不定期連載 陸道をゆく 話数知らず 06/03/04 富士桜高原麦酒シルバンズ、ふじやまビール 第一回富士桜高原杯争奪 河口湖・山中湖勝手マラソン 【2酒追う者】 3/4(土) 庵庵…西谷駅〜二俣川〜かしわ台…東名綾瀬=河口湖駅…河口湖大橋 …R137・河口湖東岸…河口湖駅…スバルライン…シルバンズ…吉田口登山道 …富士浅間神社…ホテル鐘山苑…ふじやまビール…R139 …岡田紅陽写真美術館・小池邦夫絵手紙美術館…東海自然歩道…上村 …花の都公園…紅富士の湯…山中湖畔バス停=東名綾瀬…かしわ台〜二俣川 〜西谷駅…庵庵 …:歩き/走り、〜:電車、=:バス ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 2週間前である。 レース1週間以内の長距離走はダメージからの復 旧未遂が懸念されるため、延べ30kmを越える走り は今日限りにしておきたかった。今回の矛先はス バルライン沿いにあるシルバンズである。大月か ら富士急行全線走破などの選択肢を検討している うちに、手段検討の触手は矢張り最安値の高速バ スへと辿り着いた。横浜から河口湖までの便だが、 横浜駅からより東名綾瀬からの方が700円も安い。 冒険は愉しい。今回は東名綾瀬にチャレンジだ。 始発便の河口湖到着が10時で、その後にビールを 飲むとなると、帰路には最終便以外の選択肢は考 えられなかった。途中の時間潰しを考慮すれば、 河口湖を一周しても十分間に合うだろうとの感触 であった。地図と睨めっこしているうちに、2軒 目の存在が光った。折りしもクーポン券も持って いる店だ。うむ。2酒目制覇だ。河口湖は半周程 度で勘弁してやろう。 経費節約のためおにぎりを拵え、西谷駅に向かっ た。初めて下車したかしわ台は清楚な駅舎だった。 この駅から東名綾瀬まで歩こうと言う者なぞ皆無 なのか。印刷した地図を頼りに何とか進む。土地 鑑はないが土地勘は大分アップした。2本足で歩 めば足が理解する。東名にはバス停が近いだけで ICは左程ではないにも拘らず、運送業の社屋が多 いように見受けられた。 バス停では10人程がバスの到着を待ち侘びていた。 皆、挙って、東京方面からやってくるバスが気に なって仕方ない。バスの形をしたもの全てが羨望 の対象となっていた。箱根方面行きのバスに乗る 客もない。若人が多めだったか、多くの富士急ハ イランダーが車内の席を埋めていた。綾瀬到着は 定刻より10分は遅れていただろうか。道路事情と 言うよりは、バス停での発券や精算処理に時間が 掛かっていることが後程理解できた。採算性の意 味では車掌を乗せるなぞ有り得ないのだろう。そ の先は厚木付近で少し流れが悪くなった程度で、 バスは順調に東名高速を飛ばして行った。真正面 に煌く富士。冬晴れの日はこうでなくてはいけな い。 御殿場ICで東名高速を離れ、バスはR138を登って 行く。富士が白いのは当たり前だが、沿道の草木 も白がかっており、不安が生まれつつあった。昨 日関東近郊で観測された夕立、否、あれは夕立に 纏めるには規模が大きな降り具合だったが、此方 では雪になっていたのだ。当然の帰結だ。バス車 内の所々で「綺麗!」などと喋っては白銀の風景 を写真に収めている富士急ハイランダーの面々に、 アントニオの懸念は全く伝わっていない。シャー ベットの上を走らねばならぬのか、、、今日は雪 に濡れることを微塵も考えていなかったため、通 気性抜群なジョギングシューズで此処に至ってし まったことを一人悔やむしかなかった。車道は辛 うじて除雪されてはいるのだが、その車道の雪を 歩道へ退けた形跡も目に余りあった。