不定期連載 陸道をゆく 話数知らず 05/12/23 石川酒造 第一回 伊勢崎ブルワリー杯争奪 薮塚勝手マラソン 【給水失格】 12/23(金) 庵庵…鴨居〜新横浜…某社…新横浜〜東神奈川〜横浜〜高崎 〜駒形…県道2号(駒形バイパス)…伊勢崎ブルワリー(未遂) …上淵名…県道291号…流通団地東…県道39号…嘉弥…県道69号 …大原中…県道294号…薮塚…県道332号…ホテルふせじま …薮塚駅〜太田〜足利市…足利〜小山〜大宮〜南浦和〜西国分寺 〜立川〜拝島…石川酒造…拝島〜八王子〜鴨居…庵庵 …:歩き/走り、〜:電車 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 寸前までは月夜野の地ビールを目論んでいたが、 折からに厳冬である。周辺に温泉は事欠かないと は言え、路面凍結や沿道の積雪を考慮すると、勝 手マラソンで走る余地も少なかろう。月夜野の温 泉、望郷の湯、猿ヶ京温泉など興味津々だ。数年 振りの山彦行脚も悪くはない。スタッドレスシュー ズでも探すべきか。雪道、凍結路の恐怖を存分体 感しているアントニオは満を持して伊勢崎に矛先 を向けることにした。伊勢崎ブルワリーでネット 検索を掛けても、ブルワリーの公式HPすら見当た らない。少々怪しいとは思ったのだが。。。 年末で業務トラブルに巻き込まれ、メーカーから の回答メール確認のため、始発電車で会社に赴く。 諸般の事情で自宅からメール確認が出来なかった ためである。然しながら、期待されたメールは届 いていなかった。折からに北米地区はクリスマス 休暇を取得している者ばかりであろう。災難は人 を待たず。無念だが此処でやり得る作業はもう見 当たらず、ガッ栗としながら新横浜の駅へ戻る。 横浜に出て、湘南新宿ライン直通高崎行きの電車 に乗った。横浜駅10番線ホームを占める客は海外 逃亡組みだけに留まらず、湘南新宿ライン始発の 6時台とは言え、此方に乗車する者も少なくはな かった。熊谷を過ぎてドアが半自動扱いとなった が、厳冬の埼玉県にてドア脇席は背筋も凍ってし まう。放射冷却は凄まじい。高崎で乗り換え時間 を少々駅構内で潰し、小山駅行きを待つ。新前橋 方面から6両でやって来た電車は、折り返し前側 3両が水上行き、後ろ3両が小山行きに化けた。寸 前までの企画通りならば前側の車両に乗車してい た筈だった。駒形駅ではアントニオ以外に1,2人 程が下車した。 上州の空が青い。寒さも何のその、人は麦茶の為 に生まれてきた。此処にも流れる広瀬川は冷涼感 を助長していたので見向きもしたくない。麦茶前 の適度な発熱、脱水を促すべく、スピードを上げ る。体調は悪くない。事前計算でもブルワリー営 業開始時刻には少々早かったため、カー用品ショッ プと巨大スーパーに立ち寄って虎視眈々と麦茶に 備えていた。駒形バイパスから数ブロック南側ま で移動し、ブルワリーの建物を発見した。時刻は 11時を回っている。どうも様子がおかしい。廃業 までは免れている模様だが、、、1Fも2Fも夫々地 ビールを出してくれるレストランの筈だが、1Fは 予約がなければ昼間の営業をせず、2Fは11時半か らの営業とのことである。2Fはステーキレストラン であった。あと30分か。ネットで調べたら11時か らとのことで期待していたが、重いステーキを食 わねばならないと思うと、期待の泡が急速に萎ん だ。俺を30分待たせると言うのか。おととい来や がれ。憤って建物を出た。 吹っ切れて麦茶を忘れ、温泉を目指す。薮塚温泉 へは伊勢崎から走るのは距離的に気が引けるため、 両毛線で1駅分くらいは縮めておく目論見だった。 然しながら県道2号線を伊勢崎駅方面へ向かう途 中、「五色温泉まで3km」の看板を発見してしまっ たのである。ブルワリー未遂で既に運の尽きだっ たにも拘らず、敗者復活に期待を賭け、伊勢崎駅 方面へのルートに目を瞑った。伊勢崎市街地だが、 少々いかがわしい夜系の店が多いように感じたの は気のせいか。東武線の線路を越えるとシャッター 通りが暫く続き、郊外の趣を披露した。あの看板 は本当だったのか。書店かコンビニさえあれば地 図で其の五色温泉の真偽を確認したかったのだが、 一店も見当たらない。もし五色温泉が見当たらな かったら、其のまま薮塚まで駆け抜けるとするか、、、 忘れた頃に、五色温泉の建物が姿を現した。街の 温泉である。風情も今ひとつ、露天風呂は果たし て見当も付かず、已む無く敬遠した。やられた。 敗者は2度敗れた。負け惜しむ余裕を自らの気持 ちに与えたくないため、寸分の躊躇もなく、県道 東進を続けた。途中給水のためにコンビニに寄っ たりしながら交通量の少なくなった県道を進む。 