300m級アルプス縦走

不定期連載 山道をゆく 第233話
不定期連載 麦道をゆく 既出
香貫山(庵選千名山510)、横山(庵選千名山511)、徳倉山(庵選千名山512)、
志下山(庵選千名山513)、小鷲頭山(庵選千名山514)、鷲頭山(庵選千名山515)、
大平山(庵選千名山516)、大嵐山(庵選千名山517)
鳴屋蔵沢
(レッドエール、大吟醸政子、頼朝(ポーター)、太郎左衛門(ペールエール)、
サワーウィート)
Cooper Ale
(Fuller's ESB、St. Feuillan Cuvee de Noel、箕面インペリアルスタウト、
Bear Republic Racer5)
【300m級アルプス縦走】

12/24(金)
庵庵…7・11鴨居駅〜東神奈川〜川崎〜沼津…沼津駅南口…沼津警察署前
…黒瀬橋…黒瀬…香貫山展望台…八重坂峠…横山…徳倉山…像の背
…志下坂峠…志下山…馬込峠…小鷲頭山…鷲頭山…多比口峠…大平山
…新城への分岐…大嵐山(日守山公園)//滑り台下…登山口…県道139号線
…原木…蔵屋鳴沢…伊豆長岡〜三島〜熱海〜新橋…ニュー新橋ビル
…Cooper Ale…新橋〜東神奈川〜鴨居…業務スーパー…庵庵

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年末に予期される業務電話対応に、遠征休暇も厳しそうであるため、24日に代休を利用し、18きっぷ、ムーンライトえちごを駆使して新潟探訪を計画していた。積雪が少々心配ではあったが、平野部では杞憂のようであった。地元のライブカメラ映像等をネットで確認しては安心し切っていた。ただ不安もあった。出発当日日中は軽井沢および栃木平野部を模索する予定であったが、24日以降天気予報は雪マークとなっていた。降り方次第ではハイキングをキャンセルすれば乗り切れるのではと高を括っていた。日を追うに連れ、文字通り暗雲が垂れ込んで来た。24日はお天気予報サイトにより「暴風雪」か「吹雪」となっている。新潟着は25日朝だから、25日がただの雪程度であれば、列車さえ動いてくれれば問題ないかと思っていた。だが、23日なって予報を確認すると、25日も暴風雪のままとなってしまった。急いで宿をキャンセルした。2日前でキャンセル料なし。ぎりぎりセーフだ。ただ、ムーンライトが運転されるのであれば、510円のうち手数料を320円も取られてしまうのだ。腑に落ちないが、吹雪を体現するよりはマシか。
上記キャンセルも23日22時頃のことであった。24日の上記行程と25、26日の新潟行脚を白紙に戻し、年明け2日に攻めようとしていた沼津アルプス縦走でも前倒ししてみるか。軽井沢は土曜に順延すると逆にバス便の選択肢が増えるのだ。登山地図を持ち合わせていなかったため、急いでネットで適当そうな資料を2,3印刷し、翌日に備えた。
3時台に起床した。朝刊も届いておらず、面を食らったまま、支度をして庵々を発つ。何処か、乗換え時間がある時にでも払い戻しすべしとムーンライトえちごの指定券を持参した。横浜線上り始発電車から一旦京浜東北線を北上し、静岡行き列車には満を持して座席確保に有利だろうと1つでも手前の駅から乗車すべく、川崎にて乗り換えた。平日ともあり、乗客の出入りは少なくはなかった。国府津駅1番線ホームから眺める太平洋。青い。その頃は波の白さには気がつかなかった。早川を過ぎ、再び太平洋の青さに見惚れてすっかり忘れかけていたが、PCを起動して急遽業務メールを打つ。丹那トンネルは長く、その後も数個のトンネル通過でメール送信は待ちに待たされたが、送信を確認してから沼津で下車した。
何時もは某醸造所に直行すべく直進の沼津駅南口交差点を今日は左折し、沼津警察署方面へと向かった。金曜午前8時前の市街地界隈は通勤の車で溢れていた。行き交う人々、自転車人も通勤通学者であろう。1人アントニオは逆方向を目指していた。甲羅本店の先に登山口を発見し、約2ヶ月振りの山人となった。前日は熱に浮かされ中1日のRoti's House行脚、しかも今日はランチビュッフェを襲撃し、カロリー摂取過剰となって体はやや重かった。ガイドブック通り、擦れ違う方々は古の若人であった。香貫山周辺にはトイレもあり、ルートも多く、市民の散歩コースとして活躍していた。駅から数十分で市街地を一望できるとは有難かろう。残念ながら今日の富士は雲隠れ中であった。
山頂付近もレーダー機建設中で、モノ本の山頂へはバリケードが阻んでおり、到達不可であった。近隣諸国間との情勢を鑑みると、国防のためのレーダー増備は喫緊の課題と理解できる。仕方ない。山頂より少々北側の展望台で我慢するも、満足な展望が得られて幸いであった。
沼津ゴルフ練習場の脇を掠めて続く横山へは、一旦八重坂付近で車道を横切る必要があった。横山登山口を過ぎてからは、大平山の寸前まで人を見かけることはなかった。そう、平日だったのだ。横山山頂手前にはロープ場もあり、少しは山らしくなってきた。
横山山頂には展望はなかったが、強風が木々を鳴らす轟音を耳にしていると、むしろ風に曝されない方がラッキーであろう。
横山からは稜線に沿って、車道へは下山することなく、鎖場で鎖の補助を借りながら、徳倉山に到達した。カヤト原である。見晴らしが良いイコール北風の餌食となってしまった。海岸が近いから確かに風も強いかもしれないが、伊豆の北部でさえこの風速である。これに雪も重なってしまっていると思われる新潟にはご愁傷様としか申し上げられなかった。現在も体感気温は摂氏一桁台前半なのではないかと訝る次第である。駿河湾は白波海原である。景観としては美しくはあるが、体感は出来れば回避したいシロモノであった。
幸いなことに、徳倉山より南側は頗る平坦な上に防風林が如くに稜線が守られており、北風の抵抗は遥かに低減された。