スリップ等 のダメージを懸念し、今日は走らないと言う選択 肢も脳裏を過ぎった。然しながら、何故走るのか と言う根本の動機は美味しいビールを飲むためで あるから、それなりの距離が必要であった。バス が山中湖畔を縫って居る間、ハイランダーの歓声 が騒がしい中、一人2酒を如何に繋げるか、地図 との格闘が続いた。バスが富士急ハイランドで大 量の客を吐き出して閑散を取り戻しても尚、思案 は続いた。 バスは河口湖駅前に到着した。工事中で目も当て られない状況だ。昨日の降雨で泥濘んでいる。そん な中、プレハブの売店の看板に、黒米地ビールの 6文字を見つけてしまった。地ビール神懸りつつ 昨今、その発見は驚愕には値しなかった。此処で 飲んでしまっては2酒も追えないではないか。あ、 3酒になるのか、、、運動量が不足しており、此 処での祝杯は敬遠することにした。次回、立派な 駅舎が出来上がったら、土産物屋にその瓶を求め たい次第だ。さて、バスの中での思案はあれども、 バスが走らなかった区間の積雪状況は見当が付か ないため、取り急ぎ北へ向かい、河口湖大橋が走 れそうなら渡り、そうでなければ南岸を適当に逍 遥してシルバンズへ、との方針に決定した。河口 湖畔の積雪は皆無ではなく歩道は部分的に除雪さ れていないものの、何とか活路を見出しては青い 空の下、河口湖を渡った。好天だ。その分寒いの だが。時期をずらせば山中湖マラソンや河口湖マ ラソンも催行されるこの地ではあるのだが、今日 はランナー・アントニオの独壇場であった。周辺 は車社会であるのが少々気になった。皆の者、もっ と歩け。 河口湖東側を大橋を利用して1周し、やがてスバ ルラインに歩を進めた。この季節、1合目までは 車の通行が可能とのことである。R139を越えると、 路面は徐々にシャーベットと化して行った。アン トニオの脇を掠める車両の面々は、この雪の中、 1合目或いはドギーパークに向かうのであろうか。 スバルラインに歩道はない。歩く者も居ないため、 路肩側の方がシャーベットの密度が濃いため走り 難い。車も少ないから中央車線寄りを走らせて貰っ ていた。対向車もないのだから車の方が避ければ 済むものの、クラクションを鳴らす輩が居たのに は閉口した。貴様の邪魔をする積もりは毛頭ない。 貴様が路肩を除雪さえしてくれれば俺は心置きな く道の真ん中を譲ってやると言うのに。対向車も 無いのに馬鹿げている。スバルラインは思ったよ り長かった。コメツガやアカマツの景色が何処ま でも続く。変わり映えのしない景色、シャーベッ トの道、対向車も無いのに煽る車、、、シルバン ズに寄るのは今回が最初で最後としたい気分だ。 予想以上に続く登り坂にスピードも落ち、ビール 指数は停滞していた。 忘れた頃に漸くシルバンズに到着した。案の定、 アントニオを追い越した車の多くが隣のドギーパー クの駐車スペースに戯れていた。シルバンズの店 内には女性グループの卓が2つ程立っている。彼 女等はどのような手段で此処に辿り着いたのか。 飲酒運転必至か、はたまた豪勢にタクシー行脚な のか。その2卓はテラス側で、間は大分離れては いたが、残念なことにアントニオはその粗中央の テーブルに案内されてしまった。テラスの暖かみ は姦しさに瞬く間に帳消しにされた。窓外の白銀 の風景への想いは寒さに掻き消され、夫々のお摘 みにはプチ高原価格が込められており、食欲も左 程沸かない。 ラオホのグラスをネットで入手したタダ券で飲み、 ガーリックトーストとカルパッチョを口にし、追 加の一杯飲んでからシルバンズを辞去した。 