月の輪さん

不定期連載 山道をゆく 第252話
12/9/7~
羅漢寺山(山梨百名山、庵選千名山560)、 大蔵経寺山(山梨百名山、庵選千名山561)
【月の輪さん】

9/7(金)
庵庵…鴨居〜新横浜…ファミリーマート…某社前=環状2号
=新桜ヶ丘IC=保土ヶ谷バイパス=横浜町田IC=東名高速
=中井PA=御殿場IC=R138=須走IC=東部富士五湖道路
=中央道=大月JCT=上野原IC−県道35号線(四日市場上野原線)
=R20(甲州街道)=県道521号線(上野原八王子線)=上野原CC
=上野原IC=甲府昭和IC=県道5号線(甲府南アルプス線)
=社会保険事務所入口=県道6号線(甲府韮崎線)=朝日5丁目
=県道104号線(天神平甲府線)=千代田小学校=県道7号線(甲府昇仙峡線)
=夫婦木神社登山口…林道…富士山遥拝所…うぐいす谷…八雲神社
…福仙人神社…パノラマ台…展望台…羅漢寺山…福仙人食堂
…パノラマ台駅〃仙娥滝駅…仙娥滝…駅=県道7号線=県道104号線
=朝日5丁目=県道6号線(山の手通り)=十郎橋西=R140(雁坂みち)
=彩甲斐橋北詰=県道208号線(下神内石和温泉停車場線)=小松十字路
=県道312号線(一宮山梨線)=山梨温泉病院前=ホテル春日居
…Huga春日居…ホテル

9/8(土)
ホテル…居酒屋ひょうたん島…県道208号線…コーポS
…踏切…松本…R140…山神宮入口…山神宮社…イノシシ防護フェンス
…積石塚古墳群…大蔵経寺山…展望台…林道…イノシシ防護フェンス
…島田富重郎の墓…ENEOS…R140…松本…踏切…県道208号線
…ホテル=県道312号線=石和温泉郷東入口=R411=県道312号線
=坪井=R20=里の駅=県道211号線(山梨笛吹線)=四の橋西詰
=白バイ訓練所前=R137=一宮御坂IC=中央道=大月JCT
=東部富士五湖道路=須走IC=R138=御殿場IC=足柄EXPASA
=横浜町田IC=保土ヶ谷バイパス=新桜ヶ丘IC=環状2号線
=岸根=某社前…新横浜駅〜鴨居(駅蕎麦)…庵庵

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またこの季節がやって来た。振られるなら企画しないでもない、と社員旅行のハイキンググループ引率である。当然チャレンジをしなければならない。2時間半。何となしに社員旅行ハイキングツアーの所要時間の目安としていた。宿に戻らねばならない。今回は下山後の移動を熟慮する必要があった。こんな時でなければプランを、と我山引水する。我が決選投票は入笠山と羅漢寺山である。雨天時のプランも考え易いのが後者か。個人的には前者がベターなのだが、そうは旅行代理店が卸さなかった。こんなろー。しかも、電車プランさえ却下され、ゴルフ組と同じバスでの移動となってしまった。6時近くに会社集合とはあまり嬉しくはない。電車ならば7時台の横浜線で間に合うと言うのに。まぁ、我が儘ばかりもナンだ。天に運を任せるべきか。
前日くらいまで旅行委員とバトルを繰り返し、落としドコロで天命を待つことにした。前々日には雨模様が予報されていたが前日になって回復が見込めるようになった。行くなら登るべし!
4時台に起床、そう、2日目も帰宅翌日もそうだっが、支度をして家を出る。1泊だ、荷物は軽い。夕方には雨かも知れないが、我々は太陽と会話ができる筈だ。6時15分頃には某社前を出発した1号車は、ここ数年の定番化しつつある保土ヶ谷バイパスから東名高速へと進んだ。大月経由で上野原CCとは、渋滞回避としては理解できるが、偉く遠回りなんではなかろうか。。。そこまでするなら入笠山まで連れて行ってくれても悪くないだろうに、、、一応順調にバスは進んだと思うのだが、元々の代理店の計画が甘かったため、ゴルフ場へは9時頃の到着となった。
大量のゴルファーを降ろした大型バス車内は、一気に乗客がたったの6人に減って閑散となった。再度上野原ICから高速に乗り、甲府昭和ICで降り、市街地を進む。バス通りと思っていたが狭路が続いた。大型車両が対向して来ると擦れ違いに苦しむことしばしばであった。7年前に路線バスで赴いた太刀岡山、黒富士、曲岳行脚時とはルートが全く違うのだろう、沿線風景に心当たりが全くない。昇仙峡ロープウェー乗り場界隈のひといきれをパスし、バスは夫婦木神社前まで進んだ。親切なハイカーのHPにあった登山口写真と同じ風景だ。停車場所の都合で、ひょっとすると神社参詣者向け大型バス用駐車場なのではと思われる空間に停めて貰い、バスを降りた。
10:45、夫婦木神社前登山口を出発。爽やか。好天だ。正義はカツ。林道の傾斜は緩く、初心者向けで良かった。沿道の私有地に「売地」看板もあった。嗚呼、こんな所に私有地か、某社で購入したらどうだろう、研修所くらいにはできないか、しかし温泉は近場になさそうだから集客は厳しいか。そう言えば、あの島も私有地だったんだよなぁ、とふと思ったり。元々ロープウェー沿いにも道があるのだが、難易度が高いためにパスをした。一方、此方の林道を掲載した地図を終ぞや入手できず、何かあったら、と少しは心配していたが、全くの杞憂であった。余りにも容易に富士見逍遥所に着いてしまった。富士は残念ながら雲隠れであったが、大展望である。道志の山塊は集っていた。うぐいす谷も指呼の間であった。