志下峠、馬込峠など、幾つかの分岐点を越え、小鷲頭山、そして鷲頭山へと到達した。標高392m、本日道中の最高地点である。因みにネットで検索すると、どいつもこいつも鷲「津」と記載している。地図を見直せ。鷲「頭」だ。恐らくその文字の如く、遠方から確認すると鷲の頭なのであろう。 読み仮名はワシヅでなくワシズだ。但し音としては共通に「zu」と発せられるため、文字を間違えられたのか憤懣やる方ない思いを日々続けてきた小鷲頭、鷲頭の両山であろう。5年前の社員旅行ハイクで寄った本成寺も読みはホンジョウジのため、「本城寺」と記したHPの検索ヒットは浅ましき数であった。心無い無数の漢字変換者の輩に代わって謝罪の言葉を述べておきたい。申し分けなかった。さぁ、覚えておけ、皆、鷲の頭だ。鷲のみなとではないのだ。港は近くはないのだが展望は良く、駿河湾は相変わらず青いが白波は落ち着かなかった。天気は良い。新潟は残念だが、沖つ、白波。
反射炉に降りて飲んだ後も、もう一箇所攻めたいのだが、、、既に脳裏は麦街道を驀進中であった。ウバメガシの美しき林相について、残念ながらニコンのデジカメを持参し忘れ、2台持参した携帯電話についても300m級とは言え山脈通過で電池は消耗しており撮影対象から外れてしまい、そしてその美しさは麦意には敵わず、瞬く間に多比峠を通過してしまった。多比口峠を過ぎて、今日初めてのハイカーに遭遇した。香貫山周辺で見かけた方々は、散策者であったのだ。大平山山頂に先に到着した年配の男女3名が喚いていた。 ちなみに大平と書いて「オオビラ」と濁る。もう少し静かにして頂きたかったが、老化防止には喋って脳を活性化するのが効果的と聞き、「行く道」と思って黙って見過ごすことにした。最終的に、「ここで昼飯にする!」であった。アントニオの昼食は未だお預けである。夢は麦野を駆け巡る。沼津アルプスのガイドブックは、徳倉山、鷲頭山、大平山の3山セットで完結しているものが殆どのようだが、大平山の先にも道はある。多比口峠に戻って多比に降りてバス、との手段もあるが、麦は奥アルプスを駆け巡るのだ。
大平山山頂で小休止の後、急坂を下った。道跡は確かだが利用率は低そうだ。指導標の数も激減した。山とは本来そんなものだろう。梯子場や、迷いそうな箇所も少なからずあり、麦への道としての歯応えは十分であった。
大嵐山山頂は日守山公園とも呼ばれ、プチ迷路と巨大滑り台があり、春時には界隈の園児、児童達のバトルフィールドと化すことは想像に難くはなかった。今日はクリスマスイブの昼間ともあって、観衆の先客が若干1名のみであった。この方も古の児童であった。滑り台が寂しそうにしていたため、下山の一手段として利用させていただいた。山行十数年目にして今回、日守山公園滑り台が初めて交通手段となった。 気球、パラグライダー、そしてタケコプターの手段としての登壇も時間の問題であろう。ガイドブックも追う記載が乏しい故にコースタイム不明のままで此処まで来たが、庵速で約5時間が経過しようとしており、膝や大腿筋にもそろそろ疲労が現れてきた。大嵐山下山路となれば、最終コーナーを回っているようなものだろう。麦重力で瞬く間に下界に降り、大嵐山登山口に到着したのは12:36であった。
沼津駅から5時間は辛うじて切られている。しかし、ゴールへは未だ陸路が立ちはだかっていた。沼津アルプスをやる人々の中で、奥アルプスまで貫くのは少数派だろうがが、その殆どがこの登山口から原木、即ち三島寄りの駅へ向かっている筈である。アントニオには、原木から修善寺方面へ2駅分の残務が待っていた。ムギチャーゼを早く配合しなくては!幸い、反射炉ビアの金曜は、昼休みなく営業が続くとのことで、未だ到着時刻の読めなかったアントニオの気休めとなった。伊豆の国市の田園地帯を進むも、此処でも未だ尚強風に苛まれるとは、、、麦意を削がんとする勢いの北風であった。反射炉をパスしてさっさと至近の駅から首都圏方面の麦の道へ進むことも十分検討に値した。更に、麦への最短経路として、交通量の多い道を選んでしまった。歩道もない。風圧で迫り、排ガスを置き去りにするダンプ達。志半ばで伊豆の国市の田んぼもしくは苺ビニールハウスに屍を曝す訳には行かない。1月前にも寄った反射炉ビアの味が忘れられず、北風にも太陽にも打ち勝つ気力がまた漲ってきた。嘗て頼朝が流されたと言う蛭ヶ小島にも目もくれず、文字通り最終コーナーを回った。
