時速300km

不定期連載 麦道をゆく 第28話

時速300km

11/02/18~
アウグスビアクラブ
(Toshi's IPA、Black Bitter、陸奥八仙)
ビアパブ ベアレン材木町
(アルト(CASK)、ベルジャン ビスケットエール、チョコレートスタウト)
レストランせきのいち
(バーレーワイン2010、IPA(リアル)、オーガニックビール、
オイスタースタウト)
【時速300km】

2/18(金)
庵庵…鴨居〜菊名〜渋谷…六本木通り…アウグスビアクラブ
…麻布十番〜赤羽岩淵…赤羽〜大宮〜仙台…ハピナ名掛丁
…仙台〜盛岡…スーパーホテル盛岡…ビアパブ ベアレン材木町
…スーパーホテル

2/19(土)
スーパーホテル…盛岡〜花巻〜北上〜山ノ目…県道260号線
…県道134号線…県道14号線…石蔵レストラン世嬉の一・売店
…一ノ関−仙台さくら野…東北急行バス営業所−国見SA
−那須高原SA−羽生PA−東京八重洲口…東京〜川崎〜新子安…大口
〜鴨居…庵庵

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月日は百代の過客にして、行き交うはやてもまた旅人なり。
JR東日本がグランクラスの宣伝で躍起になっている昨今、試乗会当選通知が届いた。金曜日の大宮・仙台間、土日の盛岡・新青森間の選択肢を総合すると、土日の当選確率が低いのは明らかであり、また、金曜の仙台発もあまり美味しい選択には思えず、金曜下り列車を第一希望とし、えきねっと登録とモバイルSuica登録により応募口数を3倍にしたアントニオの攻撃に、JR東は応えてくれたのであった。仙台着17:48とは微妙ではあるが、月の第3金曜日と言えば、ベアレンのCASK Dayである。Happy Hourには当然間に合わないが、某大手宿泊所斡旋ポータルでの空室チェックにハッスルしていた。その2番手ポータルと言われれば、言われた側が腑に落ちないだろうが、検索をしているうちに1番手の当日限定と2番手の特定日限定が同一金額ともなれば、先手必勝の2番手サイトからの申し込みとなった。1番手サイト用のポイントは当然利用できないが、1番手サイトでも当日に空きがなければ宿泊先検索が振り出しに戻ることを考えれば、ベターな選択ができたと感じた。そして、復路の交通手段だが、新幹線のトクだ値より遥かに廉価な手段が存在した。土曜限定ともありながら仙台東京間3000円ぽっきりとの格安高速バス席も確保できて本望であった。折り返し夜行便の間合い運用のために夜行便と同じ3列シートであるため、非常にラッキーな旅の準備ができ、心は既に北上川の彼方へ飛んでいた。
飛んでいた前日は某所でモノに異状が発生した関係で深夜1時過ぎまでの勤務となったが、ぎちぎちのスケジューリングをしなかったのが奏功した。
メール捌き、市図書館本返却などを済ませ、ボストンバッグを抱えて東横線の人となった。ボストンバッグを抱えながらも今日はあまり歩いておらず、結局渋谷から六本木通りwalkとなった。平日のお昼時ともあれば、会社員がランチに繰り出す雑踏の中、ルーマニア大使館の脇を掠め、パブへと突入した。さすがに平日ランチ時にビアクラブメンバーたる飲食者はアントニオの他は少なかった。青森フェアは昼から堪能可能か、坂本さんに問えば可能とのことだった。
開けてみれば両方とも揚げ物になってしまったのだが、ゴッコの唐揚げと真鯛白子のフリットを所望した。双方ともビールが進む。コラーゲンを存分に配合したゴッコに舌鼓16連打となった。青森で食べるにしては高価かもしれないが、六本木であれば合点が行こうと言う物だろう。釜焼きピザやフォッカチオ目当ての客も少なくはないと見られる。昼から誰でも遠慮なく。That's the アウグルビアクラブ。
さて、アウグスの次は、心機一転、大宮へ向かう。乗換回数の少なさと運賃を考慮し、麻布十番まで小走りし、幸か不幸か2分遅れの埼玉高速鉄道線方面の列車に飛び乗ることができた。赤羽岩淵で下車し、南へ少々戻って赤羽駅に着けば、これまた強風の影響で遅れていた湘南新宿ラインに乗ることが出来た。荒川上の橋梁では速度が落ちたものの、その後は回復して、予定より少々早く大宮に到着出来た。西口コンコースには既に人集り、はやぶさに一目散に乗らんとする者でごった返していた。さすがに平日ともあると、お年寄りや専業主婦が目立ち、若人は少なかった。

