麦3選

不定期連載 山道をゆく 第199話
08/01/02~
グルメ街道を行く 宇佐美地ビール農園 「ピア」(地ビール/既出)、 伊豆高原ビール(地ビール/既出)、酪農王国 (地ビール)
【麦3選】

1/2(水)
庵庵…鴨居駅〜新横浜駅〜(こだま533号)〜小田原駅〜宇佐美駅
…阿原田コース…巣雲山…阿原田コース…「ピア」…宇佐美駅
…終末処理場トイレ…マリンタウン…サンライフ伊東
…伊豆高原ビール マリンタウン店…グルメシティ伊東店…SL伊東

1/3(木)
SL伊東…伊東駅〜来宮駅−相ノ原団地…鷹ノ巣トンネル
…酪農王国 ティールーム花の温室…鷹ノ巣トンネル
…相ノ原団地−来宮駅〜熱海駅〜小田原駅〜海老名駅
〜二俣川駅〜西谷駅…庵庵

…:歩き、〜:電車、−:バス


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
前回の行脚で伊豆高原ビールに立ち寄り、ポイントカード制が施行されて季節の1000円クーポン制度が廃止されてしまったのかと訝った数日後に、また季節の便りが届いた。うぬ。もう少し早ければ・・・
正月休みにでもまた遠征するか?宇佐美から歩いて上れる巣雲山も良いな。宇佐美地ビールもあるし。帰りは新規開拓、函南のオラッチェも攻めるか。昭文社のHP地図では、バス路線であることを示す点線が記された熱函道路だが、伊豆箱根バスや東海バスのHPを何度も調査したが該当する路線は見当たらなかった。うむ。だが、一番目的地に近くを走ると思しきバスの時刻表の信憑性を頼りに、計画した。さて、伊豆への往路は奮発して特急にでも乗るか。でも、小田原までなら踊り子号よりこだまの方が安くて速いぞ。駅伝渋滞も懸念されるし、ビール飲むには車は乗れぬ。唯一の心配事は、オラッチェまでバス停からの道程だ。
元旦は、早朝ジョギング、鴨池大橋にて日の出と富士の撮影、その後実家方面に戻り墓参もし、賀状返しを書いて住所録を更新、前回行脚の奇行文を認めるなど、平凡に過ごした。
当日朝は、大晦日に作って未だ余っていたクリームシチューを完食し、7時半に庵庵を出た。西谷から相鉄線、小田急線を乗り継ぐパターンなら1時間は早く出発しなければならなかった筈だ。この時節、日の出前後で一日のうち寒さが最も厳しい時間帯の筈だ。横浜線電車も嘘の様に着席できた。3が日だけある。今日も西行きだが、小田原まで若干16分間しかない。シウマイ弁当は卒業したとは言え、他の弁当でも余裕を持って食べる時間はない。まして、缶ビールをここで口にするのは早計だ。結局昨日ダイエーにて購入したおにぎりを啄んだだけである。車窓の富士も美しい。だが、この富士如きで満足してしまってはいけない。お楽しみはこれからだ!!!
小田原からは、185系車両の各駅停車にお世話になった。これも計画通りだが、185系と言えば、踊り子号、はまかいじ号に利用されているアレである。料金は若干異なるが、スーパービュー踊り子号と比較すると、同じ特急車両と呼ぶには力不足である。各駅停車運用も激減したが、伊東行きは健在だ。平日、休日に依って編成長が変わる。10両のままの時もあれば、12両で後ろ5両が熱海で切り離しの場合もある。今日は後者のパターンだ。3割程度の着席具合か。残念ながら車内販売ワゴンは来なかった。
9時43分、宇佐美に到着。この駅を利用するのも3度目か。迷う事無く駅を発った。事前に印刷した地図を読みながら進む。標高が上がるに連れ、道標もちらほらと目に入り、それも古過ぎることはなく、安心して上れそうであった。ただ、昨日のランニングから右膝の故障を覚えてしまったのが気掛かりである。元旦早々20km走行を目論んでいたのだが、庵庵から僅か5km程度か、西谷からR16沿いに環状2号線に合流するか否かの地点で故障し、たじろいだ。以前に転んだとか、ヘマをした、捻ったなど、心当たりが全くないのだ。心当たりがない、、、疲労か。疲労がないとは1mmたりとも否定はできまい。一介のスポーツマンとして、膝は使い過ぎていたかも知れぬ。3月恒例の荒川市民マラソンの申し込み通知の今年分が未だ手元に届かないのも運命か。今年はダメか。愈々選手生命が尽きたか。膝に負担がかかるとNGだ。選手生命と言っても、高々フルマラソンだけだろう。アントニオが引退するだけなら新聞沙汰にもなり得まい。ただ、気違いアントニオがやれるならと思って走り始めてしまった諸氏に申し訳が立たぬ。然し、疲労が原因なら休ませねばなるまい。。。この一大マラソンシーズンなのに、、、と言う事で、下りは厳しいが、上りならマダマダ常人には負けないと、何時もの勢いで宇佐美の坂を闊歩した。彼是10年以上前に刊行されたガイドブックには別荘地横から登山道とあったが、今や別荘跡地横からの登山道となっていた。自然の残された大地、宇佐美。体力のない人間は去り、無用な残骸のみが残った。諸行無常なり。道が突然下りになると障害者が如くたじろぐアントニオが居た。それでも伊豆スカイライン沿いまでコースタイムを30分短縮した。


