Hinoki Bom-Ba-Ye

不定期連載 山道をゆく 第175話
2005GW合宿第三弾
05/05/4
大栃山(山梨百名山、庵選千名山334)、神座山(庵選千名山335)、
釈迦ヶ岳(山梨百名山、庵選千名山336)、名所山(滝戸山側:庵選千名山337)、
滝戸山(山梨百名山、庵選千名山338)
【Hinoki Bom-Ba-Ye】

5/4(水)
庵庵−西谷のESSO−R16−八王子バイパス−八王子IC−初狩PA
−勝沼IC−県道34号−R137−檜峯神社下…檜峯神社…鳶巣峠
…大栃山…鳶巣峠…神座山…檜峯神社への下降点…釈迦ヶ岳
…下降点…林道神座山線…神社下−県道34号−県道305号−県道36号
−林道大窪鶯宿線−鶯宿峠下−鶯宿峠−名所山−滝戸山−峠−峠下
−林道−県道34号−ももの里温泉−R20−県道712号−県道705号
−R139−県道35号−県道517号−相模湖ピクニックランド−R412
−長竹−県道510号−県道511号−昭和橋−県道52号−県道507号−R16
−中原街道−マルエツ鴨居店−庵庵

−:車、…:歩き・走り

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黄金週間山岳ツアーも、無計画とは言いながらも普段から温存して来た幾多のプランを無理矢理繋げて今日に至った。ハイキング地図大手の昭文社「山と高原地図」は昨今の掲載地域整理でマイナーな山は切り捨てられる運命にあった。山梨百名山中でも切り捨てられている山は少なくはない。図書館のガイドブックやホームページ等を模索しているうちに、5月連休と言うゆとりのある週間にコースタイムの不明な山を幾つかピックアップしてみようと心に決めた。
確かに昨日の電車行もあったが、3時過ぎに庵庵を発って檜峯神社下に到着したのは5時を既に回って辺りは大分明るくなった頃である。あのゲートが関係車両以外立ち入り禁止を示すものかと不安になり、林道の入口に適当なスペースを見つけては駐車し、歩くことにした。後々気付いたが是は失敗だった。庵速で約50分程、舗装路を歩く必要があった。其の先にもきちんと立派な駐車スペースが存在したのである。いいさ、アントニオにとってはこの林道歩きも貴重な準備運動時間なのだ。今日は体調も万全だ、檜の花粉を存分吸わせて貰おうか。沿道を山吹や八重桜が彩り、長過ぎる準備運動を励ましてくれていた。やがてランサーエボリューションに追い抜かれる。ハテ、此処は飛ばし屋が好むルートなのだろうか。むむむ。
追い抜かれて十数分後、神社に漸く辿り着く。蘭烏帽至近に居るのは中年のハイカーだ。ヤラレタ。負けた。ただの走り屋なら彼等は既に我が記憶の蚊帳の外だろう。アントニオはどうせ休部さ。陸上では勝負はしないのさ。林道でヒノキボンバイェの合唱さ。後で庵速の怖さを思い知れ。アントニオの勝手に嗾けた神経戦によって、此方は先に大栃山を目指すことにした。きっと奴等は釈迦ヶ岳直登だろう。追い付いてやる。ふふふ。
実のところ、今日は合計4つの山梨百名山制覇を目論んでいた。鶯宿峠からあわよくば春日山にも思いを巡らせたかったのだが、此処の林道歩きで時間を取られ、更に大栃山近辺のコースタイムが此処まで来て不明だったため、後々の作戦変更を余儀なくされた。大栃山はガイドブックでも敬遠されがちだが登山道は良く踏まれており、檜峯神社からであれば大した時間を要しない。神社地図では鳶巣峠まで30分、其処から山頂迄60分と謳っている。汗だくになりながらも鳶巣峠迄は庵速で15分で辿り着き、其の後も困難な急登もなく、沿道のツツジの弱弱しさにシャッターを押すタイミングを逸したまま、神社から48分で山頂に到着した。