反射炉ビアの暖簾を潜れたのは13:40であった。昼飯まで、それはそれは長かった。客は、どうやらアントニオ1人のみである。数台の観光バスを収容可能な駐車スペースもあり、店内も100名程度の団体客にも対応できんと思しきキャパもあり、そこを貸切とは尋常ではなかった。当然、酒類選ばず飲み放題を選択し、一杯目は季節限定モノを所望した。テーブルクロス用紙に印刷されているレッドエールは出せず、サワーウィートになってしまうとのことだが、それもまた人生である。否、前回、サワーウィートは酸っぱくて一杯目としては敬遠したかったのだが、スタッフが折り返し持参して来たのは、白濁系ではなく赤褐色の液体であった。ひょっとして平日故に出し渋っていただけなのではないか?いや、全く悪い印象はない。いつ、何時、どんな麦茶の挑戦をも受けて立つのが、居酒屋のカウンターと言うリングに陣取るアントニオである。1月前と変わらず、飽きの来ない良質な味であった。沼津から、地上戦も経て6時間後の給水である。此処も富士の伏流水だろうか。地の利の都合で閑古鳥が鳴いているが、もう少し、地ビール業界に露出しても良いのでは、と感じた。今日も結局、ビール全液種堪能後、レッドエールをもう1度いただき、挙句、スタッフが「サワーウィートもいかがですか?」とワイングラスサイズのそれをもいただいてしまった。満足な、伊豆の国の食卓だった。
一時は、今日2軒目に栃木マイクロブルワリーを画策していたのだが、滞在時間も少なくなりそうなため、明日に持ち越しとすることとした。伊豆箱根鉄道、東海道線を乗り継いで、熱海で纏まった乗換え時間が出来たので、改札を一旦出てみた。すると、交通情報案内テロップに、能登号、あけぼの号に続き、ムーンライトえちごも大雪で運休と案内されていた!ラッキー!みどりの窓口に急行し、指定券の払い戻しを懇願した。窓口嬢は、購入時のクレジットカードを提出を求めてきた。クレカ提出後、程なくして処理は完結したようだ。現金での510円払い戻しではなく、クレカ精算上の払い戻し扱いとなるとのことだった。運休が決まる前の払い戻しでは320円もの手数料を取られてしまうのだ。運休決定は確かに寸前になってしまうのは仕方なかろうが、全額払い戻しが決定して非常に清清しい気分であった。これで心置きなく快速列車に乗ることができた。
一時は宇都宮までグリーン車を画策していたが、新橋止まりに変更して追加料金支払いを取り止めた。何となしに厚木のランビックがハウスビールを提供しているCooper Aleに赴きたくなったためである。確か18時開店と思っていたが、18時前に入店したにも拘らず、カウンターには4名の先客が居た。更に、ハウスビールは売り切れとなっていた。成る程、それならば、他店で飲めそうにないビールをと、海外産のを幾つか所望した。此処でしか飲めないと思うと、普段は見向きもしなかったインポートビールの価値も庵内で鰻登りとなった。日本の何処かに行けば飲める、とは言え、確かに北海道や九州沖縄産のものは希少価値があるが、それ以外のは「ふ〜ん」と一蹴できる程のバリューと感じた。そして、厚木はランビックの主将、望月氏のブログで絶賛されていたCooper Aleのフィッシュアンドチップスも所望した。個人的にも以前から美味と感じてはいたが、今日も舌鼓を打てて本望である。時間をかけて味わえば、それぞれ豊かなインポートビールの数々であった。季節限定醸造のCuvee de Noelのカラメルらしき香ばしさや、ぶっちぎり抜群苦苦IPAのRacer5など、インポートビールの崇高さに気づく。確かに輸送費分の嵩上げは否めないが、日本の地ビールにない刺激もある。インポートビールに栄光あれ。
(完)

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付録:
山旅・麦旅アドバイス
・Cooper Aleは17時から営業でした。。。