北には赤城、西には妙義が青空に映えていた。美 しい。此処に麦茶と露天風呂があれば、、、 ムギチャーゼ配合未遂で消耗も激しく力尽きつつ ある嘉弥交差点にて、北向き4km先に桐生温泉が 存在するとの看板を発見した。日帰り入浴施設と 思しき看板である。看板下側の注釈を見て唖然と した。国道50号左折、とある。見ている地図は確 かに古いが、この地図によればこの交差点からR50 までは7km以上はあるのだ。本当に此処から4kmの 地点に其の温泉は存在するのか。でも、看板の新 しさを考慮すると強ち否定出来ない存在であろう。 北進を決めた。 平成の大合併で、地図作成の当時とは市制が著し く変わっていた。太田市に入り、やがて電柱には 薮塚本町を示す表示が目立った。果たして、未だ 4kmは進んでいなかったかも知れない。桐生温泉 の看板は気配も見せなかったが、薮塚温泉の看板 を目の当たりにし、一番存在の信憑性の高い選択 肢として、3度目の正直に右折した。もう騙され まい。麦汁枯渇し、惰性だったがスピードは不思 議と上がった。やがて東武の桐生線の架線が目に 入った。温泉への看板を目当てに左折、既に午後 2時を回っていたが、漸く今日1軒目のチェックポ イントに辿り着けた。 温泉はホテルの最上階に存在した。露天風呂から は赤城方面は見難かったものの、妙義に上州の田 園の広がりを展望し、走り過ぎた大腿を癒した。 気分良く湯上りを締め括ろうとホテル内を探せど も、自動販売機には麦茶はなく、食堂も開いてお らず、また虚しさがぶり返した。今日、最後の「 抽斗」をと、石川酒造マップを携えていた。仕方 あるまい、と急いでi-modeで接続時刻を検索した。 青春18きっぷのため、私鉄乗車区間は最低限に抑 えたい。東武線は果たして下るべきか上るべきか。 桐生も足利もJR乗換えには不便である。然しなが ら、足利市から足利まで14分乗換えを克服するの が麦茶への最短ルートとの啓示を受けた。ホテル を出て駅前県道沿いのコンビニで仕方なく缶麦茶 を所望した。栄養学的には是でムギチャーゼ配合 と相成るのだが、スーパードライ高々1本では今 日今迄の負け戦の憂さを晴らすには力不足過ぎた。 薮塚駅の跨線橋の柱の合間に吹き荒ぶ上州の空っ 風。麦茶は体を一層冷やした。太田行きの電車の 庵席の対面には、昼間から顔を真っ赤にした酒飲 みオジサン3人が舟を漕いでいた。顔の赤さでは 此処でも負けていた。太田で乗り換えたのは準急 浅草行きである。このまま舟を漕げば東京さ着く だっぺな〜。当然JRとの乗換え時間など考慮もな くずるずると遅延し、足利市に到着した時点で乗 換え時間は10分を切っていた。多分彼等も同じ電 車に乗るのであろうと思しきジモティの中学生く らいの4人組みが、渡良瀬川に架かる田中橋の反 対側を小走りしていた。「間に合わねぇかなぁ」 の諦め声が聞こえる中、弾丸列車アントニオ号は 颯爽と彼等を追い抜き、渡橋後も信号を無視して 余裕で足利駅に到着した。電車到着まで未だ5分 は残っていただろう。先程の彼等もアントニオの 力走に奮起して程なく到着した。続く小山3分乗 換えも、両毛線ホームは駅の外れで余裕は少なかっ た。大宮、南浦和、西国分寺、立川と乗換えを繰 り返し、麦茶求めて三千里、すっかり夜の帳が降 り切った福生市に、最後の一戦を目前に控えて武 者震いと寒さ震いの区別の付かなくなったアント ニオが、八王子街道を渡る信号を待ちに待った。 ネットで見付けた地図より少々複雑だったが、酒 蔵の存在を髣髴とさせる土塀を辿り、酒造の門を 潜った。食事処2軒。酒かビールか。和食か洋か。 メニューを暫し見比べた。同じ酒造の食事処なの で酒の種類は同じと見た。然らば和食か。一杯目 は季節ビール、多摩の恵み・ヘレスを注文した。 我が麦意を得たり。 伊勢崎市から太田市に掛けて走って失った水分を 補うにはフルーティー過ぎた。多摩の恵みだった。 二杯目以降は、地酒・多満自慢を所望した。此方 も我が米意を得たり。惜しむらくは店員が似非ジャ ニーズ系ながら無愛想で酒2杯目注文時に代わり のお猪口を持って来なかったことである。彼の無 礼で客を失うには惜しい麦と米の潤いが其処には あった。 (完) ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 付録: 陸旅アドバイス ・伊勢崎ブルワリーは駒形オートレース場に近い。 11時半から営業らしい。 ・五色温泉は伊勢崎市街地から県道2号線で東へ 約3km。 ・桐生温泉ゆららの所在は掴めず。 ・ホテルふせじまの食事処は開いてなかった(-_-) ・石川酒造内にもう1軒洋風食事の地ビール小屋あり。 酒の種類はほぼ同じ。