GW前期に赴いた葛の湯の帰路上で、路地物の葱と共に購入した高菜が大量に余り、間違いなく保存剤の類を含んでいないために早期消費が焦眉の急であった。昨晩中に飯を多めに炊いては握り、全部高菜で巻いた。地上で食えばタダの高菜結びだが、山頂ではご馳走である。ショパウマだ。嘗て鉄道戦国時代に天王寺からの夜行列車で降り立った新宮駅では、早朝故かめはり寿司しか買えず、成長期で食欲旺盛だった当時のアントニオは物足りなさを否めなかったが、此処最近、めはり寿司の名誉回復を計り、良好な関係を保っている。此処からの展望としては富士を筆頭に、節刀ヶ岳、十二ヶ岳、甲武信ヶ岳、茅ヶ岳、八ヶ岳、金峰山、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山、北岳、間ノ岳、塩見岳、荒川岳、毛無山、長者ヶ岳などが鮮やかである。心がflushされた気分である。
鳶巣峠に戻り、思案する。今日は4百名山制覇が目的だから、大栃山と釈迦ヶ岳は夫々をピストンさえすれば良いと思っていた。だが、このような機会でないと一生踏みそうもない山と檜が呼んでいた。一期一会か。アントニオは斯くして南へ登って行った。コースタイムを調べる術も殆どなく、どれだけ時間が掛かるかは知る由もない。確かに早朝出発とは言え擦れ違う者もない。ツツジについては矢張り合宿第一弾以上の強印象を拭える程の成果が見られず、アントニオの右人差し指も中々シャッターボタンに掛からないまま、淡々と御坂の山道を進んだ。
一応道標では峠から90分の道程らしいが頑張って50分強で稜線へ登りつめ、神のおわす神座山に到着した。其の山も数年夢見て来たのだが、遂に眼前にした御坂のピラミッドである。神のおわす山から、いざ、釈迦のおわす山へ行かん。
稜線ではアップダウンが幾重にも襲った。所々、美しい展望も覗く気持ちの良い稜線である。嗚呼、巡って来て正解であった。神社方面への分岐点を過ぎると漸く擦れ違うグループを確認した。どうしても皆、釈迦にしか興味を示さないのであろう。残念である。
岩を登り詰めれば、其れは夢にまで見た富士見場であった。富士の前におわす、釈迦2人。青空下に相応しい笑顔。ピラミッドの頂上はドンベエ峠からの登山道も混じり、多くのハイカーが集っていたが左程の喧騒ではなかった。悪沢岳、赤石岳、笊ヶ岳、乗鞍岳、八ヶ岳、奥秩父山系、大菩薩連嶺、三ツ峠、黒岳、十二ヶ岳など、三角錐の頂点は360°の眺望を惜しげもなく披露した。霞まなければ御巣鷹山も見えている筈だ。。。釈迦の背後に富士と言うことは、釈迦は御巣鷹方向を見詰めているとは考え過ぎか。青空にただただ、遇の音も出ない。反論の余地のない程、御坂上空は真青だった。
檜峯神社への帰路には、初心者向きではないとの看板を信用し、其の初心者向けではない道を下る。目の前に広がるは南アルプス。歩き難くて山道らしい。粗く、迷い易く、山道らしい。釈迦参りにはこのような刺激が必要だ。
帰路も其のまま檜森林浴を縦にし、林道を下るしかなかった。戦いのフィナーレもヒノキボンバイェである。ヤマブキボンバイェにヤエザクラボンバイェ。短調な林道下りの最中、目を皿のようにしながらガイドブックを貪り、次の山へのイメージトレーニングを重ねた。林道入口に11時頃、すると鶯宿峠は12時近くだろうか。今から残り2山は時程的に厳しく、敢行すれば山ノ神の天誅を受けることであろう。うむ。林道歩きも含めて既に庵速で5時間半も歩いた後だから次は短い方で我慢するか。春日山は次回、芦川村営バスを利用して周回コースで楽しむべきだ、との結論に至り、再び休部号を走らせる。
鳥坂峠を越えて芦川村に入り、ゆっくりと林道入口を探す。解り易い看板もあり、舗装済でラッキーだ。小さな落石に注意しながら恐る恐る車を進め、やがて鶯宿峠を示す看板を発見、道路の反対側には程良い駐車スペースが存在したため、迷わず降りた。時刻は間も無く正午を迎えようとしていた。
ものの数分登ると、ガイドブックにも大きく謳われたナンジャモンジャの巨木が聳えた峠に到着した。ヒノキに似て非なり、コノテガシワに似て非なり、樹種不明でナンジャモンジャと呼ばれていたのだが、1928年に牧野富太郎博士が「リョウメンヒノキ」と命名したようである。結局牧野氏もヒノキボンバイェに甘んじたのだ。
