫々の写生にシャッターを切っていた。滝上より標高のある地点から、態々我々は下って来たと言うことか。うむ。意外な程良い運動になった。
帰路は当然ながら上り一辺倒だが、空腹にも拘らず庵速フルスロットル状態で、サンダリスト世界選手権保持者としての本領を発揮する。擦れ違ったカップルの女性の方が、ハイヒールタイプのサンダルを履いていた。是は履きこなせれば上りに強い。
「地上」に上って戻り、噴出す汗をさっさと流したく、恵の湯へ直進する。先客2名、刺青はあるがお腹も十分弛み、言葉には方言も混じる割と庶民的なやーさんであった。湯加減に怯んでは「あちぃあぢぃ」と叫んでは水を急入し、「いやー、熱かったなー、あぢぃのヌがてなんすぉ、オラ」と容姿に相応しくない口数の多さが逆に微笑ましい。さすがは草津の共同浴場である。草津の湯にはヤクザを怯ませるだけの力があった。
さて、昨晩酒屋にて瓶入りの地ビールを購入したのだが、宿には炊事道具からワインオープナーまで揃っているのに何故か栓抜きが見当たらず、絶望感を覚えた。昨日の酒屋ならば栓抜き50円である。然し、50円の栓抜きのためにまた1瓶購入の欲求に苛まれることであろう。悩んでいるうちに通りすがった雑貨屋の100円コーナーに運良く栓抜きを発見することが出来た。
宿に戻って少々遅めの昼食を摂る。採れ立てに等しいきゅうりは親父をギャフンと言わせた分、瑞々しさが舌を翻弄した。惣菜としてトンカツも一緒に買い込んだのだが、きゅうり、トンカツに別々の調味料を態々買うのか迷った挙句、何とかタルタルソースで合意に持ち込んだ。
天気予報もスリップして未だ天候が崩れそうにない。少しやられた気分だが、先程の温泉から宿まで歩くのも汗だくになったので、食後に今日4度目の温泉湯に浸かる。其の後、矢張り暇を持て余し、また市街地共同浴場の旅に出る。
昨日から感づいていたが、草津温泉街界隈はアップダウンも激しく、また道幅及び標高差を適切に表示した観光地図がまったくないのが腑に落ちない。もっとも、標高差を明記した地図を見た者は草津温泉に恐れをなして寄り付かなくなってしまうだろう。また、道幅についてだが、人しか通行できない路地が縦横無尽に張り巡らされていたり、人を避けることも出来ないほどの狭い車道も目立ち、地図作成者の労力も一筋縄では行きそうにない。
湯畑を離れると、地図も粗くなり、自分の通過している路地が果たして地図上に掲載されているのか不安になった。後々気付いたのだが、長英の湯の寸前数十mの地点で方向を間違え迷い、業を煮やしてベルツ通りに座標軸を戻す必要があった。一体この道は採用されているのか落選しているのか、道の太さ程度は判断材料とはならない。草津の道は一日にしてならずじゃ。暑い日中に歩き疲れ、長英の湯の直後にはビールを吸入しないと脱水症状に陥りそうである。然し、長英の湯すら中々見つからない。地図には付近に目印となる建造物も記されていない。他の湯は大体似たような暖簾が掲げられているのだが、、、をぉ、この近くの筈だと思ったら、公園の向こう、公民館の反対側にあった。此処の湯は洗い場専用の小さな湯舟が浴槽本体とは別に存在していた。アントニオが今回巡回した共同湯中初めてのサービスである。恵の湯と同じ源泉にも拘らず此方の湯加減は申し分ない。探し回った甲斐があった。
源泉のバラエティを基準に次は地蔵源泉の地蔵の湯を目指す。先程角に見た酒屋の反対側に出た。何だ、、、すぐ其処だったのか、、、迂闊だった。散歩を堪能させていただいた。仕方が無いので大豆ペプチドを大量に配合した。路地を巡るうちに程無く地蔵の湯に到着してしまった。大豆ペプチド配合が未だ完了しておらず、急いで缶を空けてから湯の暖簾を潜る。風呂とビールの順序を間違えると、風呂の神のお怒りを買うかもしれないが、急速な大豆ペプチド配合によりアルコール濃度が急上昇して気分が良くなってしまい、罪悪感は消滅していた。地蔵の湯、激熱だった。我慢することは左程尊いことではない。ビール風呂の順番を違えたことが矢張り逆鱗に触れてしまったのか。茹で蛸感は大豆ペプチド配合効果の賜物か。とても長湯は出来ない。取り敢えずのノルマ達成感のみが残った。