帰路もスバルライン走行するのは真っ平御免と思 い、粗平行して富士吉田市街地へ向かう吉田口登 山道を通行することにした。此方の方が交通量は 極めて少ない分、道路の積雪は目に余るものだっ た。だが、煽られるよりは精神衛生的に分が大き い。登山道とは言いながらも中央線のある舗装路 なのだが、登山道らしい静寂が其処には存在した。 やがて富士浅間神社に到着。国道をそのまま山中 湖方面へ直行はせず、市街地内を縫う。国道でな くとも交通量が多く、歩道もなければ快適なマラ ソン環境とは言い難いのだが、ふじやまビールに 逆転の願いを込め、適当な距離を稼ぎながら山中 湖方面を目指す。7年前の社員旅行で宿泊した鐘 山苑前は閑散としていた。冬の土曜日ならもう少 し騒がしくても良かったろうに。 やがてふじやまビールに到着した。スタウトのほん のりとした甘さが喉越しを如何なく潤し、2酒目 で漸く引き分けに持ち込めた按配だった。此方の メニューも割高感が否めず、結局ふじやまビール でも2杯+2皿程度で退却を決めた。 そのまま国道沿いに走れば十数分の距離と思しき 紅富士の湯だが、未だ時間も余っているため引き 続き寄り道を嗜む。その社員旅行の同じ年の黄金 週間に行脚した東海自然歩道のトレースである。 忍野はハリモミ純林で遭難し、薮漕ぎして林を抜 け出たのが懐かしい。東海自然歩道行脚も朝霧高 原の西、長者ヶ岳の先で停滞してしまっている。 既に同歩道最高地点も通過してしまったし、モチ ベーションを維持するのは難しい。老後の暇潰し にでも温存しておくか。 紅富士の湯に到着。此方も若干70円ながら、ネッ トで入手した割引券を効用を頼りに入館した。脱 衣所の体重計に乗ると、地ビールレストランで飲 み食いしたにも拘らず体重は減っていた。体を絞 り過ぎてしまったか。2年前も似たような境遇だっ た。寒さが様々な気力を減退させていた。地ビー ルレストランの旅も飽きて来たなぁ。本番までに 何とかエネルギーを回復しないと。気を取り直し て露天へ向かう。体温より1度程度しか高くない 微温湯浴槽に浸かる。学生時代は温い露天風呂を 酷評していたが、今やマラソンや登山後の長湯に は欠かせないアイテムである。帰宅数日後にそれ が埼玉産や群馬産であることが発覚したのだが、 地場野菜の朝市の売れ残りと思い込んでいた野菜 が幾つか土産売り場に並んでおり、ほうれんそう が3袋100円、舞茸が2パック100円だったため、躊 躇せず購入に走った。 山中湖畔バス停には定刻より10分程早く到着して はいたものの、寒い中、バスは定刻より10分近く 遅れて到着した。道路は空いているのだ。ワンマン バスの運転手が、バスチケットのもぎり、発券や 払い戻しまで全部賄っている。ネットやコンビニ で発券されるチケットのフォーマットの相違等を 考慮すると、運ちゃんの負担は尋常ではないこと に察しが付く。だが、山中湖岸はバスを待つには 寒過ぎた。 運ちゃんは遅れを取り戻すべくスピードを上げて いた。東名高速上り線では恒例の綾瀬バス停渋滞 には悩まされる程の大きな影響は受けず、20時前 には綾瀬に舞い戻ることが出来た。すっかり日も 落ちて辺りの暗い綾瀬市歩行は今日が始めてでは あったが、帰路は地図に頼らずにかしわ台駅に戻 ることが出来た。ほうれんそう3袋は消費し切れ ないと思い、西谷から庵庵経由で50分程費やして 行き着けの飲み屋に進呈すべく、今日3回目のビー ルタイムを迎えていた。 (完) ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 付録: 陸旅アドバイス ・シルバンズ付近にバス停なし。