峠から少々歩くと林道名所山線にぶつかった。林道を西へとぼとぼと進むと先程休部号で登った林道大窪鶯宿線と合流する地点で甲府盆地方面に大展望が開けていた。新鶯宿峠と呼ぶべきか、ベンチすら並んでいる。此処も夏の日差しで、避暑を求めに西の林へ潜ることにした。
急登もなく特に迷い易い箇所も少ない。ミズナラ林が日差しからのダメージをフィルターしてくれている。もっとハイカーに恵まれて然るべきではないかと思ったが、確かに踏み跡が明瞭だから、昼近くに態々歩いている者が居ないだけなのかも知れない。だが歩くに連れて内臓系統に違和感を覚え、うむ、是は今日は滝戸山でジ・エンドだな、明日も天気は良さそうだが涙を呑んで休場するしかないな、そう思いながら、名所山頂を通過する。名所山だが、鶯宿峠から東側、春日山へ目指す途中にも同名の山があるが、名前負けしては居ないだろうか。
やがて滝戸山に到着。成る程、山梨の森百選に選ばれたミズナラ林に囲まれた山頂である。木漏れ日は優しい。でも優しいだけでは駄目なのか。。。
新鶯宿峠に戻ると数組のジモティが展望を見下ろしながら夫々の昼食を楽しんでいた。座る場所が全て埋まっていたので鶯宿峠まで戻り、ナンジャモンジャの下でファイナル高菜巻きを貪った。高菜巻き、美味しかったぜ。
車に戻り、さて、どちらに降りるかと迷う。芦川村側に降りて富士五湖方面に温泉を探すか。今日は出来れば富士五湖側には寄りたくはない。然し、林道大窪鶯宿線の北側は未舗装路が続いている。ううむ。悩んだ挙句、難路を我慢して北へ下ることに決定した。土埃を舞い上げながら数十分の格闘の末、一宮市街地へ至った。
前回此処に寄ろうとしたのも、矢張りガイドブックの行間を歩く山行きの時だった。さすがに一昨年前の暮れ、大晦日前日で休業だったが、今日は運良く営業中であった。左程広くはないが小さいながらもサウナもあり、露天は2槽にプラスして打たせ湯まで揃っている。バックは葡萄畑だ。長閑だ。うぬ。心休まる空間だ。風呂上りに何か摘もうと思ったが、特製カレーが450円の安さなのでつい手を出してしまう。多分、何の変哲もないカレーなのだろうが懐かしい味がした。
さて県道34号線からR20に合流するや、小仏トンネルで十数キロの渋滞が既に始まっているとの脅しである。一か八か。下道に賭けるか。勝沼ICに目も呉れず、アントニオは勝沼バイパスの終点を目指した。R20は問題なく流れていた。満を持して初狩から裏道へ進むか。以前は数百メートル程1車線道路で屡ナビを頼ったサンデードライバーが立ち往生して目も当てられない様を何度も見たが、近年道路事情が変わり、R20の交差点には信号と看板も装備され、交差点から其のまま片側1車線の広い道となっており県道712号は裏道の利便性を増していた。神奈川県に戻ると交通量は徐々に増えた。県道517号は他車を追いつ追われつ、相模湖ピクニックランドで案の定大渋滞に巻き込まれる。ナビさえあれば更に小道を探せたのだが、今日は大人しく埋もれるとするか。三ヶ木を過ぎてから色々と渋滞回避を模索したが何処も似たようなものだった。ラジオに拠れば、高速道の上り線は数十キロのオーダーで何処も戦場である。明日がピークだろうと高を括っていたが嵌ってしまったようだ。思えば勝沼で高速の渋滞情報に怯むべきではなかったのかも知れぬ。帰路は疲れた。マルエツ四季の森Foleo店にはめぼしい夜食惣菜はなかった。店舗面積が広いと品数豊富だが、目的の物を探すのに骨が折れる。矢張り疲れていた。品数の割りに欲しい物がなかったため、愛用している鴨居店に寄ることにした。同じマルエツながら大きさが違う。だが、遠い大型店より近い小型店である。あった。あった。残り物には福がある。さっさと帰って麦茶タイムだ。

(完)

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付録:
山旅アドバイス
・檜峯神社付近まで車可。駐車場もあり。
・林道大窪鶯宿線は芦川村側は舗装されてるが、鶯宿峠以北は非舗装区間が長い。
・ももの里温泉は看板が少ないので発見し難いかも。