元々の計画がグループ行動歩行速度を余り勘案しておらずに甘く、パノラマ台売店付近から山頂まで往復には、バス到着時刻を考慮すると少々時間が足りないように感じ、食堂で早寛ぐ人と、山頂へ行く人と好きに動いて良く、13時のロープウェーに乗れるようにと一旦解散指令を出した。が、皆、此処まで来て山頂に行かずば自慢にもならないとのことで、結局6人全員で羅漢寺山頂を目指すことになった。下山時刻が差し迫っているとなると各人の尻に火が付いたような勢いで忽ち皆山頂に、12時過ぎには到着した。

為せば成る。球体状の山頂滞在は予告通りスリリングであった。大展望下の甲府市街地を茅ヶ岳や金峰、甲武信、大菩薩や道志山塊に荒川ダムの彩に飽きることはなかった。皆山頂に到達できてほっとした。昼飯タイムがかなり厳しいと思ったが、皆勢いを保持したまま食堂に戻り、一番打者が時間がかからないとの勧めでそばを注文したのだが、後続の5人は皆ほうとうタイムであった。そして、ほうとうの方が時間がかかると言われながら、そばより早く出来てしまったのである。そばを注文した隊員が苦虫を噛み潰して、噛み殺していたのは想像に難くはないが、その氏の献身故に残りの隊員が皆ほうとうに有りつけ、13時丁度のロープウェーに間に合ったのは感謝に値すべきだろう。短時間ではあったが、ビール日和に一杯も楽しめ、達成感も一入である。

