不定期連載 山道をゆく 第162話 04/08/14 大山(日本三百名山、関東百名山、庵選千名山(既出)) 【原点再び】 8/14(土) 庵庵…西谷〜海老名〜伊勢原−日向薬師…九十九曲…見晴台…雷尾根 …大山…16丁目…蓑毛越…蓑毛−秦野〜海老名〜西谷…庵庵 〜:電車、−:車、…:歩き・走り ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 先週に引き続き、縦走のトレーニングに赴く。先 週より荷物を更に1kg増やしたのだが、両踵の靴 擦れは未だ癒えておらず、また、車では帰省帰り 渋滞に巻き込まれるのが関の山と思い、数ヶ月振 りの電車バス山行を決行するに至った。靴擦れの 具合を懸念し余り派手には動かない方が無難だろ うと、勝手知ったる奥多摩か丹沢のどこか山頂に 涼みを求めたくなった。ただ、奥多摩行きでは何 となしに帰路の横浜線乗車に既に億劫を感じたた め、久々に小田急電車に揺られることにした。塔 ノ岳から鍋割山を通る、将に庵山岳史原点コース は6時間、日向薬師から大山経由で蓑毛へ抜ける のは5時間。後者のルートを選択するならば、帰 路のバス便の本数効率を考えると蓑毛からの入山 がベターだろう。小田急に揺られながらどちらを 選択するか悩むも、万一靴擦れが尾を引きまたコー スタイムを容易に凌ぐ動きが出来なくなってしま うことを心配し、後者を選択した。ただ、やはり、 帰路途中に温泉に寄るには、秦野駅から一駅戻る のが常套手段と勝手に決め込み、伊勢原駅にて急 遽下車した。この暑い中、雷尾根を歩こうなどと 言う酔狂はアントニオ以外に若干一名のお婆ちゃん のみであった。 バスの終点、日向薬師で下車してそのまま歩き始 める。既に暑く、準備運動は必要ない。暫くは舗 装路が続く。沿道には日向川温泉の看板も見られ る。むむ、ノーマークだった。逆コースにしてこ の温泉にでも浸かればよかったかと少々悔やむ。 ただ、800円で露天もなさそうなので、次回以降 に利用を考えるかは不明である。この暑い夏に露 天風呂は必須だ。やがて山道に入る。見覚えのあ る道だ。前回は九十九曲など糞喰らえと思ったの だが、今日ばかりは顎が出た。荷物もある。何よ り暑い。九十九曲が前回より辛い。。。暑い。。。 滝のような汗、、、タオルを絞ること、数十回、、、 普段の山では適度に蒸発していたのかも知れない が、今日ばかりは違った。タオルが絞れる程の汗 を山で掻いたことがあっただろうか。本当に大量 の汗である。思えば7年前、社会人になって初の 登山に赴いた塔ノ岳も8月下旬の登頂で、5kgくら い一気に痩せた記憶が未だ鮮明に残っている。ダ イエットはそんなに難しくはない。 本当に九十九折もあるのか、前回幾つだったか勘 定しておくべきだったかと悔やみながら苦しみ耐 えながら、林間に日の光を感じつつあった。開け てから思ったより長く歩いたが、高々1000m程度 の標高地に涼風が靡いていた。汗を滴らせた者の みが感ずることのできる涼風だ。其の代償は計り 知れなかったが。やがて、見晴台に到着。前回冬 場に訪れた時点では都心方面が鮮明に見えたのだ が、今日は霞んでいる。先客のお爺さんの羨望の 眼差しを受けながらも、1杯目を開ける。ぬヴぉ〜。 く〜っ!喉越し爽やか〜!背負った黄金清水は尊い。 さて、見晴台からも雷尾根に入り、幾許か湘南海 岸も霞越しに見えつつも、其れは寸分の気休めに もならず塗れる汗に悲鳴は途切れなかった。絞っ ては拭き、絞っては拭き、、、山頂は何処、、、 大山を笑う者は大山に泣く。ダイセンではない。 オオヤマだ。大山と言えばアントニオの幼少の頃 の苦行の場であったのだが、現在にも通じている のだろうか。滾る汗。霞む、湘南の海。 汗だくになりながら山頂に到達。おや、夏場は売 店があるのか。売り子の親父はとても無愛想だっ たが、背に生は変えられず、未だもう1缶背負っ ていたにも拘らず、生麦茶を所望してしまった。 霞む湘南を見下ろしながら、麦を啜る。そう言え ば2年前の冬、薀蓄の五月蝿い親父がエボシ岩が 見える見えないと騒いでいたが、何処にあるのだ ろうか。今日も大山は観光客で賑わっていた。ハ イカーは少ない。夏場に態々此処を遣る人は少な い。でも此処に来た人だけが感じることの出来る 涼風が吹いている。エボシ岩は見えなくとも良い。 麦が喉を過ぎ去り、風が喉元を過ぎ去って行く。 夏の日の霞。夏と言えばTUBEばかり聴いていたアン トニオも久々にサザンを耳にしたくなった。 トレーニングは終盤に差し掛かる。ケーブルカー 乗り場方面へ一旦下るべく、表参道を行く。岩が ゴロゴロとしており非常に歩き難い。生粋の信者 は兎も角、ただのハイカー・観光客は何故斯くも 歩き難いルートを好んで登るのだろうか。何故態々 このルートを選んで喘ぐのだろうか。皆とてもス トイックなのか。其れに引き換え、雷尾根は偉大 だ。だから2度目でも登ろうと思ったのだ。人は 何故、短いルートばかりを選ぶのだろう。そして、 氷ばかり掴むのだろう。16丁目でそんな人々と表 参道と分かれ、蓑毛を目指す。めっきり人が少な くなるものの、此方も少々歩き難い。下り進んで 道調を取り戻すも大分歩き飽きて来てしまった。 林道が交差する。嗚呼、もう少しだろう。ふ〜っ。 養鱒場に差し掛かる。もう直だ。 蓑毛のバス停には果たして是から山に挑もうと言 う輩でごった返していた。何を今更登ると言うの か。皆修行に来たのか。秦野駅行きのバスも丁度 止まっていてラッキーである。10時台はこの路線 にして本数の多い時間帯であった。是を逃すと後 は30分置きである。やや、バス車内前方には菓子 類が、、、ハイカーや観光客を狙った車内販売か。 はじめて見た。心憎い演出だ。駅に到着してから ダッシュして小田急の改札を抜けると、程無く急 行電車がホームに滑り込んで来た。さて、東海大 学前の温泉に寄ろうか少々悩んだものの、時間も ある、西谷高原越えでまた汗を掻くのは勿体無い と思い、風呂は家で浴びようと其のまま海老名ま で急行電車に揺られた。海老名で焼き立てパンを 買い、二俣川乗換えで西谷に到着。時刻、若干12 時丁度。駅ホームのベンチでうだうだしているう ちに知人から電話が来た。「今日は何処の山に行っ てますか」「いや、もう下山してあと40分で家に 戻るのだけど」果たして来週、どうなることか。 トレーニングの成果は如何に。 (完) ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 付録: 山旅アドバイス ・大山ケーブルからの表参道は岩がごろごろして登り難い。 ・日向川温泉は大人800円。露天はない。 ・神奈中バス車内販売に菓子はあれども飲み物はない。