それでも鉄カメラ小僧は少なくはなかったように記憶している。15時になり、乗車票と記念品などを受け取り、さて、発車まで1時間もある、どうしよう、と思いながらも、またNew Daysで一番搾りを購入し、ホームで一通り撮影を済ませると、また飲兵衛と化してしまった。車内販売もなければゴミ箱も使えない旨の案内であるから、仕方なく発車前の大宮駅ホームでやらざるを得なかった。業務メールチェックをし、やがて発車時刻となった。

特に気負いはなかった。JR-Eとして今まで通りなのだろう。アントニオもそう感じた。特に乗り心地が良いものだろうか。最近、E1,E2,E3系にも乗車していないので、比較にもならない。しかし、満席かと想像していたのだが、意外や空いていた。一番デッキ寄りの8号車20列席は全て空席で、アントニオ隣の19B席にも誰も座ることはなかった。試乗会で悪い印象を乗客へ与えないためのJR側の配慮なのだろう。そして、遂に、郡山を過ぎると、「只今、時速300kmで運転しております。その乗り心地をお楽しみください」との車内アナウンスが流された。先程までの2百数十キロ台とどう違うのか。語彙の貧弱なアントニオにはその差を的確に表現することは出来なかった。500系での300km運転とも差はあったのか。建設年代的には山陽新幹線より遥か若い東北新幹線であるから、車両も然ることながら、元々路面状態もこちらの方が優越していたことであろう。福島駅で運転停車後、再び300km/h走行となった。一瞬であった。ただただ、グングンと仙台に近づくE5系電車であった。営業運転時には福島も通過扱いとなるのだ。最高速275km/hのはやてより料金が上がると言う。3月12日ダイヤ改正の時刻表を見れば、山陽九州新幹線直通のみずほもさくらやつばめより料金がアップするようだ。のぞみ、はやぶさ、みずほ三兄弟と言うことか。違いは判らなかったが、快適な鉄路の旅であったことに疑いの余地はない。
まだ麦欲足らぬアントニオは、はやぶさ下車後の仙台市界隈を模索して、鳥の海ブルワリー直営店を見つけようと奔走していた。しかし、こちらは徒労に終わった。HPの示す住所に看板の1枚見当たらないのだ。仕方なくエスパルB1Fの地ビールを常備していると思しきレストラン街をふらつくうちに、近隣2酒造による試飲会が繰り広げられてしまっており、3杯ほどいただいた後、「明日も営業しますか?今日持ち帰ると重たいので明日また来ます」と、守られる可能性の極めて低い約束の後、はやて乗車のために新幹線ホームへと戻ることにした。
はやて35号は仙台で乗客が大きく入れ代わったものの、想像以上に混雑していた。確かに花金の定時を既に過ぎている。9割程度の席が埋まっているのだ。全車両指定席なのだが、果たして皆さん指定券はお持ちなのであろうか、、、意外な混雑振りに面を食らった。だが、この列車を逃すことは即ちベアレンが遠退いてしまうことであるのだ。
程無くはやて35号は盛岡駅に到着した。根雪に足下を取られながらの市街地walkであったが、気分はいち早く北上川に架かる夕顔橋を越えていた。駅から5分ほどでスーパーホテルに到着し、現金前払いにてチェックインを済ませ、部屋に大荷物を置いて表に繰り出した。
