一戦終えて

不定期連載 山道をゆく 第155話
不定期連載 掃道をゆく 第2話
04/04/10 浅間嶺(関東百名山、庵選千名山279)

【一戦終えて】

4/10(土)
庵庵…中山〜八王子〜拝島…7-11…拝島〜武蔵五日市−払沢の滝入口
…払沢の滝…時坂峠…浅間嶺…人里峠…一本松…908m峰…浅間尾根登山口
…数馬の湯−武蔵五日市〜拝島〜立川…一砂…立川〜八王子〜中山…庵庵

−:タクシー/車、〜:電車、…:歩き

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フルマラソン、六甲大縦走を終え、漸く一息つける山に戻る。2ヶ月前から某社の親睦会のバックアップを目論んで低山企画を模索していたがキャパシティの都合で採用が見送られる。だが、金を目当てに登ってはいけない。「サクラ」以外で5人程応募者が見つかったものの、結局寸前で3人が脱落し、総勢5人の融通の利き易い人数に落ち着いた。
当初のアナウンスとは異なるコースに変更する。メンツの顔振りを考慮すれば若干コースを長めにしても耐え得るだろうと、既に踏破して勝手の知った高水三山をパスし、アントニオ奥多摩作戦最後の牙城と思しき浅間嶺に目を向けた。途中までバス便ともなると遅刻者の扱いが大変だ。バスは数時間に1本程度しか走っていない。実際、予想していた者とは別の者が早くも遅刻の連絡をして来た。間に合わないので車で来るとのことである。超初心者向けに小岩までバスに乗ってのルートが最終公式ルートのアナウンスであったが、野郎5人に落ち着いたので折角なので払沢の滝から登り始めたいと考えていた矢先であった。氏には払沢の滝へ先回りをして貰うように指示を出しておく。五日市線7:52着の便は挙って老々男女の波を8:01発小岩行きのバスへ押し込んだ。駅に4人であるから、タクるのも其れ程高額にはならないだろうと、バスを尻目に出発した。我々が払沢の滝に近付くに連れ、また自家用車の氏から連絡が届く。間に合いそうも無い。そうしたら、、、上川乗に回ってくれ、駐車スペースの存在は微妙だが我々の登るルートよりコースタイムにして1時間少々短いし、帰路、温泉からバス1本で車を拾えに戻れるのだ。遅刻した氏は動揺千万だろうが、奥多摩を知る者は全く意に掛けはしなかった。
さて、払沢の滝であるが、立派な観光地で桜は綺麗だが落ちているゴミも尋常な数ではなかった。昨年の蕨山に続き、今回もトング持参でゴミ拾いを敢行しようと意気込むものの、タバコの吸殻の多さには早くも諦念を覚えてしまう。滝に打たれて修行に勤しむには邪念が多過ぎた。ポカポカ陽気に長閑な片田舎を逍遥する。自分の地に戻って来た気分だ。枝垂桜も麗しい。先週も存分山を嗜んだが、また今日も自分の速度を堪能できるレールが何処までも続く。残念ながらゴミはゼロにはならない。時坂峠で舗装された林道と合流し、暫し進むと茶屋が居座っていた。少々進むと北側に展望が拓けている。おぉ、雲取に鷹巣、三頭、御前、大岳、、、青々として逞しい。山はこうでなくてはいけない。美味しい空気を堪能し、暫し小休止を貪る。コースタイムが少々嵩んだようには思うが緩やかでとても歩き易い。浅間嶺、低山と見下していたが、確かに歯応えはそんなにないのだが、リーズナブルである。幹事はパーティーを先導する責務があったのかも知れないが、何時ものように標高が上がるに連れ、歩速が加速度的に上昇し、其れでもゴミを拾いながら瞬く間に頂上へと到達した。

山桜であろうか、蕾も覚束ない。幸い、林間からは素晴らしい見晴らしだ。北側も然ることながら、道志山塊などの南側の展望も著しく、気分も上ずってしまう。本能氏が毎度の如く用意周到に発泡麦茶を仕込んできており、上川乗氏を待って乾杯とすることとなった。上川乗氏の責任は重大である。氏が力を抜く度、麦茶は温くなってしまうのだ。急げ、死ぬ気で登って来い〜〜〜。催促の電話をする。山中で電話でやり取りをするというのも滑稽だが、納期はきっちり守って欲しい。やがて氏は汗だくになりながらも我々の目の前に姿を現した。山頂現地集合。大胆なハイキングツアーである。暫しベンチを占拠し、飲めや食えやの喧騒で山桜の蕾も黙ってしまう。ベンチで寛いで暫くしてから気が付いたのだが、此処からの富士も雄大であった。簡単な割には得るものが大きい、浅間嶺であった。
食後、更に西へ進む。途中、杉幹のマーカーを頼りにずんずんと辺鄙なルートに迷い込んでしまった。多分行けなくはないが、先週の鵯越の傷が癒えていないアントニオとしては若干の怯みを覚えつつあった。本能氏が道が違うのではないかとのたまう。あの、R16から中央道に乗っていきなり料金所で料金を払いそうになった氏が、私より先に迷子の懸念を指摘したのである。山頂まで戻れば何か目印でも、、、と思った矢先、正規ルートの縁で休むハイカーを発見し、事無きを得た。人里分岐で修行を終えようとする者もあり、下山して車を取りに行く者とまた暫しの別れである。我々は未だ杉や椹の木々に囲まれながら、奥多摩を慈しむ。嗚呼、またプルタブを見つけてしまった。此処のもアメリカンサイズ缶の其れである。プルタブ収集の道は一日にしてならずじゃ。
浅間尾根登山口の急な下りに慌てるものの、桜並木に気を紛らわせながら歩き、桧原街道に合流してやがて温泉に到着。上川乗組より若干早めの到着であったか。遥か昔にこの近辺で温泉に浸かったが、温泉センターではなかった筈だ。センターの名前にやや想像を巡らし過ぎたか、思ったよりは浴槽一つ一つは大きくはなかったが、至近に温泉が散在するので是で十分な収容力なのであろう。一汗流した後、食堂にて数馬サラダを肴にビールを嗜んでいると続々と残りの面々も風呂から上がって水分吸収のために品定め、挙ってで野菜ジュースをを注文する。然し、地場の物でなく缶詰物であることを店員から聞き出し、憤慨する面々。だから紛う事無くビールが正しい選択なのだ。
結局遅刻者の自家用車が帰路のバス便の不都合さを補って余りあった。武蔵五日市駅で一次解散し、駅構内のコンビニで待ち時間を更なる土産捜索に費やした。立川駅付近の居酒屋に残った面子は、反省に余念がなく、一部反省会は横浜線内でも続行された。反省し過ぎで中々自宅の最寄り駅に辿り着けない。奥多摩は近くて遠い。

(完)

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付録:

山旅アドバイス
・数馬の湯の土産売り場は、エントランスに向かって右側の陳列品が地場物。
左側については不明。
・数馬方面へのバス便は特に少ない。逆コースで、払沢の滝で流しのタクシーを
拾えるかも不明。往路、帰路ともバス時刻は要確認。