伊豆スカイライン沿いの遊歩道にもアップダウンが多くて辟易とさせられたが、11時10分、今年初の山、巣雲山山頂に到着した。稲の籾殻をスクモと呼び、それが積もって山となったと伝えられている。あのガイドブックには西側を走る伊豆スカイラインが艶消しだと書かれていたが、所がどっこい、それは何処だ?先程まで車の爆音が姦しかったのだが、カヤト原の山頂に至っては静寂が保たれていた。デーンと富士。南アルプスに中央アルプスも並んでいるぞ。その手前に駿河湾も青い。東側には東京湾だ。東京湾には初島がぽっかり浮かんでいる。尻別岳山頂から日本海と噴火湾を同時に見下ろせたことに匹敵する感動だ。天城は白い傘を被っている。丹沢に箱根の山々も美しい。360°の大展望、大パノラマが広がった。すんばらすぃ〜!!!海が青い。空が青い。山が青い。雲が白い。カヤトが肌色。簡単な割りに豪華な完成写真だ。すかさず宇佐美の地ビールレストランに電話をした。正月は2日なので営業しているか不安であったが、「お待ちしております!」とのスタッフの声に安堵した。くぉ〜。待っててくれ。山頂からは無給食無給水で行くから!!!然し、大パノラマだ、、、勿体無い、、、冬の澄んだ空気に心が洗われて行く。。。

印刷した「日」は昨年末だが地図の道が最新情報になってないため多少遠回りをさせられた気分だが、我がGBS、Global Beering Systemのことだが、は正常に作動し、斉藤農園を探知することに成功した。
宇佐美地ビールの「ピア」だが、前回はメニューに存在したのも気が付かなかったのか、運動も半ばで来たため興味を示さなかっただけか、「飲み放題」のメニューが存在することに改めて気付いた。今日は飲んでも良いだろう。ドナウ モルダ ライン テムズ、、、海の見える地ビールレストランと言えばマリンタウンの伊豆高原ビールもそうだが、此処でしっかり醸造しているのだから、格が違うのだ。ガラス張りの部屋で食べる食事にビール、最高であった。