夕顔橋を渡り、材木町の通りを早歩きし、半年振りのビアパブベアレン材木町店に到着した。時計は19時半を回っており、金曜日であった。根雪で寒々とした盛岡市外のビアパブのカウンター席は果たして埋まっていた。カウンター越しの店長と思しきママさんは果たして半年前の来訪を覚えてはおられなかっただろうか、店奥のリバーサイド席に案内された次第である。しかし、飲み専門と思しき中ノ島店にしか置いていないと思っていた季節限定銘柄がメニューに記載されているではないか!だが、今日は月に1度のCASK Day、まずはマスジョッキでCASKアルトだぎゃ!寒々とした北上川の畔、あれは南部牛と温野菜のソテーの類だったろうか、に舌鼓を打ちながら、マスジョッキを傾けていた。できればカウンター席にて機会あらば地元客会話に乱入したかった気分であった。20時過ぎに空きが出来たので移動したが、グループ客のみで中々思うようには行かず、肌寒さを感じた次第であった。それでも季節限定のビスケットエールにチョコレートスタウトはしっかり頂いた。次回は開店直後をまた狙いたい。
宿に戻る。大浴場は矢巾町の不動温泉から引いていると言う。根雪街に一矢報いる温かさに満足であった。
夜が明けた。朝風呂を、朝風呂営業終了時刻ぎりぎりの6時半まで浸かって部屋に戻る。LANが使える筈だが無線は通じず、有線LANケーブルは持参していなかったのだが、とある場所にケーブルが見えたため、引っこ抜いてPCに挿したらネットに繋げることができた。
メールチェックなどを済ませ、食堂に降りる。ビジネスホテルの土曜日朝にも拘らず、子連れファミリーが数組いたのには少々驚かされた。また、高齢者曜日限定割引利用と見られるお年寄りも少なくはなかった。金曜からの宿泊者数としては少なくはなく、ホテルの営業が奏功しているように見える。食堂自販機のドリンクは、朝食時間帯は無料となっていた。ビュッフェ形式の朝食は、ジャンキー、オイリーな食材は余りなく、和食も揃っており程ほどのバランスだったと言える。この宿泊費と立地条件ならば、また利用したいものである。
8時半前に宿を出て駅へ向かう。溶け切らなかった雪が方々で凍結していたが、駅までの道程は短いのが幸いであった。最終的な山ノ目到着時刻は変わらないのだが、何となしに乗換覚悟で快速はまゆり号の人となった。盛岡から一ノ関への途上、花巻、北上と接続列車を待ちながら、外気の寒さのために手袋を出し入れしているうちに、ジャンパーのポケットのファスナーが噛んでしまって遂には使い物にならなくなってしまった。損したような、それでもダメージは少ないような、そんな思いであった。はまゆり号からの乗換た電車はいずれも案の定、たったの2両編成であった。それでも座れたので不満はなかった。北上川に沿って南下し、一ノ関の一つ手前の無人駅で下車した。1つ手前の理由は、その方が170円安上がりだし、目指す食堂の営業開始時刻に1駅手前から歩くとちょうど良いタイミングになるからであった。東北本線もこの付近は1時間に1本しか運転されていないのだ。スジ屋の悪戯にアントニオは屈すどころか便乗し、今日も寒いが岩手県南の地を歩いて麦指数を高める必要があった。幸い、山ノ目駅からの道は判り易く、迷う心配はなかった。やがて磐井川を磐井橋で越え、地主町側の対岸にレンガ造りの酒蔵を確認した。おぉ、峠ならぬ川辺の我が家だ。ケンタッキーホーム、ファーラウェーイ!こちらも半年振りだが、記憶は鮮明であった。
