アントニオにできること

不定期連載 麦道をゆく 第30話

アントニオにできること

11/04/02
雑穀マイクロブルワリー
(冬の小川(茜レッドエール)、おがわポーター、
春の小川(ペールエール)、橙エール)、
栃木マイクロブルワリー
(日本の力、サンライズ、希望、ペールエール)
CLUB HOUSE
(Snow Blanche、Augest Beer、赤ワイン、Toshi's IPA)
【アントニオにできること】

4/2(土)
庵庵…鴨居〜八王子〜高麗川〜小川町…雑穀マイクロブルワリー
…小川町〜折原(駅前散策 笑)〜高麗川〜川越〜大宮〜浦和
〜宇都宮…栃木マイクロブルワリー…宇都宮〜赤羽〜新宿〜信濃町
…CLUB HOUSE…渋谷〜品川〜東神奈川〜中山…庵庵

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今、何ができるのか。何をすべきなのか。
食料持参で瓦礫撤去に赴くのが良いのだろうか。例えば現在の業務を投げ打ってでもすべきなのだろうか。それよりは、現在の業務に継続尽力し、会社を通しての日本経済への貢献による税収増という遠大なやり方での支援の方が適切なのではなかろうか。
不用意な化石燃料の浪費は10年以上しておらず、今更貢献には寄与しまい。自粛が蔓延している。宴会が減り、魚が売れなくなっているとも聞く。宴会が減り、間違いなく酒類消費も打撃を受けていることであろう。平日は法人税へ、休日は酒税と消費税へ。製造販売へ震災の影響があまりなかった蔵元やパブへ赴き、美味しい食事と美酒で平日の疲労を癒し、微力だが地ビール業界に貢献することが、アントニオにできることではないかと考えている。不謹慎の謗りを免れないかもしれないが、アントニオは自粛レスで行かせていただく。
震災の翌日週末は未だ電車が少しは動いており、18きっぷのシーズンともあり、業界への貢献時と考えていた。
しかし、出鼻を挫くは計画停電であった。
電気の不要なディーゼルカーも止まってしまった。
3月中は毎日JR東日本の復活開通計画情報に不満を覚えながら、比較的運転本数が確保できた路線を攻めていた。月末頃になると未開通路線にも明るい兆しが見えて来ており、今か今かとあの路線の再開通を心待ちにしていた次第である。
八高線ディーゼルカー区間の一部が、何故か4/1まで運行を見合わされてしまったのか疑問が続いていた。沿線の計画停電グループがばらばらなために、踏切に影響があり、特に自家発電施設を持たない路線については対応が難しいといった理由も耳にしていた。ただ、聞くところによると、燃料即ち軽油の調達の問題で不通が続いているとも噂されていた。3月中に高崎側が復旧し、次の週末はきっと大丈夫であろう、そう心待ちにしていた。
従来雑穀マイクロブルワリーに赴くのは、竹沢発官ノ倉山経由、もしくは武蔵嵐山からのジョギングなど、直行した試しが1度もなかったのである。ただ、加齢もあるのか、平日の業務の負荷も影響しているのか、今回ばかりは直行させていただくこととした。
11時過ぎ、開店直後に暖簾を潜る。店内棚にある、他ブルワリーの瓶コレクションのうちの数本が落ちたが割れずに済んだとか、殆ど物理的被害はなかったとのことであった。何時ものように、焼き立ての自家製パン、地場の野菜をお摘みとして美味しくいただきながら、今日も美酒に酔わせていただいた。期待が裏切られることはない。八高線再開通の好影響なのか、店内は次第に雑穀地ビールファンで席が埋まって行った。パンだけを目当てとしたお客さんも居る。お摘み全て自家製もしくは近隣産で占められている。「私たちにできること」をずっと昔から普通にやり続けている店である。最終盤、橙エールである。店主が近所の農家に分けて貰ったものを素材として利用したようである。柑橘系の優しい味であった。この空間で胃は若干冷えるものの、心は間違いなく暖められる。