となると、晩飯は伊豆高原ビールだが、今日も営業することは昨年中に電話で確認したが、営業時間が気になったため、満を持してマリンタウンに寄り、直接店員に確認をした。開口一番、22時までと言う。なんだ。そんな遅くまでやってるのだ、と安心し切って店を出た数秒後、先程の店員が訂正を告げに店から出て来て、今日は20時とか、早目に閉めるかも知れない、との回答であった。正月2日だ。そんなものだろう。伊東駅を過ぎ、グルメシティの営業時間も調べると、此方は2日だろうが23時まで営業するらしく、今宵も安心であった。
サンライフ伊東で6人部屋とのことだったが、前回と同じ部屋だった。ベッドが2つ。後、和室に4人分と言う計算だろうか。取り急ぎ風呂で汗を流し、奇行文の下書きや読書で時間を潰した。17時半、宿を出て現場に向かう。一応と思い、湯の花通りを南下すると、うなきんの看板に灯が点っていたのを確認した。今日は難しい。次回だ。次回からは伊東2泊連続を決め込まないと、宇佐美、伊豆高原ビールときんごろうの3店を1ツアーで攻めるには厳しいと読んだ。丁度18時を回った頃、アントニオは伊豆高原ビールの暖簾を潜った。鰤カマ塩焼きにマグロと山葵のピザ、そして飲み放題である。2日の夕方は客の入りも激しく、手渡されたアンケート用紙には良かった店員名を記載してくれ、とはあるが、誰もノミネートしそうにない程、どの従業員もサービス時間を切り詰め、てんてこ舞い状態であった。季節限定ペールエールは2杯、梅酒も2杯、その他のビールも2杯頂いた。程ほどの飲み具合だろう。アンケート回答でまたクーポンを貰い、店を出た。美味かったな。グルメシティに寄ってまた風呂ビール用のビールと今晩のデザート、明日の朝飯とを購入した。明日の朝飯と言っても、、、特選の2人前握りが半額になっていたため、奮発した。3が日だ、贅沢だ。
翌日、朝風呂に浸かり、寿司2人前を平らげ、部屋を出た。20分程計算違いをしてノンビリ構えていたため、部屋を出てからは走らざるを得なかった。これまた計算通り、リゾート21号使用の各駅停車に乗った。後ろ向き展望車両は伊東までガラガラだった可能性があるが、数席が埋まった。来宮まで展望を楽しみ、伊豆箱根バスを待つ。バスは坂道を上り、上り、上った。この坂を歩くなり走るなりしていたら腰は砕け散っていたことであろう。大腸破りの坂が続く、続く。バスも喘いでいた。終点、相ノ原団地で下車し、これから折返し便のバスに乗ろうとしたお爺さんが俺が何処に行くかと聞いた。酪農王国だ。いや、今は道は閉鎖されているから此方からは行けない。つい先日、某マピオンのHPの地図に因れば鷹ノ巣トンネルに通じる熱函道路へ相ノ原団地から道が繋がっているように読み取れるのだが。そのお爺さんは行けないの一点張りでバスに乗った。折返し便発車まで時間もあるようで、運ちゃんも興味深そうにアントニオとお爺さんの問答を聞いていた。確かに道路は封鎖されているが、壁を乗り越えられるかだ、と。車では無理だろうが人ではどうだろうか、と。運ちゃんには駄目もとでチャレンジすると述べ、団地を上った。
ほほう、あの塀は、恐らく、団地への騒音対策として設けられたものであろう。そして、地面を見れば、昔は熱函道路と団地からの道が繋がっていたことが読み取れたが、その跡の上にもしっかり塀が載っている。だが、アントニオは目敏くフェンスと塀の間に径が、鷹ノ巣トンネル上部方面へ伸びているのを確認した。そして、道路の反対側に降りる踏み跡を進んで、塀を強引に乗り越える作業なく、トンネルの入口に到達した。そして、HPでは「狭い」との表現はあったが、幅1mないか程度の、道路と段差のある側溝がトンネル内に続いていた。自転車や酔っ払いは危険だろうが、これなら十分歩けるではないか!勿論、ヘッドライトの準備も怠りなかった。 片側1車線道路だが、自動車専用道路が如くどの車も7,80km/h程度で飛ばして行く。全くエコロジーでない。だからアントニオは闊歩した。トンネル内に排ガスを撒き散らすな。約1.3kmある鷹ノ巣トンネルは長かった。そう、丹那トンネルは8km程度もあるのだ。熱海と函南を貫く隧道ならば1.3kmは短いと思うべきだろうか。隧道も長ければ、トンネルを抜けるとオラッチェの存在する田地より100mは標高を上げた地点に到達した。続く橋梁なども歩道と言うべき路肩幅は確保されておらず、そのまま先へ進むのも緊張の連続で心臓にはよろしくない。先程繋がっていない道路に若干躊躇させられた地図には少々先から右手に折れる道が記載されていたが、そのような道が存在するなら空中になければならない、そんな地理的状況であった。だが、地図のトリックと土地鑑が何故か鋭いアントニオは、足元を貫く小道を発見した。 