そして、店内には半年前にも見えた、今野さんがいらした。半年前は元々HPで確認していたレストラン、クラストンが団体貸切状態となっており、隣の和風の建物、レストランと言うより食堂と呼ぶにふさわしい方へ入らざるを得ず、「隣(のクラストン)と飲めるビール銘柄に差はあるんですか!」当然差はないで欲しい願望の元に問い質せば、寸分の躊躇も見せず、「同じです」と笑顔で回答してくれた。安心した。今日は貸切にはなってないが、休業の模様である。今野さんに再び尋ねれば、向こうは宴会がある時にしか利用されていないとのことであった。嗚呼確かに、2棟のレストランは不要かも知れぬ。さてさて、今日は季節モノとして、バーレーワインを何とホットで出してくれるとのことなので、一杯目に所望した。食事の方は半年前同様、はっと膳である。暫くやり取りをしていると、「確か以前にもお見えになった。。。」をぉ!向こうも覚えていてくれたとは!きっと半年前も、ビール魂をギラつかせていたアントニオに払拭し難いオーラを感じ取ってしまっていたのかも知れぬ。流離いの地ビーラー、アントニオ、東北のこの地にもあった。はっと膳の焼き魚は当然酒蔵の酒粕を利用した季節モノであり、美味であった。酒ゼリーやあんころ餅など、半年前より更にデザートが充実しているように感じた。ポンプ汲み出しのインディアペールエール、オーガニックにオイスタースタウトと今日も飲み三昧であった。どれも甲乙つけ難い。それでも全酒目制覇は難しいのだ。食事も美味い。世嬉の一、天晴れ。
さて、仙台行きバスの時刻までだいぶ間があると読んでおり、土産物屋を物色することにした。1,2分店内を歩いていると、女将さんが試飲を勧めてくれた。それもおちょこ1,2杯では済まされなかった。酒蔵のレパートリーは無尽蔵であった。都合10杯くらいはいただいてしまったと思う。酒蔵ならではの無濾過モノ数種にまた舌鼓を打たなければならなかった。女将さんとも話し込んで、3本程自宅用に購入してしまった次第である。程よい買い物であった。
あれよあれよと思っているうちに仙台行きバス時刻が迫ってきてしまった。1本逃すと1時間待ちである。何とか駅前に辿り着くも、○意を催してしまい、トイレ探しに苦労した。結局、バスチケット売り場兼ゲーセンに入り、片道チケットはバスで買ってくれと言われながらもトイレだけは借りて事無きを得た。仙台行きのバスは4割程度の込み具合、高速道は渋滞していなかったものの、仙台市街地でやや時間を失うこととなった。東日本急行バスのダイヤ編成は果たして妥当なものだろうか。市街地が渋滞していなくとも、定刻に仙台駅に到着するのはとても難しいそうなそれであった。1本待たずに正解であった。
それでも東京行き乗り継ぎまでは1時間程度余裕があったため、付近のデパ地下に寄っては暇潰しをした。東北急行バスの駅前乗り場でなく、始発の事務所前までも遠くはなかろうと、界隈のバス停を探して歩き回った。1箇所、広瀬通に面した大きな待合室に臨むバス停を見ても東京行きは不明であった。係りの人に問えば、道路の反対側にもバス停があるとのことで、渡ってはファミマで水を購入し、狭い階段を昇ってその待合室に向かった。10人ほどで満員と思しき狭さである。やがて、3列分離シートの車両がやって来た。大荷物はトランクに収めることにした。
バスは駅前にも寄り、7割程度の客を乗せ、やがて東北道の車となった。土曜夕方とは言え上り線に渋滞はなく、快適なバスの旅であった。新幹線を最安値で購入してもその1/3程度の料金だから、こちらは遥かにお得である。エススター号は東京八重洲口に定刻より40分も早く到着した。東京から京浜東北線の人となり、新子安walk後、横浜線に乗って何時もの鴨居に戻った。嗚呼、業務メールを確認するのではなかった。また現実に舞い戻ってしまった。時速、300kmで、、、
(完)

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付録:
麦旅アドバイス
・スーパーホテル盛岡はまくらの選択が可能。