若干の空腹を満たさんと、また西の河原公園通りをぶらついて豚串を所望してしまう。通りの末端に近いガラス工房草津ガラス蔵では地ビールを飲んだグラスをプレゼントとの看板あり、胃が凭れながらも興味津々で値段を調べに行った。840円と言う。ビール代にしては高い。横川の峠の釜飯を思い出してしまった。あの釜、勿体無い。地球に優しくない。ビールジョッキも家にあるし、紙コップを持参したら中身だけを分けて貰うことは出来ないものか。
今日の晩は、宿の紹介にもあったレストラン入江に決める。昨日昼間の下見ではお盆休業かと錯覚したが、焼酎倶楽部からの帰路で煌々と灯りが点けられているのに騙された。レストランと言うよりバーなのか。宿で粘って日暮れを待ち、また路地を探ると今日も営業していた。ジモティにも愛されている店らしい。覗くと当然ジモティしか居ない。メニューは定食が中心だが、バーの雰囲気が漂う。客の殆どが定食にプラスして瓶や徳利を並べていた。中には家にも他にも此処以外に居場所がなさそうなオッサンも居る。女将が、「明日はお盆で店休むけど、いい?」と心配げに聞いていた。そのオッサンのしょ気振りもまた印象深い。背中にはち切れんばかりの侘しさが充満していていた。メニュー内の地ビールの生が無いのが非常に痛恨ではあったが、定食には小皿が3つもついてお買い得感も勝り、落ち着いた気持ちの良い店であった。昨晩の湯畑の喧騒とは雲泥の差だ。是もまた草津なり。
宿に戻り、最終きゅうりを齧る。もう暫くきゅうりの顔も見たくない。味は決して悪くはないのだが。きゅうり取りがきゅうり。
そしてまた宿の温泉。本日都合6度目の強酸性湯に浸かる。入り過ぎてお腹が削れるなんてことはあるのだろうか。
【8/15(月)】
予報では今日も覚束ない天候の模様である。廉価な宿もある。其の気になればまた来れば良い。未だ外湯も17のうち5湯しか制覇出来ていない。草津太郎襲名にはまた訪問すれば良い。未練なければ渋滞知らずのうちに帰るとするか。
是で本ツアー中通算12湯目にして最後の温泉に浸かって軽く汗を流し、未だ夜の明けない草津の町を発つ。午前4時台にはさすがに渋滞もなかろう。国道を快調に飛ばす。R353に入ると其れでもearlybirdな車が少しずつ動き出したため、念には念を入れて県道35号に逸れて渋川伊香保ICを目指す。関越に乗った後、後ろから見覚えのあるベンツが追い駆けて来た。そう、国道で直後を走っていた其れであった。市来から県道に逸れた休部号の方がインターチェンジには早く到達出来たのである。R353を利用するのは学生時代以来で11年振りだったが、頭脳の勝負で休部はベンツに勝てると言うことが判明した。愉快であった。
午前7時台の上里SAで蒸かし立ての葱味噌饅をかっ込み、またハンドルを握る。首都高では早くも渋滞を記録していたようだが、圏央道に影響がある筈もなく、快適な高速空間を通過することが出来た。車両の途切れを知らぬR16でも快適に車は流れ、感動すら覚えてしまう。
勿体無さは否めない。だが、渋滞に巻き込まれた場合の精神及び肉体の疲労を鑑みると、早出は32文の得と言えよう。ガソリンスタンドに寄りながらも午前9時前には帰庵した。さあ、洗濯だ。
(完)

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

付録:
山旅アドバイス
・お盆の草津温泉街は人も車も多く、道は細くて起伏が激しく渋滞し易い。
・おまけに一方通行も多い。交通ルールは守れ。
・共同浴場は無料。主に朝方の清掃時間帯を除き、終日利用可能。
石鹸の類は一切ない。シャワーの類もない。