左手の、霜が降り切った葦原を巡ると車が若干1台通行可能な幅の道が、ぐるりと弧を描いていた。その先が獣道かも知れぬ、、、だが熱函道路も危険そうだ、、、獣道覚悟で進行を決めた。あの爺にまたあったらギャフンと言わせなければならない。何のために排ガスに塗れてトンネルを通過したのか。その努力を無にしてはならない。路面凍結が続いて若干怯んだものの、地図は一応正しい道を示していることが証明された。十数分、下り下って田地に到達した。田地とは言え、此処でも新丹那、丹那トンネルの上であるとは想像を絶する。そんな平和な田地、10時までまだ少々時間があり、オラッチェの建物が確認できてからは歩速を緩めた。 いろいろあったが、此処まで庵的には「十分整備されて」いたと言える。ぽかぽかな陽気。3ヶ日でも健康的と思しきファミリーが集い、無料の大根や野菜スープに呼応していた。ただ惜しむらくは、レストラン自身の営業は11時からだったことである。電話口ではレストランの営業時間を聞いたのだが、10時から17時との回答だった。3ヶ日シフトだからそれもあり得ると期待していたのだが、10時には花の温室しか開いていなかった。ただ、温室でも地ビールは飲めるし、特別メニューの大根牛筋煮が200円で食せるとなれば、ここでお茶を濁すしかない。お茶イコール麦茶である。当然。
その、牛筋煮栄えある本日初注文者となったのだが、大根の分厚さに平伏すしかなかった。地場の大根とは言え、首都圏の飲み屋でこれだけ分厚い牛筋煮は一体幾らになるだろうか、柔らかい筋を箸で裂きながら満足感は一入であった。美味しい。激安感も手伝い、ビールも美味いし、いや、良い正月である。ビールが終わってしまったため、それに、お摘みも他はジャンキーなものばかりしかなかったため、仕方なく牛筋煮をもう1皿所望した。使い捨て発泡スチロールの皿であったが、エコロジストアントニオは新たな皿を使うことを拒み、最初と同じ皿に盛って貰った。いや、この大根の分厚さ。あの爺の忠告に平伏す事無くトンネル越えをした甲斐があったってものよ。爺と万が一またバス停で遭遇したら、無料で配られた大根を目に焼き付けてやる所在だ。大根、美味いなぁ。地場物は素晴らしいなぁ。
売店では瓶地ビールが通販より割安になっていた。しかし、要冷蔵ものだ。自宅まで戻るのに3時間以上は掛かってしまう。多少重いのは我慢するにせよ、常温3時間に耐えられるか不安になって売店のオバサンに問うても、どうも的を射ない返事しか帰って来ない。夏場ならだめだろうが、とは言うが、今ならOKとは言わない。確かにリスクは100も承知だ。ただ、そこで「多分大丈夫よ」の一言が足りなかったために、アントニオは結局お土産購入を諦めた次第である。一般常識人であれば車以外での到達は不可能な地点である。次回来るか。次回、があるのか。オラッチェのレストランのメニューも興味津々であったのだが、、、
11時まで時間を潰すのも億劫なため、オラッチェを辞し、往路をそのまま辿る事にした。見上げれば、鷹ノ巣トンネル先の橋梁が遥か頭上高く、、、あの高さまで歩くのか、、、ってことは、あの高さから降りて来たのか、、、降りて来た時の凍結箇所の幾つかは氷解していた。こんな冒険な奴、いないよな、、、
また億劫ながらも長々とトンネルを抜け、相ノ原団地に戻って来た。10分程で折返しのバスが到着、あの爺っぽい人が下車したが、知らん振りをした。貴様にはこの函南産の大根が目に入るのかなぁ、ハッハッハ!バスは熱海駅まで行くのだが、運賃の都合で来宮で下車した。小田原までのJRの運賃が、来宮からと熱海からとで同額なのに、バスは来宮までは220円、熱海まで430円となれば、本数の少ない伊東線1駅区間と言えども来宮駅を選択するのが賢明であった。電車は20分は待たされたが、たったの1駅区間なれどもあの、リゾート21号をプチ改造した黒船号に乗ることが出来た。シートの柄は異なるかも知れないが、構造は一緒の様である。車内に所々、黒船に関する薀蓄情報が鏤められているようだ。うぬ。しかも後ろ向きだが展望室にしっかり着席できた。少し、ラッキーだった。
熱海で乗り換え、小田原で小田急に乗り換え、海老名で相鉄線に乗り換え、何時もの様な帰り方だった。然し、花の温室の牛筋煮が忘れられぬ。帰宅するや否や、すぐさま近所のスーパーに牛筋を目指して、アントニオは駆け抜けて行った。
(完)

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付録:
山旅アドバイス
・宇佐美駅から巣雲山へは北回り(阿原田コース)も南回り(峰コース)
いずれも道標は整備されている。
・鷹ノ巣トンネルなど、熱函道路を歩くには勇気が必要。
・オラッチェのレストランは11時開店。