食事直前に、予め予定より遅れる旨を旅行代理店の方に伝えたところ、バスの方も遅れるのでゆっくり下ってくれ、とのことである。ならば、仙娥の滝見物に行こうではないか!ロープウェー駅から徒歩7分である。平日とは言え、平日だからか、館顧客が犇めき、他人の分も強引に吸収してしまっている方もいるのでは、と思いかねない程、マイナスイオンパワーの有難味が感じられなかった。空いている所に戻りたい気持ち止まず、そんな最中に携帯が鳴った。3号車のガイドさんから呼び出し電話であった。
ロープウェー乗り場に戻り、バスに乗り、宿へと向かう。隊員は皆、バスの中で夫々の舟漕ぎに勤しんでいた。アントニオは未来のツアコン業のため、沿道の風景を楽しみながら、冷蔵庫のビールをちびっていた。帰路途上からの甲府盆地俯瞰は予期せぬ展開だった。確かに、ロープウェー乗り場付近の標高は700mくらいにも達していたようである。小一時間程で春日居の宿に辿り着いた。
14時台の宿到着でガラガラの温泉に浸かれた。天気予報通り、雨が降り出して来た。それも、滝のように。露天風呂は天然のスコールに見舞われていた。アクティビティによっては雨難に遭ったようだが、6時出発は32文の得であった。宿付近は大雨ながら、遠景の富士方面は晴れている。昨今の天候を鑑みると、山登りは午後一番程度には終わらせるのが鉄則と言えよう。また、ホテルの北側に面する部屋からは、周囲に同等程度の高層建造物がないため、大菩薩から甲武信、兜に明日登山予定の大蔵経寺などの山並みが一望できたのが、山屋アントニオ向けの有難い持て成しであった。
夜の宴会も華々しかった。通例の、年季の入った給士さんでなく、「スタッフ」の表現に相応しい若い方が多いのも嬉しい。若いお姉さんに「ワインはいかがですか?」とは何とも小気味良い。宴会の締め指名されてしまい、久々に1、2、3、ダーッ!の音頭を取らせていただいた。某社、ボンバイェ!
その後、再度温泉に浸かり、飲み会グループに合流、ただ、二言は無いと誓い、と言っても誰も覚えていないだろうが、適当にワインにけりをつけて寝床へと戻った。
今日も4時起きである。支度をし、宿を発つ。昨晩のうちに宿フロントには4時過ぎに出掛けると告げておいたので支障はなかった。4:32、ホテルを発つ。
月夜の春日居町界隈を歩く。いやいや、今日も良い天気なのだろう。石和温泉駅手前で踏切を渡り、甲州街道沿いを進む。こちらも親切なHPの表記を頼りに、敢えて登山口看板のある交差点をパスして次の角を右折した。あれれ。路地は斯くも複雑か。徐々に天空は明るみを増した。小さな交差点が多いが、アントニオの動物的勘を頼りに山の方向へと進んだ。やがてイノシシ防御柵が見つかり、ハテ、下山ルートの方に来てしまったか?と訝りながらも上を目指す。案の定、アンの30定と言わんばかりに蜘蛛の巣が蔓延る道であった。昨日、羅漢寺登山口で拾った1m程度の木枝を剣道の竹刀が如く上下に振りながら蜘蛛の巣を破りつつ進んではいたが、それでも巣の洗礼を受けたのは10回には収まらなかった。予想以上に傾斜もあり、二日酔いには少々堪える山行となった。鬱蒼として蒸す。額からは汗が大量に吹き出すも、此処で歩を止めては役者ではない。進めアントニオ。有言実行だ。メンツが揃えば旅行委員会側から補助金が出たのだろうが、辛くも希望は通らなかった。ただ、補助金受領未遂の廉で企画を止めるのもみすぼらしい。単独行は何時ものことだ。アナウンスした以上はやり切らねばならない。傾斜もありながら朝から蒸し暑く、蜘蛛の巣も繁茂していれば単独で良かったのかなとも感じた。
展望のない道ひた進んだまま、少々広がりのある空間に至り、山頂に到達したのは6時過ぎだった。そして、それは、廃林道方面へ下山を始めて数分、アントニオ山岳史15年で初めての遭遇であった。アントニオの前方30mくらいだろうか。
ツキノワグマが通った。
イノシシ防御フェンスがあるくらいだから鼻先の尖った哺乳類が登場するなら理解はし易かったのだが、どう見ても体が全体的に黒く、鼻先も想定より丸いのだ。熊さんにしか見えなかった。。。体調150cmで100kgくらいの子熊だろうか。近くに親御さんもいらっしゃるのか、、、居るのだろう、、、写真撮っている場合ではないな、、、鈴は2個あるから、ジャラジャラ鳴らそう。済まんね、人間様が通るんだぞぃ、追って来ないでね。6時過ぎだから、熊さんwokring hoursは終わりでないんかい?ってごめんよ、、、ただ、あの動きから察するに、「何だよ、人間のくせにもう登って来やがって。やれやれ」と、アントニオを忌避するように歩き去った様に見えたのだが。それが登山歴15年の動物的感覚と言うやつだ。振り返りもせず、真っ直ぐに先へと進んだ。不思議とバトルは発生しないと感じていたし、恐怖心も殆どなかった。アントニオも山に生きる一員である。住み分けだ。
廃林道まで降りると時折南面の視界が開け、道志や南アの山並みカーテンが甲府市街地に朝の挨拶をしていた。熊さんだったような、先程のは、確か。長居は無用だ。恐怖心はほぼ去ったと言いながらも、エネルギーは大量に消耗してしまった感じだ。廃林道は草茫々で非常に歩き難かった。車が通らなくなって10年は経過しているのではなかろうか。ここで襲われたら危ないぞ。
やがて、再びイノシシ防御柵を越えた。あ、こちらの柵が、元々絵地図に掲載されていたものか。これで熊さんとは本当にお別れか、、、(笑)
大蔵経寺そのものか、或いは善行寺のだろうか、墓地地帯から甲州街道への交差点へ戻った。今日は低山ながら充実感が漲っていた。宿に戻ったのは7:48である。聞くところによるとアントニオ出発時点で未だ酣な宴会部屋もあったらしい。朝風呂を浴びてから、朝食を済ませた。あれ程警告のあった北海道の山々では遭遇せず、山梨の市街地からすぐの山で遭ってしまうとは。多分、アントニオは運が良いのだろう。ツイているのだ。ただ、もう少々音量の大き目の鈴を今後に備えて準備しておくべきかもしれない。
熊さん、また会おう。と言ってしまって良いのか。次回は写真くらい撮らせてくれ。
実りある社員旅行であった。アントニオ登山史に新たな1ページが加わった。
(完)

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付録:

山旅アドバイス
・昇仙峡ロープウェーインターネット割引は往復の場合のみ。
・石和温泉側からの大蔵経寺山はどちらのルートも蜘蛛の巣多し。
・山神宮入口から上り始めると路地で迷う可能性あり。