さて、ただでさえ本数の少ない八高線は再開時にして一部運休と言われ、何処の時間帯を外されるのか冷や冷やものではあったが、予定時刻の列車は運転されて安心であった。時間調整のために余計に移動したりなどしたが、湘南新宿ラインからの直通列車が減らされていて宇都宮線電車の乗車率が上がっていたため、浦和折り返しで席確保ができたのは自画自賛するしかなかった。
次は、先々週に立ち寄ったばかりの栃木マイクロブルワリーである。放射線風評の影響で福島どころか栃木県を訪れる人が激減していると言う。アントニオの購買力は雀の涙ほどだろうが、飲みに行くしかない、と。実のところ、雑穀マイクロブルワリーでの4杯が未だ、否、当然残っており、杯が勢い良く、とは行かなかったのだが、店内のみの生3酒にプラスしてお任せ瓶1本をいただいた。こちらのブルワリーも小さく、横須賀さん1人での切り盛りであるが、小さいなりの機動力、機敏の良さ、小回りが良く効き、先々週分も含めると9酒類、シナモン入りダークラガー、ライトエール、しいたけ、ゆず、ペールエール、チェリー、温泉ビール、アンバーエールなどとバラエティも豊かである。
ここ昨今の挨拶言葉は、「今日は良い天気ですねぇ」から「昨日の地震は揺れましたねぇ」に変わりつつある中、地震談義も続く。そして、16:55頃、震度4の地震であった。瞬間的にこれは大きいと感じたが、横須賀氏曰く、「グラスハンガーにぶら下げたグラスが鳴ると震度4、鳴らないとそれ以下」とのことであった。実際に今回は鳴ったのである。揺れの弱い余韻が少々長く続いた。我々は既に麻痺していた。震度4に対して、「またか、、、」程度の感覚しかなくなっている。震度5未満はone of the earthquakeと感じるようになってしまった。確かにあまり物的被害がないからそんな暢気なことが言えるのだろう。
やがて栃木マイクロブルワリーを辞去して東京方面に向かった。快速ラビット号は先程の地震の影響で石橋以東で徐行運転を余儀なくされた。時間を追うに連れ、徐行区間が当初の予定より短縮されて行き、20~25分程度の遅れと見込まれていたものが最大9分に留められ、更には回復運転に頑張ったために大宮には3分遅れでの到着であった。しかし、事情により後から来た高崎線を先に通すとのことで、急いで乗り換えた。信濃町からは沿道の節電の影響で暗くて歩き難く、庵速歩行は憚られた。ただ、六本木に近づくに連れ、節電の2文字は徐々に忘れ去られて行った。
黒塗りの厳ついアメ車にガ体の良いグラサン男性もちらほら、少々怯みを覚えながらも目的地に辿り着く。アウグスビアクラブの姉妹店ともあれば、きっとアットホームなのであろう、果たして店内は小洒落であり、店長の黒島さんとは挨拶を交わしただけに留まらず、会話が続く。メニューの価格構成もビアクラブとほぼ同じ、此処CLUB HOUSE売りのスペアリブは、メニュー上は味が2種それぞれ2本ずつとなっていたが、「1本でも良いですよ」と言われ、ならば1種ずつ2本をいただくことにした。ソルトペッパー味とバーベキュー味。どちらも甲乙付け難い。骨にしゃぶりつきながら、お勧めのワインも頂きながら、少々ハイソな気分を堪能した。現在の業務内容から鑑みて、その機会が増えるとは思えないが、接待会場として利用するのも悪くはないと感じた。少々カジュアルかも知れないが、少人数の海外仕入先客には向くのでは、と思う。
今日もアントニオは飲んだ。微々たる力だが、酒税と消費税が被災地に届くことを願って止まない。
(完)

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付録:
麦旅アドバイス